
エコアクション21認証手続きの詳細ガイド
行政書士法人塩永事務所
環境問題への関心が高まる現代において、企業が持続的な成長を遂げるためには、環境への配慮が不可欠です。エコアクション21は、環境省が策定した中小企業向けの環境経営システムで、環境への取り組みを「見える化」し、経費削減や生産性向上につなげることができる有効なツールとして、多くの企業に導入されています。
当事務所では、エコアクション21の認証取得をご検討中の皆様のために、その手続きの詳細とメリットについて、より詳しく、より正確に解説いたします。
エコアクション21とは
エコアクション21は、ISO14001よりも取り組みやすいよう、特に中小企業の現状に合わせて設計された環境経営システムです。単に環境活動を行うだけでなく、その取り組みを継続的に改善し、具体的な成果を出すことを目的としています。企業が自らの事業活動における環境負荷を把握し、削減目標を設定・実行・評価することで、環境パフォーマンスの向上と経営効率の改善を同時に実現します。
認証取得のメリット
エコアクション21の認証取得は、環境貢献だけでなく、企業の経営に多岐にわたるメリットをもたらします。
- 経営面でのメリット
- コスト削減: 電力、ガス、水道などの光熱費や、廃棄物の減量・リサイクル推進による廃棄物処理費用を削減できます。
- 業務効率化による生産性向上: 環境目標達成のための業務プロセスの見直しが、結果的に無駄をなくし、生産性を向上させます。
- 従業員の環境意識向上: 従業員一人ひとりが環境問題への意識を高め、日々の業務で環境に配慮した行動を自主的にとるようになります。これにより、組織全体のエンゲージメント強化にも繋がります。
- 企業イメージの向上: 環境に配慮した企業として、顧客、取引先、地域社会からの信頼が高まり、企業のブランド価値が向上します。
- 営業面でのメリット
- 公共工事での総合評価点数の加点: 国や地方公共団体の入札において、エコアクション21認証企業が加点対象となるケースが増えており、受注機会の拡大に繋がります。
- 融資制度での優遇措置: 環境に積極的に取り組む企業に対し、金融機関が低利融資などの優遇措置を設けることがあります。
- 取引先からの信頼度向上: 環境への取り組みを重視する大手企業との取引において、エコアクション21認証は取引要件となる場合があり、新たなビジネスチャンスを創出します。
- 新規顧客獲得の機会拡大: 環境意識の高い消費者や企業からの選択肢となり、市場における競争優位性を確立できます。
認証手続きの流れ
エコアクション21の認証取得は、計画的かつ段階的に進めることが重要です。一般的な期間の目安とともに、各ステップの詳細をご案内します。
ステップ1:初期準備(1~2ヶ月)
この段階では、エコアクション21導入のための土台を築きます。
1-1. 全体研修の実施 * 対象: 経営者および全従業員。 * 目的: エコアクション21の概要、導入の意義、環境経営の基本的な考え方を共有し、全社的な意識統一を図ります。
1-2. 推進体制の構築 * 環境経営責任者の選任: 通常は経営者が兼任し、環境経営全般を統括します。 * 環境経営推進員の選任: 実務の中心となり、認証取得に向けた活動を推進します。 * 各部門の環境担当者の指名: 各部署での具体的な環境活動の実行を担います。
1-3. 現状把握(環境側面と環境影響の特定) * 事業活動に伴う環境負荷の洗い出し: 電力使用、燃料消費、水使用、廃棄物排出、化学物質使用など、事業活動のあらゆる側面から環境に与える影響(環境側面)を特定します。 * データ収集: 過去3年分の光熱費、水道代、廃棄物処理費用などのデータを収集し、現状の環境負荷を定量的に把握します。 * 法規制等の確認: 環境関連法規(廃棄物処理法、省エネ法、水質汚濁防止法など)の遵守状況を確認し、適用される法規制を特定します。
ステップ2:環境経営システムの構築(2~3ヶ月)
この段階では、具体的な環境経営の枠組みを設計します。
2-1. 環境方針の策定 * 策定主体: 経営者が、企業の事業特性と環境側面を踏まえ、環境保全に対する基本的な考え方とコミットメントを表明する「環境方針」を作成します。 * 周知・公表: 策定した環境方針は、全従業員に周知徹底し、社外にも公表する方法(例:ウェブサイト掲載、パンフレット)を確立します。
2-2. 環境目標の設定 * 目標の具体化: 環境方針に基づき、「CO2排出量〇%削減」「廃棄物発生量〇%削減」「水使用量〇%削減」など、具体的で測定可能な環境目標を設定します。 * 目標の展開: 全社目標を各部門の特性に合わせて分解し、部門ごとの目標を設定します。 * 実施計画の作成: 目標達成のための具体的な手順、責任者、期限を盛り込んだ実施計画を策定します。
2-3. 環境活動計画の策定 * 活動内容の具体化: 各目標を達成するための具体的な活動内容(例:節電対策の実施、分別徹底、グリーン購入品の導入)を詳細に計画します。 * 資源の確保: 活動に必要な予算、人員、設備などの資源を確保します。
ステップ3:環境活動の実施(3ヶ月以上)
策定した計画に基づき、日々の業務の中で環境活動を実行し、記録します。
3-1. 日常的な環境活動 * 省エネルギー活動: 使用しない電気の消灯、高効率機器の導入、クールビズ・ウォームビズの徹底など。 * 省資源活動: ペーパーレス化、裏紙の利用、備品の大切に使うなど。 * 廃棄物削減・リサイクル活動: 徹底した分別、リサイクルルートの確保、リデュース・リユースの推進など。 * グリーン購入の推進: 環境負荷の少ない製品やサービスの優先的な購入。
3-2. 記録・データ管理 * 環境負荷データの測定・記録: 電力、燃料、水、廃棄物などの使用量・発生量を定期的に測定し、正確に記録します。 * 活動実績の記録: 各環境活動の実施状況や達成度を記録します。 * 法規制等の遵守状況の確認: 関連法規の改正情報に常に注意を払い、遵守状況を定期的に確認します。
3-3. 内部コミュニケーション * 定期的な会議: 環境経営推進委員会などで進捗状況を確認し、問題点や改善策を議論します。 * 情報共有: 環境活動の成果や課題を全従業員に共有し、意識の維持・向上を図ります。 * 改善提案の収集・検討: 従業員からの環境改善に関する提案を積極的に受け入れ、検討します。
ステップ4:環境経営レポートの作成(1ヶ月)
年間の環境活動の成果をまとめ、社内外に公表するためのレポートを作成します。
4-1. 環境経営レポートの構成 * 組織の概要: 企業情報、事業内容。 * 環境方針: 策定した環境方針。 * 環境目標とその実績: 設定した目標と、それに対する達成状況。 * 主な環境活動の内容: 具体的に実施した環境活動とその効果。 * 環境負荷の実績: CO2排出量、廃棄物発生量、水使用量などの数値データ。 * 次年度の取り組み: 今後の環境経営に関する計画。
4-2. 数値データの整理 * CO2排出量の算出: 電力、ガス、燃料使用量からCO2排出量を算出します。 * 廃棄物発生量の集計: 種類ごとの廃棄物発生量を集計し、削減率を算出します。 * 水使用量の集計: 上下水道の使用量を集計します。 * 化学物質使用量の集計: 該当する場合は、使用量や排出量を集計します。
ステップ5:認証申請(1ヶ月)
準備が整ったら、認証審査を申請します。
5-1. 申請書類の準備 * 認証申請書: 所定の申請書に必要事項を記入します。 * 環境経営レポート: 作成した最新の環境経営レポートを提出します。 * 環境経営システムの運用状況を示す書類: 環境マニュアル、手順書、内部監査報告書など、システムが適切に運用されていることを示す書類を準備します。 * その他: 組織図、事業所配置図、登記簿謄本など。
5-2. 申請手続き * 地域事務局への申請書提出: エコアクション21中央事務局または各地域の地域事務局へ提出します。 * 申請手数料の支払い: 所定の申請手数料を支払います。 * 審査日程の調整: 提出後、審査機関と現地審査の日程を調整します。
ステップ6:現地審査(半日~1日)
エコアクション21の審査員が事業所を訪問し、環境経営システムの運用状況を評価します。
6-1. 審査の流れ * 書類審査: 提出された環境経営レポートやその他の書類の内容を確認します。 * 現地での実地審査: 事業所内を巡回し、環境活動の実施状況、設備の運用状況などを確認します。 * 経営者・従業員へのヒアリング: 環境経営責任者や担当者、現場の従業員に対し、環境方針の理解度、活動内容、課題などについてヒアリングを行います。 * 環境活動の実施状況確認: 掲示物、記録類、設備状況などから、環境活動が計画通りに行われているかを確認します。
6-2. 審査のポイント * 環境経営システムの構築状況: ガイドラインに沿ってシステムが構築されているか。 * 環境活動の実施状況: 計画された環境活動が実際に実施され、記録されているか。 * 法規制等の遵守状況: 環境関連法規を遵守しているか。 * 継続的改善の仕組み: PDCAサイクルが機能し、環境パフォーマンスが継続的に改善されているか。
ステップ7:認証取得(審査後1~2ヶ月)
審査に合格すれば、エコアクション21の認証が正式に登録されます。
7-1. 審査結果の通知 * 認証可否の決定: 審査結果に基づき、認証の可否が通知されます。 * 改善要求事項: 軽微な不適合や改善点が指摘された場合、それらの是正・改善計画を提出し、承認されることで認証となります。 * 認証登録証の発行: 正式に認証が認められると、エコアクション21中央事務局から認証登録証が発行されます。
7-2. 認証後の活動 * 認証マークの活用: 名刺、ウェブサイト、パンフレットなどに認証マークを使用し、環境への取り組みを積極的にアピールできます。 * 環境経営レポートの公表: レポートを積極的に公表することで、企業の透明性と信頼性を高めます。 * 継続的な環境活動の実施: 認証取得はゴールではなく、新たなスタートです。引き続きPDCAサイクルを回し、環境活動を継続・改善していきます。
よくある課題と対策
エコアクション21の導入・運用において、企業が直面しやすい課題とその対策をまとめました。
- 課題1:従業員の理解不足
- 対策: 定期的な研修や説明会を実施し、エコアクション21の重要性や目的を繰り返し伝えることが重要です。具体的な目標設定や活動への参加を促すことで、従業員の環境意識を向上させ、主体的な行動を引き出します。
- 課題2:データ管理の負担
- 対策: 複雑なデータ管理は担当者の負担になります。必要最低限のデータに絞る、エクセル等の汎用ソフトを活用して記録を簡素化する、担当者を明確にするなどの工夫で負担を軽減できます。場合によっては、データ管理をサポートするシステムの導入も有効です。
- 課題3:継続的な改善活動
- 対策: 認証取得が目的化してしまい、その後の改善活動が停滞することがあります。定期的な内部監査と経営者レビューを確実に実施し、PDCAサイクルを回し続ける仕組みを定着させることが不可欠です。目標の見直しや新たな課題設定も重要です。
行政書士法人塩永事務所のサポート内容
行政書士法人塩永事務所では、エコアクション21の認証取得から維持・更新まで、お客様の事業特性に応じたオーダーメイドのサポートを提供しています。
認証取得支援
- 初期診断と導入計画の策定: お客様の現状をヒアリングし、最適な認証取得スケジュールと導入計画をご提案します。
- 環境経営システムの構築支援: 環境方針策定、環境側面特定、目標設定、活動計画策定など、システム構築の全てをサポートします。
- 環境経営レポートの作成支援: 複雑なデータ整理やレポート作成を支援し、分かりやすく効果的なレポート作成をお手伝いします。
- 認証申請書類の作成・提出代行: 申請書類の準備から提出まで、煩雑な手続きを代行いたします。
- 現地審査対応支援: 審査前の最終確認、審査当日の立ち会いなど、審査をスムーズに進めるためのサポートを行います。
継続支援
- 年次審査の準備支援: 認証後の年次審査(更新審査)に向けた準備をサポートし、継続的な認証維持を支援します。
- 環境経営レポートの更新支援: 毎年発行が義務付けられている環境経営レポートの更新を支援します。
- 改善活動の提案・実施支援: 環境パフォーマンスをさらに向上させるための改善活動について、具体的な提案と実施を支援します。
- 法規制変更への対応支援: 環境関連法規の改正情報を常に把握し、お客様が適切に対応できるようサポートします。
費用対効果の最大化
- 補助金・助成金の活用提案: エコアクション21関連で利用可能な補助金や助成金について情報提供し、活用をサポートします。
- 融資制度の情報提供: 環境経営に積極的な企業向けの融資制度をご紹介し、資金調達の機会を広げます。
- 公共工事での活用方法の説明: 認証取得が公共工事の入札にどのように有利に働くか、具体的な活用方法をご説明します。
まとめ
エコアクション21の認証取得は、単なる形式的な手続きではなく、環境への配慮を通じて企業の経営力を強化し、持続的な成長を実現するための有効な経営戦略です。適切な準備と継続的な取り組みにより、認証取得は十分に可能です。
行政書士法人塩永事務所は、お客様の事業特性に応じた丁寧なサポートを通じて、確実な認証取得と、その後の継続的な環境経営の実現をお手伝いいたします。
お問い合わせ
エコアクション21の認証取得をご検討の際は、お気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
行政書士法人塩永事務所 〒862-0950 熊本県熊本市中央区水前寺1-9-6 TEL: 096-385-9002 Email: info@shionagaoffice.jp 営業時間: 平日 9:00~18:00