
エコアクション21認証手続きの詳細ガイド
行政書士法人塩永事務所
エコアクション21とは
エコアクション21は、環境省が策定した中小事業者等の幅広い事業者に対して、自主的に「環境への関わりに気づき、目標を持ち、行動することができる」方法を提供する目的で開発された、日本独自の環境マネジメントシステムです。現在は、環境省による要件適合確認を受けたエコアクション21中央事務局(一般財団法人持続性推進機構)によって運営されています。
エコアクション21の特徴は、環境経営に必要な要素を一つにまとめた包括的なシステムである点です。具体的には、環境マネジメントシステム、環境パフォーマンス評価、環境報告の3つの要素を統合し、ISO14001よりも取り組みやすい仕組みとして設計されています。
必須要件
エコアクション21では、すべての事業者が必ず把握すべき環境負荷の項目として、以下の3つが規定されています:
- 二酸化炭素排出量
- 廃棄物排出量
- 水使用量
また、事業者が必ず取り組むべき行動として、次の8つの行動が必須要件とされています:
- 環境経営システムの構築・運用
- 環境負荷の把握と削減目標の設定
- 環境目標の設定と環境活動計画の策定
- 環境活動の実施
- 環境経営レポートの作成・公表
- 環境コミュニケーションの実施
- 代表者による全体の評価と見直し
- 地域の環境保全活動への参加
認証取得のメリット
1. 経営面でのメリット
コスト削減効果
- 光熱費削減:省エネ活動により電力・燃料費を削減
- 水道代削減:節水活動による使用量削減
- 廃棄物処理費用削減:発生抑制・リサイクル推進による処理費用削減
- 原材料費削減:資源の有効活用による調達コスト削減
経営効率の向上
- 業務プロセスの見直しによる生産性向上
- 環境データの「見える化」による管理精度向上
- 従業員の環境意識向上による自発的改善活動の促進
- 組織全体の環境リテラシー向上
企業価値の向上
- 環境に配慮した企業としてのブランドイメージ向上
- CSR(企業の社会的責任)活動の体系化
- SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を明確化
- ステークホルダーからの信頼獲得
2. 営業面でのメリット
公共事業での優遇
- 国・地方自治体の公共工事入札における総合評価点数の加点
- 環境配慮型企業として入札参加資格での優遇
- 公共調達におけるグリーン購入法対応企業としての評価
金融面での優遇
- 日本政策金融公庫の環境・エネルギー対策資金による特別利率の適用
- 地方自治体の制度融資における優遇金利の適用
- 民間金融機関のSDGs関連融資での優遇条件
取引関係での優位性
- 大手企業のサプライチェーンにおける環境配慮企業としての評価
- 取引先との環境配慮に関する要求事項への対応
- 新規取引先開拓における差別化要因
- 環境意識の高い顧客層の獲得
認証手続きの詳細な流れ
事前準備段階:システム理解と導入決定
情報収集・理解促進
エコアクション21の導入を検討する際は、まず制度の全体像を正確に理解することが重要です。エコアクション21中央事務局のウェブサイトから最新のガイドラインを入手し、要求事項を詳細に確認します。特に、2017年版ガイドラインでは、パリ協定やSDGsの採択により変化した環境経営情勢を踏まえた内容に改訂されている点に注意が必要です。
導入可能性の評価
自社の事業規模、業種、現在の環境への取り組み状況を踏まえ、エコアクション21導入の妥当性を評価します。特に、必須要件である「CO2排出量」「廃棄物排出量」「水使用量」の3つの環境負荷について、現状のデータ収集が可能かどうかを確認します。
ステップ1:基盤整備と推進体制構築(1~2ヶ月)
1-1. 経営者のコミットメント確保
エコアクション21の成功には、経営者の強いコミットメントが不可欠です。経営者自身が環境経営の重要性を理解し、全社的な取り組みとして推進する意志を明確にします。これには、環境方針の策定、必要な経営資源の確保、従業員への明確なメッセージ発信が含まれます。
1-2. 全社研修の実施
対象者: 経営者および全従業員 内容:
- エコアクション21の概要と目的
- 環境経営の基本的な考え方
- 自社の環境への取り組みの重要性
- 各従業員の役割と責任
- 具体的な活動内容の説明
実施方法:
- 全体説明会の開催
- 部門別研修の実施
- 理解度確認テストの実施
- 質疑応答セッションの設定
1-3. 推進体制の構築
環境経営責任者の選任 通常は経営者(代表取締役)が担当し、環境経営システム全体の責任を負います。環境経営責任者は、環境方針の策定、環境目標の設定、資源配分の決定、全体の評価と見直しを行います。
環境経営推進員の選任 環境経営責任者を補佐し、実際の環境経営システムの運用を担当します。環境経営推進員は、環境負荷の把握、環境活動計画の策定、実施状況の監視、内部コミュニケーションの推進を行います。
各部門の環境担当者の指名 各部門から環境担当者を選任し、部門レベルでの環境活動を推進します。環境担当者は、部門内の環境活動の実施、データ収集、改善提案の取りまとめを行います。
1-4. 現状把握と基礎データ収集
環境負荷の洗い出し 事業活動全体を通じて発生する環境負荷を体系的に把握します。これには、直接的な環境負荷(事業所内での活動)と間接的な環境負荷(調達、輸送、製品使用段階等)の両方を含みます。
過去データの収集 過去3年分の以下のデータを収集・整理します:
- 電力・燃料使用量と関連費用
- 水使用量と関連費用
- 廃棄物発生量と処理費用
- 原材料使用量
- 化学物質使用量(該当する場合)
法規制等の確認 事業活動に関連する環境法規制、条例、協定等を整理し、遵守状況を確認します。これには、廃棄物処理法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、化学物質管理関連法規等が含まれます。
ステップ2:環境経営システムの構築(2~3ヶ月)
2-1. 環境方針の策定
環境方針の要件 エコアクション21の環境方針は、以下の要素を含む必要があります:
- 環境保全への取り組み姿勢
- 環境負荷の継続的改善への約束
- 環境関連法規制等の遵守
- 環境コミュニケーションの推進
- 代表者の署名と日付
策定プロセス
- 経営理念・経営方針との整合性確認
- 事業特性を踏まえた重点取り組み分野の特定
- 具体的で実現可能な内容の検討
- 従業員・顧客・地域社会等への配慮
- 経営者による最終承認
周知・公表方法
- 社内掲示板への掲載
- 従業員説明会での説明
- ウェブサイトでの公表
- 取引先への通知
- 環境経営レポートでの公表
2-2. 環境目標の設定
環境目標設定の原則
- 具体的(Specific)
- 測定可能(Measurable)
- 達成可能(Achievable)
- 関連性がある(Relevant)
- 期限が明確(Time-bound)
必須目標 エコアクション21では、以下の3つの環境負荷について必ず目標を設定する必要があります:
- CO2排出量削減目標:具体的な削減率と期限を設定
- 廃棄物排出量削減目標:発生抑制とリサイクル率向上
- 水使用量削減目標:使用量削減と効率化
任意目標 事業特性に応じて、以下のような任意目標を設定することも可能です:
- 化学物質使用量削減
- 騒音・振動の低減
- 生物多様性保全
- 地域環境保全活動への参加
2-3. 環境活動計画の策定
活動計画の構成要素
- 目標達成のための具体的な活動内容
- 実施責任者と実施部門
- 実施スケジュール
- 必要な資源(人員、設備、予算)
- 実施方法と手順
- 進捗管理方法
計画策定のポイント
- 目標と活動の関連性を明確にする
- 実現可能性を十分に検討する
- 部門間の連携を考慮する
- 定期的な見直しのタイミングを設定する
- 従業員の参加を促進する仕組みを組み込む
ステップ3:環境活動の実施(3ヶ月以上)
3-1. 省エネルギー活動
設備・機器の効率化
- LED照明への切り替え
- 高効率空調設備の導入
- 省エネ型OA機器の導入
- 設備の定期メンテナンス
- インバーター制御の導入
運用改善
- 適切な温度設定の徹底
- 不要な照明・機器の電源OFF
- 昼休み時間の消灯
- クールビズ・ウォームビズの実施
- エネルギー使用量の見える化
3-2. 省資源・廃棄物削減活動
発生抑制(Reduce)
- 両面印刷・裏紙利用の徹底
- 電子化によるペーパーレス推進
- 適正な在庫管理による廃棄削減
- 梱包材の簡素化
- 長寿命製品の選択
再使用(Reuse)
- 使用済み封筒の再利用
- 梱包材の再利用
- 事務用品の再利用
- 什器・備品の長期使用
リサイクル(Recycle)
- 分別収集の徹底
- リサイクル業者との連携
- 有価物の分別・売却
- 産業廃棄物の適正処理
3-3. 水使用量削減活動
節水対策
- 節水型設備の導入
- 水漏れの早期発見・修理
- 用途別使用量の把握
- 雨水利用の検討
- 中水利用の検討
3-4. グリーン購入の推進
対象品目の拡大
- 事務用品(再生紙、エコマーク製品)
- OA機器(省エネ製品)
- 自動車(低燃費・低排出ガス車)
- 制服・作業服(リサイクル素材)
- 建設資材(環境配慮型)
購入基準の設定
- 環境ラベル(エコマーク等)の活用
- ライフサイクルコストの考慮
- 供給業者の環境配慮状況の確認
3-5. 記録・データ管理
データ収集システム
- 月次データ収集の体制構築
- 計量器具の定期校正
- データの正確性確保
- 電子化による効率化
- バックアップ体制の確保
記録すべき項目
- 環境負荷データ(CO2、廃棄物、水使用量)
- 環境活動実績
- 法規制遵守状況
- 環境関連事故・トラブル
- 従業員研修記録
- 内部監査結果
3-6. 内部コミュニケーション
定期的な情報共有
- 月次環境会議の開催
- 進捗状況の報告・共有
- 問題点の早期発見・対応
- 改善提案の収集・検討
- 優良事例の水平展開
従業員参加の促進
- 環境改善提案制度の設置
- 環境活動コンテストの開催
- 環境教育・啓発活動の実施
- 環境関連資格取得の奨励
ステップ4:環境経営レポートの作成(1ヶ月)
4-1. 環境経営レポートの構成
エコアクション21の環境経営レポートは、以下の項目を含む必要があります:
必須記載項目
- 組織の概要
- 事業者名、代表者名
- 所在地、連絡先
- 業種、事業内容
- 従業員数、売上高
- 事業所の概要
- 環境経営方針
- 環境方針の全文
- 環境経営責任者のメッセージ
- 環境経営の基本的な考え方
- 環境経営目標
- CO2排出量削減目標
- 廃棄物排出量削減目標
- 水使用量削減目標
- その他の環境目標
- 環境経営計画
- 環境活動計画の概要
- 実施体制
- 実施期間
- 環境経営活動の取り組み結果
- 各目標の達成状況
- 主要な環境活動の実施状況
- 定量的な成果
- 課題と今後の対応
- 環境負荷の実績
- CO2排出量の推移
- 廃棄物排出量の推移
- 水使用量の推移
- 化学物質使用量(該当する場合)
- 環境関連法規制等の遵守状況
- 適用法規制の遵守状況
- 違反事例とその対応
- 改善措置の実施状況
- 代表者による全体評価と見直し
- 環境経営システムの有効性評価
- 次年度の方針・目標
- 改善指示事項
4-2. 数値データの整理と分析
CO2排出量の算出
- 電力使用量×排出係数
- 燃料使用量×排出係数
- 社用車燃料使用量×排出係数
- 出張・通勤に伴う排出量(算定可能な場合)
廃棄物排出量の集計
- 種類別排出量
- 処理方法別排出量
- リサイクル率の算出
- 有価物売却量
水使用量の集計
- 上水道使用量
- 地下水使用量
- 工業用水使用量
- 用途別使用量(算定可能な場合)
経済効果の算出
- 省エネルギー効果による光熱費削減額
- 廃棄物削減による処理費用削減額
- 水使用量削減による上下水道料金削減額
- その他のコスト削減効果
ステップ5:認証申請(1ヶ月)
5-1. 申請書類の準備
必要書類一覧
- 審査申込書
- 事業者の基本情報
- 審査希望日程
- 特記事項
- 環境経営レポート
- 前述の必須記載項目を含む完成版
- 代表者の承認印
- 環境経営システム関連書類
- 環境方針
- 環境目標・計画
- 組織図
- 責任・権限一覧
- 手順書・マニュアル
- 事業所関連書類
- 事業所配置図
- 平面図(必要に応じて)
- 設備配置図
- 工程図(製造業の場合)
- 法規制関連書類
- 適用法規制一覧
- 許可証・届出書類のコピー
- 測定結果報告書
5-2. 申請手続きと費用
申請先 最寄りの地域事務局に申請書類を提出します。地域事務局は全国に設置されており、各事務局の連絡先はエコアクション21中央事務局のウェブサイトで確認できます。
申請費用の詳細 審査費用は、審査員1人日当たり50,000円(消費税別)となります。審査に必要な人数・日数は、事業所の規模と業種によって以下の標準審査工数表に基づいて決定されます:
標準審査工数(製造業の場合)
- 従業員数20名以下:1.0人日
- 従業員数21~100名:1.5人日
- 従業員数101~300名:2.0人日
- 従業員数301名以上:2.5人日
標準審査工数(建設業・サービス業の場合)
- 従業員数50名以下:1.0人日
- 従業員数51~200名:1.5人日
- 従業員数201~500名:2.0人日
- 従業員数501名以上:2.5人日
認証・登録料
- 初回登録料:50,000円(消費税別)
- 中間審査料:30,000円(消費税別)
- 更新登録料:30,000円(消費税別)
その他の費用
- 審査員旅費:実費
- 宿泊費:実費(遠方の場合)
費用算出例 従業員数80名の製造業の場合:
- 審査費用:50,000円 × 1.5人日 = 75,000円
- 認証・登録料:50,000円
- 審査員旅費:実費
- 合計:125,000円 + 旅費 + 消費税
ステップ6:現地審査(半日~1日)
6-1. 審査の準備
審査前の準備事項
- 審査スケジュールの確認・調整
- 必要書類の準備・整理
- 説明担当者の指定
- 審査対象設備・現場の準備
- 従業員への周知・協力依頼
審査当日の準備
- 関係者の出席確保
- 会議室の確保
- 資料の準備
- 現場案内の準備
- 質疑応答の準備
6-2. 審査の流れと内容
オープニング会議
- 審査の目的・スケジュール確認
- 参加者の紹介
- 注意事項の説明
- 質疑応答
書類審査
- 環境経営レポートの内容確認
- 環境経営システムの構築状況確認
- 法規制遵守状況の確認
- 記録・データの確認
現地審査
- 事業所内の環境活動状況確認
- 設備・機器の稼働状況確認
- 廃棄物管理状況の確認
- 安全・衛生管理状況の確認
インタビュー
- 経営者へのインタビュー
- 環境経営推進員へのインタビュー
- 各部門担当者へのインタビュー
- 一般従業員へのインタビュー
クロージング会議
- 審査結果の報告
- 改善要求事項の説明
- 今後のスケジュール確認
- 質疑応答
6-3. 審査のポイント
審査員が重視する項目
- 環境経営システムの実効性
- 計画・実施・評価・改善のサイクルが機能しているか
- 経営者のリーダーシップが発揮されているか
- 従業員の理解と参加が得られているか
- 環境負荷の把握・管理
- 3つの必須項目(CO2、廃棄物、水)のデータが適切に把握されているか
- 測定・記録方法が適切か
- データの信頼性が確保されているか
- 法規制等の遵守
- 適用法規制が正しく特定されているか
- 遵守状況が適切に管理されているか
- 違反事例への対応が適切か
- 継続的改善
- 目標設定が適切か
- 改善活動が継続的に実施されているか
- 成果が適切に評価されているか
ステップ7:認証取得(審査後1~2ヶ月)
7-1. 審査結果の通知
認証可否の決定プロセス 現地審査終了後、審査員は審査報告書を作成し、地域事務局の判定委員会で認証可否が決定されます。判定委員会では、以下の観点から総合的に評価されます:
- 環境経営システムの構築・運用状況
- 環境経営レポートの内容・品質
- 法規制等の遵守状況
- 継続的改善の取り組み状況
- 審査での対応状況
審査結果の種類
- 認証可:すべての要求事項を満たしており、認証登録が承認される
- 条件付き認証可:軽微な改善要求事項があるが、対応確認後に認証登録される
- 認証不可:重大な不適合があり、改善後に再審査が必要
7-2. 改善要求事項への対応
改善要求事項の種類
- 重大な不適合:認証の可否に関わる重要な問題
- 軽微な不適合:改善が必要だが認証に影響しない問題
- 観察事項:将来問題となる可能性がある事項
対応方法
- 改善要求事項の内容を正確に理解
- 根本原因の分析
- 改善計画の策定
- 改善措置の実施
- 効果の確認
- 改善報告書の提出
7-3. 認証登録証の発行
認証登録の効力 認証登録証が発行されると、以下の権利が付与されます:
- エコアクション21認証・登録事業者としての表示
- 認証・登録マークの使用
- 各種優遇制度の利用
認証登録証の内容
- 事業者名
- 代表者名
- 所在地
- 認証・登録番号
- 認証・登録日
- 有効期限(2年間)
7-4. 認証後の継続的活動
年次報告 認証・登録後は、毎年環境経営レポートを更新し、地域事務局に提出する必要があります。
中間審査 認証・登録後概ね1年後に中間審査を受審する必要があります。中間審査では、環境経営システムの継続的運用状況を確認します。
更新審査 認証・登録の有効期限は2年間です。継続を希望する場合は、有効期限前に更新審査を受審する必要があります。
認証取得にかかる費用
初期費用(認証取得時)
必須費用
- 審査費用:50,000円~125,000円(事業規模により変動)
- 認証・登録料:50,000円
- 審査員旅費:実費(地域により変動)
- 消費税:上記金額の10%
参考費用(従業員数別)
- 従業員数20名以下:約110,000円(税込)
- 従業員数50名以下:約110,000円(税込)
- 従業員数100名以下:約137,500円(税込)
- 従業員数200名以下:約137,500円(税込)
- 従業員数300名以下:約165,000円(税込)
任意費用
- コンサルティング費用:300,000円~800,000円
- 研修費用:50,000円~200,000円
- システム構築支援費用:100,000円~500,000円
- 環境設備投資:事業者により大きく変動
継続費用(認証取得後)
年次費用
- 環境経営レポート更新:自社対応の場合は無料
- 専門家支援:50,000円~150,000円
お気軽にお問い合わせください。096-385-9002