
風営5号店(ポーカー)申請手続の詳細解説
行政書士法人塩永事務所
風営5号営業とは
風営5号営業(遊技場営業)は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条第1項第5号に規定される営業形態です。ゲームセンター、アミューズメントカジノ、カジノバー、ポーカーバー等を開業し営業するには、風俗営業(第5号)の許可申請を行い、公安委員会(警察署)から許可を取得することが必要です。
ポーカー店が風営5号営業に該当する理由
風営法5号許可は、麻雀やパチンコほどではないけれども、のめり込みやすいゲームを提供しているお店が取得しなくてはならない許可となります。
ポーカーは以下の理由から風営5号営業の対象となります:
- 射幸性のあるゲーム:プレイヤーの技術に依存する部分はあるものの、カードの配布に偶然性があり射幸心を刺激する要素がある
- 現金に換算可能なチップの使用:ゲーム内でチップを使用し、その価値が現金と連動している
- 長時間の滞在を前提とした営業形態:プレイヤーが長時間滞在し、継続的にゲームに参加する環境を提供
無許可営業の罰則
もし無許可で営業した場合、懲役2年以下または200万円以下の罰金、もしくは併科(両方を受ける)などの罰則があります。
許可要件
風営5号営業の許可を取得するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
1. 人的要件
申請者本人の要件
以下に該当する者は許可を受けることができません:
- 未成年者(18歳未満)
- 成年被後見人・被保佐人
- 破産者で復権していない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者(執行終了から5年を経過していない場合)
- 風営法違反により罰金刑を受けた者(執行終了から5年を経過していない場合)
- 暴力団員等
- アルコール・薬物中毒者
- 風営法に基づく許可を取り消された者(取消しから5年を経過していない場合)
法人の場合の追加要件
- 役員全員が上記の欠格事由に該当しないこと
- 株主・出資者で議決権の過半数を有する者が欠格事由に該当しないこと
管理者の要件
営業所ごとに管理者を選任する必要があり、管理者も申請者と同様の欠格事由に該当してはいけません。
2. 場所的要件
営業所の立地規制
以下の施設から一定の距離を保つ必要があります:
- 学校等(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、幼稚園、保育所等)
- 図書館
- 児童福祉施設
- 病院・診療所
- 社会教育施設(公民館等)
距離制限は都道府県の条例により定められており、一般的に50m~200mの範囲で設定されています。
営業禁止区域
以下の区域では営業が禁止されています:
- 住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域)
- 文教地区
- その他条例で定められた区域
3. 設備・構造要件
基本的な構造要件
- 営業所の面積:最低面積の規定(都道府県により異なる)
- 照明設備:十分な明るさの確保(10ルクス以上)
- 換気設備:適切な換気の確保
- 防音設備:騒音対策の実施
- 客席の配置:見通しの確保、適切な間隔の確保
ポーカー店特有の設備要件
- ゲームテーブル:適切な大きさと配置
- チップ管理システム:チップの適切な管理体制
- 監視設備:不正防止のための監視カメラ等
- 現金管理設備:現金とチップの交換に関する適切な設備
申請手続の流れ
1. 事前相談
管轄の警察署生活安全課に事前相談を行います。営業予定地の適法性、設備計画の確認等を行います。
2. 申請書類の準備
必要書類を収集・作成します。
3. 申請書提出
管轄の警察署に申請書類を提出します。
4. 実地調査
警察による営業所の実地調査が行われます。
5. 審査
書類審査と実地調査の結果に基づき、公安委員会で審査が行われます。
6. 許可・不許可の決定
審査結果に基づき、許可または不許可が決定されます。
必要書類
基本書類
- 風俗営業許可申請書(第1号様式)
- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の図面
- 平面図(縮尺1/100以上)
- 求積図
- 周辺状況図
- 建物立面図
- 営業所の使用権限を疎明する書類
- 不動産登記簿謄本
- 賃貸借契約書の写し等
- 建物の検査済証の写しまたは建築確認通知書の写し
申請者関係書類
個人の場合
- 住民票の写し(本籍地記載、3か月以内のもの)
- 身分証明書(本籍地の市区町村発行、3か月以内のもの)
- 登記されていないことの証明書(法務局発行、3か月以内のもの)
- 誓約書
- 履歴書
法人の場合
- 定款の写し
- 登記簿謄本(3か月以内のもの)
- 役員全員の住民票の写し(本籍地記載、3か月以内のもの)
- 役員全員の身分証明書(本籍地の市区町村発行、3か月以内のもの)
- 役員全員の登記されていないことの証明書(法務局発行、3か月以内のもの)
- 役員全員の誓約書
- 役員全員の履歴書
管理者関係書類
- 管理者設置届
- 管理者の住民票の写し(本籍地記載、3か月以内のもの)
- 管理者の身分証明書(本籍地の市区町村発行、3か月以内のもの)
- 管理者の登記されていないことの証明書(法務局発行、3か月以内のもの)
- 管理者の誓約書
- 管理者の履歴書
資金関係書類
- 資金調達明細書
- 資金の出所を疎明する書類
- 預金残高証明書
- 金融機関の融資証明書等
審査期間と手数料
審査期間
- 標準的な審査期間:約2~3か月
- 複雑な案件や問題がある場合:3~6か月程度
手数料
- 許可申請手数料:都道府県により異なる(一般的に20,000円~25,000円程度)
許可後の義務
1. 営業開始等の届出
- 営業開始届:営業開始から10日以内
- 営業停止届:営業を停止した場合
- 営業廃止届:営業を廃止した場合
2. 変更届
以下の事項に変更があった場合は届出が必要です:
- 営業所の構造・設備
- 管理者の変更
- 営業の方法
- 営業時間
3. 営業時間の遵守
一般的に午前6時から翌日午前0時まで(都道府県により異なる)
4. 年少者の立入禁止
18歳未満の者の立入を禁止する必要があります。
5. 帳簿の作成・保存
営業に関する帳簿を作成し、3年間保存する必要があります。
ポーカー店特有の注意点
1. 賭博罪との関係
現金やそれに類する財物を賭けた場合は賭博罪に該当する可能性があります。以下の点に注意が必要です:
- チップの現金化禁止:プレイヤーが獲得したチップを現金に換金することは禁止
- 参加費の設定:ゲーム参加費は適正な範囲に設定
- 景品の提供:景品を提供する場合は適法な範囲内で実施
2. トーナメント開催時の注意
ポーカートーナメントを開催する場合は以下に注意:
- 賞金・賞品の設定:射幸心を著しく刺激しない範囲での設定
- 参加費の妥当性:常識的な範囲内での参加費設定
- 公平性の確保:不正防止対策の実施
3. 酒類提供に関する注意
ポーカーバーとして酒類を提供する場合:
- 酒類販売業免許:別途、酒類販売業免許が必要
- 深夜酒類提供飲食店営業:深夜に酒類を提供する場合は届出が必要
- 食品衛生法上の許可:飲食物を提供する場合は食品衛生法上の許可が必要
よくある質問
Q: オンラインポーカーの実況配信をしながら営業することは可能ですか? A: オンラインポーカー自体は日本では賭博に該当する可能性が高く、実況配信であっても注意が必要です。弁護士と相談の上、適法性を慎重に検討することをお勧めします。
Q: トーナメントの賞金上限はありますか? A: 明確な上限は定められていませんが、射幸心を著しく刺激しない範囲での設定が求められます。参加費に対して常識的な範囲の賞金設定が望ましいです。
Q: 会員制にすることで規制を回避できますか? A: 会員制であっても、不特定多数の者を対象とした営業と判断される可能性があります。会員制の形態だけでは風営法の適用を回避することはできません。
Q: 他の都道府県で許可を受けていれば、別の都道府県でも営業できますか? A: 風営法の許可は都道府県ごとに必要です。他の都道府県で営業する場合は、その都道府県で改めて許可を取得する必要があります。
申請時の注意点
1. 事前調査の重要性
営業予定地の立地条件、建物の構造等について十分な事前調査を行うことが重要です。
2. 設計段階からの関与
建物の設計段階から風営法の要件を考慮した設計を行うことで、後からの変更工事を避けることができます。
3. 近隣対策
近隣住民への説明・了解を得ることで、後のトラブルを避けることができます。
4. 専門家の活用
風営法は複雑な法律であり、適切な申請のためには専門家のサポートが重要です。
まとめ
風営5号営業(ポーカー店)の許可申請は、人的要件、場所的要件、設備・構造要件の全てを満たす必要がある複雑な手続きです。特にポーカー店の場合は、賭博罪との関係や射幸性の問題について慎重な検討が必要です。
適法な営業を行うためには、申請段階から専門家のサポートを受けることをお勧めします。当事務所では、豊富な経験に基づき、お客様の事業計画に最適な申請方法をご提案いたします。
行政書士法人塩永事務所
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