
通所介護(デイサービス)新規申請の完全ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
超高齢社会を迎える日本において、通所介護(デイサービス)は地域の高齢者を支える重要な介護サービスです。しかし、新規で通所介護事業を開始するには、厚生労働省の定める指定基準を満たし、都道府県等の指定を受ける必要があります。
本記事では、通所介護の新規申請に必要な手続きから、最新の基準や注意点まで、実務に役立つ情報を詳しく解説いたします。
通所介護とは
通所介護(デイサービス)は、利用者が日帰りで通所し、食事や入浴、機能訓練などの日常生活上の支援を受けるサービスです。利用者の社会的孤立感の解消や家族の介護負担軽減を目的として提供されます。
地域密着型との区別
通所介護のうち事業所の利用定員が厚生労働省令で定める数(19名未満)については、地域密着型通所介護となります。
- 通所介護:利用定員19名以上(都道府県指定)
- 地域密着型通所介護:利用定員18名以下(市区町村指定)
新規申請の流れ
1. 事前準備・相談
通所介護(通称:デイサービス)、短期入所生活介護(通称:ショートステイ)など建物構造に関する基準がある場合は、新築・改修などを行う前(賃借物件の場合は賃貸契約をする前)に、建築図面等で設備基準に適合しているかどうかをご相談ください。
事前相談のポイント:
- 建物の新築・改修前に必ず相談
- 賃貸物件の場合は契約前に相談
- 建築図面等を準備して相談
2. 申請書類の準備
新規申請に必要な主な書類は以下の通りです:
法人関係書類
- 定款・寄附行為等
- 法人の登記事項証明書
- 役員の履歴書・誓約書
事業所関係書類
- 事業所の平面図・配置図
- 建物の登記事項証明書または賃貸借契約書
- 設備・備品一覧表
人員関係書類
- 管理者・従業者の経歴書
- 資格証明書の写し
- 組織体制図
運営関係書類
- 運営規程
- 利用者からの苦情処理体制
- 事故発生時の対応体制
3. 申請の提出
申請書類を都道府県(または政令指定都市・中核市)の担当窓口に提出します。
指定基準の詳細
人員基準
通所介護では以下の人員を配置しなければなりません。
管理者
- 原則として専従の常勤者を事業所ごとに1名配置
- 2024年度介護報酬改定により、管理上支障がない場合は他の職務に従事可能
生活相談員
- 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1名以上
- 生活相談員又は介護職員のうち1人以上は常勤
看護職員
- 単位ごとに専従で1名以上
- 看護師または准看護師
介護職員
- 利用者の数に応じて配置
- 利用者15名につき1名以上
機能訓練指導員
- 1名以上の配置が必要
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の資格が必要
設備基準
必要設備
- 食堂・機能訓練室(3㎡×利用定員以上)
- 静養室
- 相談室
- 事務室
- 消火設備その他の非常災害に必要な設備
- 洗面設備
- 便所
設備基準のポイント
- 食堂と機能訓練室は兼用可能
- 利用者の安全性と利便性を考慮した設計
- バリアフリー対応が必要
運営基準
主な運営基準
- 通所介護計画の作成
- サービス提供の記録
- 利用者の心身の状況の把握
- 家族への連絡体制
- 緊急時の対応体制
- 秘密保持の徹底
2024年度介護報酬改定の影響
処遇改善加算の変更
2024年度の介護報酬改定では、加算一本化の経過措置として区分Ⅴ(1~14)も設けられました。しかし、加算Ⅴはすべて2025年3月31日に廃止されます。2025年4月以降は区分Ⅰ〜Ⅳへの移行が必要ですのでご注意ください。
新たな義務・要件
業務継続計画(BCP)
- BCP未策定事業所への減算導入
- 2025年4月から完全義務化
高齢者虐待防止措置
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の導入
- 研修・体制整備が必要
申請時の注意点
人員配置基準違反のリスク
看護職員や介護職員の人員配置基準が満たされない場合、通所介護事業所は「人員基準欠如減算」を受け、基本報酬の70%で算定しなければいけません。
よくある申請時の問題点
- 設備基準の理解不足
- 面積基準の計算ミス
- 設備の配置不備
- 人員配置の計画不備
- 資格要件の確認不足
- 勤務体制の設計ミス
- 運営規程の不備
- 法定記載事項の漏れ
- 実際の運営との齟齬
開業後の運営ポイント
加算取得の準備
主な加算項目
- 個別機能訓練加算
- 入浴介助加算
- 栄養改善加算
- 口腔機能向上加算
- 認知症加算
継続的な基準遵守
事業開始後も継続して基準を満たし続ける必要があります:
- 定期的な人員配置の確認
- 設備の維持管理
- 運営基準の遵守
- 記録の適切な保管
申請費用の目安
指定申請手数料
- 都道府県により異なる(一般的に30,000円〜100,000円程度)
その他の費用
- 建物改修費用
- 設備・備品購入費
- 人件費
- 専門家への報酬
申請期間
標準的な処理期間
- 申請受付から指定まで:約2〜3か月
- 事前相談から申請まで:約1〜2か月
まとめ
通所介護の新規申請は、複雑な手続きと厳格な基準遵守が求められます。特に人員基準や設備基準については、開業前の十分な準備が不可欠です。
2024年度の介護報酬改定により、処遇改善加算の取扱いやBCPの義務化など、新たな要件も加わっています。これらの変更点を踏まえた適切な申請準備が成功の鍵となります。
行政書士法人塩永事務所では、通所介護の新規申請から開業後の運営サポートまで、豊富な経験と専門知識でお客様の事業展開をサポートいたします。お気軽にご相談ください。