
日本版DBS(こども性暴力防止法):熊本県内で子どもに関わる事業者が今から準備すべきこと 行政書士法人塩永事務所
重要な訂正:
- 制度の正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(通称:こども性暴力防止法)
- 施行時期:2026年度中(2025年12月ではありません)
- 現在はまだ政令・ガイドライン策定段階
こども性暴力防止法(日本版DBS)とは何か?
**DBS(Disclosure and Barring Service)**とは、元々イギリスで導入されている制度で、子どもや高齢者など特に支援が必要な人々と接する職に就く人に対して、過去の性犯罪歴の有無を確認することを義務付けています。
この制度が日本でも導入され、2024年6月19日に「こども性暴力防止法」として成立し、同月26日に公布されました。2026年度中の制度開始となる見込みです。
主な対象分野は、保育園、幼稚園、認定こども園、学校(小・中・高・特別支援学校)、放課後等デイサービス、学童クラブ、学習塾、習い事教室など、子どもと日常的に接する機会のある職場です。
現在の制度準備状況
2024年9月13日にこども家庭庁は、第1回「こども性暴力防止法に関する関係府省庁連絡会議」を開催し、関連する省庁とともに法施行に向けたスケジュールや主な論点について検討しました。
今後の予定:
- 2025年度:政令・ガイドライン策定、システム構築、事務マニュアル整備、事業者等への周知広報
- 2026年度中:制度開始
制度の概要
対象となる犯罪
日本版DBS制度の確認対象となる犯罪は、法律に「特定性犯罪」として明記されています。具体的には、児童ポルノ禁止法違反や不同意性交等罪などです。そのほか、痴漢や盗撮などの条例違反も含まれます。
確認の流れ
事業者による確認申請にしたがって、こども家庭庁が法務省に照会を行い、性犯罪歴の有無を確認します。確認の結果、性犯罪歴がなければ「犯罪事実確認書」が事業者に交付され、手続きは終了します。
性犯罪歴がある場合、まず対象者本人に通知されます。通知内容に誤りがあった場合、2週間以内であれば訂正請求が可能です。また2週間以内に退職もしくは内定辞退すれば、職場に犯罪歴は通知されません。
費用
日本版DBSの義務化対象の施設であれば、確認は無料です。ただし、認定制の施設では手数料が発生します。
制度導入の背景
日本で制度導入を求める声が高まったのは、2020年にベビーシッター仲介サービスを通して派遣された男性シッター2人が、保育中の子どもへの強制わいせつ容疑などで相次いで逮捕されたのがきっかけでした。
2023年4月に発足したこども家庭庁は、日本版DBSの制度設計に関する有識者会議を開催して議論を重ね、2023年9月に報告書をとりまとめました。
現在判明している重要なポイント
対象範囲
制度は新規採用者だけでなく、現在働く職員も性犯罪歴照会の対象とされています。学校や幼稚園、保育所などで現在働く職員は少なくとも230万人にのぼり、これらの職員の性犯罪歴確認が必要となる見込みです。
事業者の義務
法律では、対象事業者に対して以下の義務が課されています:
- 教員等及び教育保育等従事者による性暴力等の防止に努めること
- 被害児童等を適切に保護する責務を有すること
熊本県内の事業者が現在すべきこと
現在はまだ政令・ガイドライン策定段階のため、具体的な手続きは確定していませんが、以下の準備を進めることをお勧めします:
1. 情報収集体制の整備
- こども家庭庁の公式サイトを定期的に確認
- 関連する業界団体からの情報収集
- 法改正・制度変更への対応体制の整備
2. 内部体制の整備準備
- 個人情報保護体制の見直し
- 採用プロセスの見直し検討
- 職員研修計画の策定
3. 現職員への説明準備
- 制度の目的と概要の理解
- 個人情報保護の重要性についての認識共有
- 職員の不安や疑問への対応準備
4. 関連規程の見直し準備
- 就業規則の見直し検討
- 個人情報保護規程の更新検討
- 採用規程の見直し検討
個人情報保護への配慮
性犯罪歴という極めてデリケートな情報を扱うため、個人情報保護への配慮は最重要課題です。以下の点について準備が必要です:
- 対象者本人の明確な同意取得方法
- 厳格な情報管理体制の整備
- アクセス権限の限定
- 情報漏洩時の対応フロー策定
- 保管期間の設定と確実な破棄方法
注意すべき点
1. 制度の正確な理解
- 正式名称は「こども性暴力防止法」
- 施行は2026年度中(2025年12月ではない)
- 現在はまだ準備段階
2. 情報の正確性
- 公式情報(こども家庭庁発表)を優先する
- 憶測や不確実な情報に基づく対応は避ける
- 専門家や関係機関との連携を図る
3. 現職員への配慮
- 制度導入による不安の軽減
- 適切な説明とサポート
- プライバシー保護の徹底
今後の見通し
正式なガイドラインは2025年度中に策定される予定ですが、現段階から情報収集と準備を進めておくことで、制度導入後もスムーズに対応することが可能になります。
事業者様へのメッセージ
こども性暴力防止法は、子どもたちを性犯罪から守るための社会全体での取り組みです。熊本県内で子どもに関わる事業を運営されている皆様にとって、この制度は子どもたちの安全を守り、保護者からの信頼を獲得する重要な機会となります。
現在はまだ準備段階ですが、正確な情報に基づいた適切な準備を進めることで、制度導入時にも安心して対応できるよう、今から体制整備を始めることをお勧めします。
重要: 制度の詳細については、こども家庭庁の公式発表を必ず確認し、不明な点は専門家や関係機関にご相談ください。