
医療法人設立と分院開設の手続き完全ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
医療法人の設立や分院開設は、医療従事者の皆様にとって事業拡大の重要な選択肢です。しかし、その手続きは複雑で、適切な準備と専門知識が必要です。本記事では、医療法人設立から分院開設まで、実務に基づいた詳細な手続きをご説明いたします。
1. 医療法人設立の基礎知識
医療法人とは
医療法人は、医療法に基づいて設立される法人で、病院、診療所、介護老人保健施設などの開設・運営を目的とします。個人開業と比較して、以下のメリットがあります。
- 節税効果(所得分散、退職金制度等)
 - 社会保険制度の充実
 - 資金調達の多様化
 - 事業承継の円滑化
 
医療法人の種類
- 基金拠出型医療法人:平成19年4月以降に設立される医療法人
 - 出資持分のある医療法人:平成19年3月以前に設立された医療法人(現在新設不可)
 
2. 医療法人設立の要件
基本要件
- 人的要件
- 理事3名以上(うち1名は理事長)
 - 監事1名以上
 - 理事長は医師・歯科医師である必要
 
 - 物的要件
- 診療所または病院の開設許可
 - 医療機器・設備の整備
 - 適切な施設基準の確保
 
 - 資産要件
- 基金の拠出(通常300万円以上)
 - 運転資金の確保
 - 負債超過でないこと
 
 
3. 医療法人設立の手続き
事前準備段階
- 設立計画の策定
- 事業計画書の作成
 - 資金計画の策定
 - 役員候補者の選定
 
 - 必要書類の準備
- 定款案
 - 寄附行為案
 - 財産目録
 - 事業計画書
 - 予算書
 
 
申請手続き
- 事前相談
- 都道府県担当窓口での相談
 - 申請書類の確認
 - 設立スケジュールの調整
 
 - 申請書類の提出
- 医療法人設立認可申請書
 - 定款(寄附行為)
 - 役員就任承諾書
 - 役員履歴書
 - 財産目録・貸借対照表
 - 事業計画書・収支予算書
 - 診療所開設許可証の写し
 
 - 審査・面接
- 書類審査(約2-3か月)
 - 申請者面接
 - 必要に応じて追加資料の提出
 
 - 認可・登記
- 認可書の交付
 - 法人登記申請
 - 登記完了
 
 
設立後の手続き
- 税務署への届出
 - 社会保険の加入手続き
 - 労働保険の加入手続き
 - 診療報酬請求の名義変更
 
4. 分院開設の手続き
分院開設の要件
- 法人要件
- 既存の医療法人であること
 - 財政基盤が安定していること
 - 理事会での決議
 
 - 人的要件
- 管理者(医師・歯科医師)の確保
 - 必要な医療従事者の配置
 - 診療科目に応じた専門医の配置
 
 - 物的要件
- 適切な医療施設の確保
 - 医療機器・設備の整備
 - 構造設備基準の遵守
 
 
分院開設の手続き
- 事前準備
- 分院開設計画の策定
 - 立地調査・物件確保
 - 資金計画の策定
 - 理事会決議
 
 - 診療所開設許可申請
- 診療所開設許可申請書
 - 医療法人定款変更認可申請書
 - 管理者就任承諾書
 - 土地・建物の登記事項証明書
 - 図面(平面図、案内図等)
 - 医療機器一覧表
 
 - 定款変更認可申請
- 定款変更認可申請書
 - 変更理由書
 - 新旧対照表
 - 理事会議事録
 - 事業計画書・収支予算書
 
 - 各種届出
- 保健所への届出
 - 税務署への届出
 - 社会保険事務所への届出
 - 労働基準監督署への届出
 
 
5. 手続きのポイントと注意事項
設立・開設のタイミング
- 年度末設立を避ける:4月1日設立の場合、すぐに決算となるため
 - 診療報酬改定時期の考慮:4月の改定時期前後は避ける方が無難
 - 税務上の有利性:個人事業の所得状況を考慮したタイミング
 
よくある失敗例
- 資金不足:運転資金の見積もりが甘い
 - 人材確保の遅れ:管理者や看護師の確保が間に合わない
 - 施設基準の不備:構造設備基準の理解不足
 - 法令遵守の不備:医療法、建築基準法等の理解不足
 
成功のポイント
- 早期の専門家相談:行政書士、税理士、社会保険労務士等との連携
 - 十分な資金準備:設立費用+運転資金6か月分以上
 - 綿密な計画策定:事業計画、収支計画の精緻化
 - 関係機関との連携:保健所、県庁担当課との密な連絡
 
6. 必要費用の目安
医療法人設立費用
- 定款認証費用:約5万円
 - 登録免許税:6万円
 - 司法書士費用:10-15万円
 - 行政書士費用:30-50万円
 - その他諸費用:10-20万円
 - 合計:約60-100万円
 
分院開設費用
- 診療所開設許可申請:無料
 - 定款変更認可申請:無料
 - 各種届出費用:5-10万円
 - 専門家費用:20-40万円
 - 合計:約25-50万円
 
7. 手続きの流れとスケジュール
医療法人設立(標準的なスケジュール)
- 準備期間:2-3か月
 - 申請から認可:3-4か月
 - 登記完了:1-2週間
 - 事業開始:認可後1-2か月
 - 総期間:約6-9か月
 
分院開設(標準的なスケジュール)
- 準備期間:2-3か月
 - 申請から許可:2-3か月
 - 開設準備:1-2か月
 - 総期間:約5-8か月
 
おわりに
医療法人設立と分院開設は、医療事業の発展において重要な選択肢です。しかし、その手続きは複雑で、多くの法的要件を満たす必要があります。成功のためには、早期の計画策定と専門家との連携が不可欠です。
行政書士法人塩永事務所では、医療法人設立から分院開設まで、豊富な実績と専門知識を活かして、お客様の事業発展をサポートいたします。医療法人に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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医療法人設立・分院開設の専門家として、皆様の事業発展を全力でサポートいたします。
