運送業許可申請の完全ガイド
運送業許可の種類と概要
運送業を開始するには、事業の規模や使用する車両によって異なる許可・届出が必要です。
一般貨物自動車運送事業許可
- 対象車両: 普通トラック、大型トラック等
- 最低車両台数: 5台以上
- 手続き: 許可制（審査あり）
- 審査期間: 約3～4ヶ月
貨物軽自動車運送事業
- 対象車両: 軽トラック、軽バン等
- 最低車両台数: 1台から可能
- 手続き: 届出制
- 手続き期間: 即日～数日
一般貨物自動車運送事業許可の詳細要件
1. 営業所に関する要件
- 立地条件: 市街化調整区域でないこと、農地でないこと
- 使用権原: 3年以上の使用権原を有すること（賃貸借契約書等で証明）
- 規模: 事業計画に対し適切な規模であること
- 建築基準法等: 関係法令に適合していること
2. 車庫に関する要件
- 位置: 営業所から直線距離で2km以内（政令指定都市等では20km以内の特例あり）
- 面積: 車両1台あたり38㎡以上（大型車両は更に広く）
- 出入口: 前面道路の幅員が車両制限令に適合していること
- 使用権原: 3年以上の使用権原を有すること
3. 車両に関する要件
- 最低車両数: 5台以上
- 車種: 事業計画に適した車両であること
- 使用権原: 使用権原を有する車両であること（購入予定も可）
4. 人的要件
運行管理者
- 資格: 運行管理者資格者証を有する者
- 配置基準: 車両29台以下は1名、30台以上は30台毎に1名追加
- 専任性: 原則として専任であること
整備管理者
- 資格: 整備士資格又は実務経験者
- 配置基準: 事業用自動車の点検・整備を統括管理
- 選任届: 許可取得後に運輸局へ選任届を提出
運転者
- 免許: 該当する運転免許を有すること
- 人数: 事業計画に応じた適切な人数を確保
5. 資金計画
以下の資金を常時確保できることが必要です。
所要資金
- 車両費（購入費又はリース・レンタル費用の1年分）
- 建物費（購入費又は賃借料等の1年分）
- 土地費（購入費又は賃借料等の1年分）
- 機械器具費、什器備品費
- 運転資金（2ヶ月分）
- 人件費
- 燃料費・油脂費
- 修繕費
- 保険料
- 租税公課
自己資金証明
- 預金残高証明書
- 融資証明書（金融機関発行）
- その他資金調達を証する書面
申請手続きの流れ
1. 事前準備（1～2ヶ月）
- 営業所・車庫の確保
- 車両の選定・確保
- 運行管理者・整備管理者の確保
- 資金計画の策定
2. 申請書類の作成・提出
主要な提出書類
- 一般貨物自動車運送事業経営許可申請書
- 事業計画書
- 事業用自動車の運行管理等の体制を記載した書面
- 資金計画及び調達方法を記載した書面
- 営業所の案内図・見取図・写真
- 車庫の案内図・配置図・写真
- 車庫前面道路の幅員証明書
- 営業所・車庫の使用権原を証する書面
- 役員の履歴書
- 運行管理者・整備管理者の資格を証する書面
- 資金調達を証する書面
3. 審査期間（3～4ヶ月）
- 書面審査
- 法令試験（申請者が受験）
- 現地確認（必要に応じて）
4. 許可書交付
- 許可条件の履行状況確認
- 許可書の交付
5. 許可取得後の手続き
- 車両登録（緑ナンバー取得）
- 運輸開始前確認（車両・施設の確認）
- 運輸開始届の提出
- 運行管理者・整備管理者選任届の提出
法令試験について
試験概要
- 実施時期: 申請から約2～3ヶ月後
- 受験者: 申請者（法人の場合は常勤役員）
- 出題範囲: 貨物自動車運送事業法及び関連法令
- 合格基準: 80％以上の正答率
主な出題分野
- 貨物自動車運送事業法
- 貨物自動車運送事業法施行規則
- 貨物自動車運送事業報告規則
- 自動車事故報告規則
- 道路運送法
- 道路交通法
- 労働基準法（運転者関係）
- 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
許可取得後の義務
1. 定期的な報告・届出
- 事業報告書（毎年7月10日まで）
- 事業実績報告書（毎年7月10日まで）
- 各種変更届（事業計画変更時等）
2. 法令遵守
- 運行管理の適正な実施
- 整備管理の適正な実施
- 運転者の労働条件の確保
- 安全教育の実施
3. 監査・処分
- 国土交通省による監査を受ける義務
- 法令違反時の行政処分（警告、事業停止、許可取消等）
貨物軽自動車運送事業の手続き
届出要件
- 営業所の確保
- 車庫の確保（営業所と併設可、直線距離2km以内）
- 車両1台以上の確保
- 運転者の確保
届出書類
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 運賃料金表
- 事業用自動車等連絡書
手続きの流れ
- 運輸支局へ届出書提出
- 事業用自動車等連絡書の交付
- 軽自動車検査協会で車両登録（黒ナンバー取得）
- 運輸開始
よくある申請不備と対策
営業所・車庫関係
- 都市計画法、建築基準法への適合性確認不足
- 使用権原の期間不足（3年未満）
- 前面道路幅員の確認不足
資金計画関係
- 所要資金の算定誤り
- 自己資金の証明書類不備
- 資金の流用可能性の検討不足
人的要件関係
- 運行管理者資格の確認不足
- 整備管理者要件の確認不足
- 法令試験対策不足
申請のポイント
運送業許可申請は、法的要件が厳格で専門的な知識が必要な手続きです。申請書類の作成から許可取得まで相当な期間を要するため、事業開始予定日から逆算して余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
また、許可取得後も継続的な法令遵守が求められるため、事業運営体制を十分に整備してから申請に臨むことをお勧めします