
帰化申請の手続きについて
概要
帰化とは、外国人が日本国籍を取得する手続きです。国籍法に基づき、法務大臣の許可を得ることで日本国籍を取得できます。帰化が許可されると、それまでの国籍を失い、日本国籍のみを有することになります。
法的根拠
- 国籍法
- 国籍法施行規則
- 帰化許可申請者の法的地位等に関する通達
帰化の要件
1. 住所要件(国籍法第5条第1項第1号)
引き続き5年以上日本に住所を有すること
- 「引き続き」とは継続的に居住していることを意味
- 短期間の出国は問題ないが、長期間の出国は継続性を断つ可能性
- 適法な在留資格を有していることが前提
2. 能力要件(国籍法第5条第1項第2号)
20歳以上で本国法によって行為能力を有すること
- 成年に達していること
- 本国の法律によって法律行為を単独で行える能力を有すること
3. 素行要件(国籍法第5条第1項第3号)
素行が善良であること
- 法律を遵守し、日常生活においても住民として非難されることのない生活を送っていること
- 犯罪歴、交通違反歴、税金の滞納状況等が総合的に判断される
4. 生計要件(国籍法第5条第1項第4号)
自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること
- 安定した収入があること
- 生活保護を受けていないこと
- 将来にわたって安定した生活が見込めること
5. 重国籍防止要件(国籍法第5条第1項第5号)
国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと
- 無国籍者であるか、日本国籍取得により元の国籍を失うこと
- 重国籍の防止を目的とする
6. 憲法遵守要件(国籍法第5条第1項第6号)
日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと
特別な場合の要件緩和
1. 日本国民であった者の子(国籍法第6条)
要件緩和
- 住所要件:引き続き3年以上日本に住所又は居所を有すること
- 能力要件:適用除外
2. 日本で生まれた者(国籍法第7条)
要件緩和
- 住所要件:引き続き3年以上日本に住所又は居所を有すること
- 能力要件:適用除外
3. 日本国民の配偶者(国籍法第7条)
要件緩和
- 住所要件:引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ現に日本に住所を有すること
- 能力要件:適用除外
必要書類
基本書類
- 帰化許可申請書
- 申請者本人が自署
- 写真2枚(縦5cm×横5cm)
- 親族の概要を記載した書面
- 家族関係の詳細な記載
- 帰化の動機書
- 日本語で作成
- 帰化を希望する理由を具体的に記載
- 履歴書
- 出生から現在までの詳細な経歴
- 学歴、職歴、居住歴等
- 生計の概要を記載した書面
- 収入、支出の詳細
- 資産、負債の状況
- 事業の概要を記載した書面
- 事業を営んでいる場合
- 住民票の写し
- 世帯全員分
- 本籍・続柄記載
- 国籍証明書
- 本国の在日領事館等で取得
- 外国人登録原票記載事項証明書
- 又は在留カード等のコピー
収入関係書類
- 給与所得者の場合
- 源泉徴収票
- 給与明細書
- 在職証明書
- 自営業者の場合
- 確定申告書控え
- 納税証明書
- 事業に関する書類
- 共通書類
- 住民税課税証明書
- 住民税納税証明書
- 所得税納税証明書
本国関係書類
- 出生証明書
- 婚姻証明書
- 離婚証明書(該当者のみ)
- 死亡証明書(該当者のみ)
- 犯罪経歴証明書
その他の書類
- 運転記録証明書
- 運転免許証を有する場合
- 卒業証明書
- 在学証明書(在学中の場合)
- 健康保険証のコピー
- 年金手帳のコピー
申請手続きの流れ
1. 事前相談
法務局での相談
- 申請前に必ず法務局で相談
- 個別の事情に応じた必要書類の確認
- 申請の可能性について事前検討
2. 書類準備
必要書類の収集
- 本国書類の取得(翻訳が必要)
- 日本国内書類の取得
- 各種証明書の取得
書類の作成
- 申請書類の作成
- 動機書の作成
- 履歴書の作成
3. 申請書提出
提出先
- 居住地を管轄する法務局又は地方法務局
提出方法
- 申請者本人が直接提出
- 代理人による提出は原則不可
4. 審査
書面審査
- 提出書類の内容確認
- 要件適合性の検討
面接
- 申請者との面接
- 家族との面接(場合により)
- 日本語能力の確認
身元調査
- 住居地の確認
- 勤務先等への照会
- 関係機関への照会
5. 許可・不許可の決定
標準処理期間
- 約1年程度(個別事情により異なる)
許可の場合
- 法務局から連絡
- 身分証明書の提出
- 帰化者の身分証明書の交付
不許可の場合
- 不許可理由の説明
- 再申請の可能性について相談
審査のポイント
1. 日本語能力
求められる水準
- 小学校3年生程度の読み書き能力
- 日常会話ができる程度の会話能力
確認方法
- 面接での会話
- 簡単な読み書きテスト
2. 日本への定着性
考慮される要素
- 居住の継続性
- 就業の安定性
- 地域社会との関わり
3. 素行の善良性
主な確認事項
- 犯罪歴の有無
- 交通違反の状況
- 税金の納付状況
- 年金保険料の納付状況
費用
申請手数料
- 無料
その他の費用
- 証明書取得費用
- 翻訳費用
- 交通費等
帰化後の手続き
1. 戸籍の作成
新戸籍の編製
- 帰化許可後、新しい戸籍が作成される
- 本籍地は申請時に指定
2. 住民票の変更
国籍等の変更
- 市区町村役場で手続き
- 外国人登録の抹消
3. 各種変更手続き
必要な手続き
- 運転免許証の変更
- パスポートの申請
- 銀行口座の変更
- 保険関係の変更
4. 元の国籍の処理
国籍離脱手続き
- 本国領事館での手続き
- 国により手続きが異なる
注意事項
1. 申請の取下げ
- 申請後も取下げ可能
- 取下げ理由の説明が必要
2. 虚偽申請の禁止
- 虚偽の申請は刑事罰の対象
- 許可後に虚偽が判明した場合、許可取消しの可能性
3. 在留資格の維持
- 申請中も適法な在留資格を維持する必要
- 在留期間の更新手続きも必要
4. 本国法の確認
- 帰化により本国国籍を失うかの確認が重要
- 各国の国籍法により取扱いが異なる
よくある質問
Q1: 帰化申請中に海外旅行はできますか?
A: 可能ですが、長期間の出国は審査に影響する可能性があります。事前に法務局に相談することをお勧めします。
Q2: 帰化が不許可になった場合、再申請は可能ですか?
A: 可能です。不許可理由を改善した上で再申請することができます。
Q3: 帰化申請に年齢制限はありますか?
A: 上限はありませんが、20歳未満の場合は特別な要件があります。
Q4: 帰化後、元の国籍を回復できますか?
A: 日本国籍を離脱すれば可能な場合もありますが、各国の法律により異なります。