
熊本県産業廃棄物収集運搬許可取得完全ガイド
1. 産業廃棄物収集運搬許可とは
産業廃棄物収集運搬許可とは、事業活動に伴って生じる産業廃棄物を適法に収集・運搬するために必要な法的許可です。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき、都道府県知事または政令指定都市の市長が許可を行います。
1-1. 産業廃棄物の定義
産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生する廃棄物のうち、法律で定められた20種類の廃棄物を指します。主な種類は以下の通りです:
- 燃え殻 – 石炭がら、焼却残灰など
- 汚泥 – 排水処理や物の製造工程で生じる泥状のもの
- 廃油 – 潤滑油、絶縁油、洗浄用油などの廃油
- 廃酸 – 廃硫酸、廃塩酸などの酸性廃液
- 廃アルカリ – 廃ソーダ液などのアルカリ性廃液
- 廃プラスチック類 – 合成樹脂くず、合成繊維くずなど
- 紙くず – 建設業、パルプ・紙製造業などから生じる紙くず
- 木くず – 建設業、木材・木製品製造業などから生じる木くず
- 繊維くず – 繊維工業から生じる天然繊維くず
- 動植物性残さ – 食料品製造業などから生じる動植物性の固形状廃棄物
- 動物系固形不要物 – と畜場、食鳥処理場で発生する固形状廃棄物
- ゴムくず – 天然ゴムくず
- 金属くず – 鉄くず、アルミくずなど
- ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
- 鉱さい – 高炉、転炉などから生じるスラグなど
- がれき類 – 建設工事に伴って生じるコンクリート破片など
- 動物のふん尿 – 畜産農業から排出される家畜のふん尿
- 動物の死体 – 畜産農業から排出される家畜の死体
- ばいじん – 大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設などから発生するばいじん
- 産業廃棄物を処分するために処理したもの – 上記廃棄物を処理したもので固形状・液状のもの
1-2. 許可の必要性
産業廃棄物の収集運搬を行う場合、以下の例外を除き、必ず許可が必要です:
- 排出事業者が自ら運搬する場合
- 再生利用指定制度の対象となる廃棄物を扱う場合
- 広域認定制度の対象となる廃棄物を扱う場合
- 事業者間での無償譲渡の場合
無許可での収集運搬は廃棄物処理法違反となり、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)が科せられる可能性があります。
2. 熊本県における許可取得の管轄区分
熊本県では、申請者の所在地と営業区域により管轄が分かれています。
2-1. 熊本県の管轄
- 熊本県環境生活部循環社会推進課
- 熊本市内に本社所在地があり、熊本市以外の県域でも業を行う場合
- 熊本県外に本社所在地がある場合
2-2. 熊本市の管轄
- 熊本市環境局
- 熊本市内のみで事業を行う場合
2-3. 各保健所の管轄
- 熊本市を除く熊本県内の保健所
- 本社所在地が熊本県内(熊本市除く)にあり、当該保健所管内のみで事業を行う場合
3. 許可取得の要件
3-1. 人的要件
講習会の修了 申請者(法人の場合は代表者または業務を行う役員)は、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会を修了している必要があります。
- 新規許可申請用講習会 – 修了証の有効期限は5年間
- 更新許可申請用講習会 – 修了証の有効期限は2年間
欠格要件に該当しないこと 以下の欠格要件に該当する場合は許可を受けることができません:
- 心身の故障により業務を適切に行うことができない者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 暴力団員等
- 廃棄物処理法等に違反し、刑に処せられ、その執行を終わった日から5年を経過しない者
- 許可を取り消されてから5年を経過しない者
3-2. 物的要件
適切な車両の確保 収集運搬に使用する車両は、以下の要件を満たす必要があります:
- 車両の構造が収集運搬する廃棄物の性状に適していること
- 廃棄物が飛散・流出しない構造であること
- 積み卸しが容易に行える構造であること
駐車場の確保 事業用自動車を駐車するための適切な駐車場を確保していることが必要です。
3-3. 経理的基礎
事業の継続に足りる経理的基礎を有していることが必要です。具体的には:
- 事業の開始及び継続に要する資金の調達方法が明確であること
- 収支計画が適切であること
- 自己資本比率や流動比率などの財務指標が健全であること
4. 申請に必要な書類
4-1. 基本書類
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書(様式第1号)
- 事業計画の概要(様式第1号の2)
- 事業の用に供する施設の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図及び設計計算書並びに当該施設の付近の見取図
- 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類
- 申請者の資産に関する調書(様式第1号の4)
- 誓約書(様式第1号の5)
4-2. 申請者に関する書類
法人の場合:
- 定款または寄付行為
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 株主名簿または出資者名簿
- 法人税納税証明書(その1)
個人の場合:
- 住民票の写し
- 所得税納税証明書(その1)
4-3. 講習会修了証
- JWセンター発行の講習会修了証の写し
- 申請者が法人の場合は、代表者または業務を行う役員の修了証
4-4. 車両関係書類
- 自動車検査証の写し(令和5年1月以降発行の場合は自動車検査証記録事項)
- 運搬車両の写真(前後左右4面)
- 車両の構造説明書
- 駐車場の使用権原を証する書類(賃貸借契約書等)
4-5. その他必要書類
- 土地の登記簿謄本(全部事項証明書)
- 運転免許証の写し
- 健康診断書
- 記載内容等チェック表(2025年1月29日以降版)
5. 申請手続きの流れ
5-1. 事前準備
- 講習会の受講 – JWセンターの講習会を受講し、修了証を取得
- 車両の準備 – 収集運搬に適した車両の確保
- 駐車場の確保 – 事業用車両を駐車する場所の確保
- 資金計画の策定 – 事業開始・継続に必要な資金計画の作成
5-2. 申請書類の作成・提出
- 書類作成 – 必要書類をすべて準備・作成
- 書類点検 – チェック表による書類の確認
- 申請手数料の準備 – 熊本県収入証紙で手数料を準備
- 書類提出 – 管轄窓口に簡易書留で郵送提出
5-3. 審査・許可
- 書類審査 – 提出書類の内容審査
- 現地調査 – 必要に応じて施設や車両の現地確認
- 許可証交付 – 審査通過後、許可証が交付される
申請手数料:
- 新規許可申請:81,000円
- 更新許可申請:73,000円
審査期間: 通常2~3ヶ月程度(書類の不備や追加提出がある場合はさらに時間がかかる場合があります)
5-4. 許可後の義務
許可取得後は以下の義務があります:
- 許可証の携帯 – 収集運搬時は許可証の写しを携帯
- 帳簿の作成・保存 – 収集運搬実績の記録・5年間保存
- 委託契約書の作成 – 排出事業者との書面契約
- マニフェストの確認 – 産業廃棄物管理票の適切な処理
- 報告書の提出 – 年度報告書の提出
- 変更届の提出 – 許可内容に変更が生じた場合の届出
6. 許可の更新
産業廃棄物収集運搬許可の有効期間は5年間です。継続して事業を行う場合は、有効期限の2ヶ月前から更新申請を行う必要があります。
6-1. 更新申請の要件
- 更新用講習会の修了(修了証の有効期限内)
- 欠格要件に該当しないこと
- 適正な事業運営の実績があること
6-2. 更新申請の特例
令和6年5月1日以降の更新・変更許可申請では、変更がない書類または変更届を提出済みの書類については、一部添付を省略することが可能です。
7. よくある注意点とトラブル回避
7-1. 書類不備による遅延
最も多いトラブルは書類の不備による申請の遅延です。以下の点に注意してください:
- チェック表の活用 – 熊本県提供のチェック表を必ず使用
- 書類の順番 – 指定された順番に書類を並べる
- 有効期限の確認 – 各種証明書の有効期限を確認
- 記載内容の統一 – 各書類間で記載内容に矛盾がないか確認
7-2. 講習会修了証の期限切れ
講習会修了証の有効期限が切れている場合は申請できません。余裕を持って講習会を受講してください。
7-3. 車両要件の不適合
収集運搬する廃棄物の種類に適さない車両では許可が下りません。事前に車両の仕様を十分検討してください。
7-4. 駐車場の権原問題
駐車場の使用権限が不明確な場合、許可が下りない可能性があります。賃貸借契約書等で明確に使用権限を証明してください。
8. 行政書士に依頼するメリット
8-1. 専門知識によるサポート
行政書士は廃棄物処理法や関連法令に精通しており、以下のサポートを提供できます:
- 法令の最新情報 – 頻繁に改正される法令の最新情報を提供
- 書類作成のノウハウ – 許可取得のための効果的な書類作成方法
- 審査ポイントの把握 – 審査官が重視するポイントを踏まえた申請
8-2. 手続きの効率化
- 時間短縮 – 書類作成から提出まで一貫してサポート
- ミスの防止 – 専門家による書類チェックでミスを防止
- 再申請のリスク回避 – 一発で許可を取得する確率の向上
8-3. トラブル対応
- 行政との折衝 – 審査過程での行政とのやり取りを代行
- 追加書類への対応 – 審査中の追加書類要求への迅速な対応
- 変更手続きのサポート – 許可取得後の各種変更手続きもサポート
8-4. 継続的なサポート
- 更新手続き – 5年後の更新手続きのタイミング管理
- 法令改正への対応 – 法令改正時の対応方法のアドバイス
- 日常業務のコンサルティング – 許可取得後の適正な業務運営に関するアドバイス
9. 費用の目安
9-1. 官公庁への支払い
- 新規許可申請手数料:81,000円
- 更新許可申請手数料:73,000円
- 講習会受講料:約30,000円~40,000円
9-2. その他費用
- 各種証明書取得費用:数千円~1万円程度
- 車両整備費用:車両の状況により変動
10. まとめ
熊本県での産業廃棄物収集運搬許可取得は、適切な準備と正確な手続きにより確実に取得することができます。しかし、法令の専門性が高く、書類作成も複雑であるため、行政書士等の専門家に相談することを強く推奨します。
特に以下の場合は専門家への依頼を検討してください:
- 初めて許可申請を行う場合
- 事業開始を急いでいる場合
- 他の業務で忙しく、手続きに十分な時間を割けない場合
- 確実に一回で許可を取得したい場合
適切な許可を取得することで、法令遵守した安全で信頼性の高い事業運営が可能となり、顧客からの信頼獲得にもつながります。事業の発展のためにも、しっかりとした準備を行い、確実な許可取得を目指しましょう。