
旅館業の許可申請を専門家が徹底解説|行政書士法人塩永事務所
熊本の行政書士法人塩永事務所です。当事務所は、建設業許可や農地転用など、多岐にわたる法務手続きをサポートしております。本記事では、当事務所の専門分野の一つである「旅館業の許可申請」について、これから事業を始めようとお考えの皆様に、専門的な見地からその詳細を解説いたします。
近年、インバウンド需要の回復や国内旅行の活性化に伴い、旅館やホテル、簡易宿所といった宿泊施設の経営に関心をお持ちの方が増えています。しかし、旅館業を始めるためには、旅館業法に基づく許可を取得する必要があり、その手続きは煩雑で専門的な知識を要します。
本記事が、皆様の事業計画の一助となれば幸いです。
1. 旅館業許可の概要と種類
旅館業とは、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、その営業形態によって以下の4つに分類されます。それぞれの種別で施設基準などが異なるため、ご自身の事業計画がどれに該当するのかを正確に把握することが第一歩となります。
2018年の旅館業法改正により、従来あった「ホテル営業」と「旅館営業」の区分は「旅館・ホテル営業」に一本化されました。
2. 旅館業許可申請の主な流れ
旅館業の許可を取得するまでのプロセスは、大きく分けて以下のようになります。各ステップで留意すべき点があり、特に事前相談の段階が極めて重要です。
ステップ1:事前相談 施設の所在地を管轄する保健所の担当窓口に、事業計画の概要や施設の図面を持参し、相談します。この段階で、旅館業法の施設基準に適合するかどうか、また、都市計画法や建築基準法、消防法など、他の関連法令に抵触しないかを確認します。特に、建物の用途地域によっては旅館業が営業できない場合があるため、物件取得前の確認が不可欠です。
ステップ2:関係各所との協議 保健所での相談と並行して、以下の関係機関とも協議を進める必要があります。
- 消防署:消防法令適合通知書の交付を受けるため、消防設備の設置計画について協議します。
- 建築指導課(または土木事務所):建築基準法上の用途変更の要否や、建物の構造が適法であるかを確認します。
- その他:温泉を利用する場合は温泉法、食事を提供する場合は食品衛生法など、事業内容に応じた関係法令の確認と手続きが必要になります。
ステップ3:許可申請書類の作成・提出 すべての基準をクリアできる見通しが立ったら、許可申請書と添付書類を準備し、保健所に提出します。申請手数料は自治体によって異なりますが、概ね22,000円程度です。
ステップ4:施設検査 申請書類が受理されると、保健所の担当者による現地調査(実地検査)が行われます。申請内容と実際の施設の状況が一致しているか、法令に定められた基準を満たしているかが厳しくチェックされます。消防署の検査もこの段階で行われることが一般的です。
ステップ5:許可証の交付 検査に合格すると、晴れて旅館業営業許可証が交付され、営業を開始することができます。申請から許可証の交付までには、通常1ヶ月程度の期間を要しますが、施設の改修工事などを伴う場合は、さらに多くの時間が必要となります。
3. 主な許可要件(施設基準)
旅館業の許可を得るためには、法律や条例で定められた構造設備の基準を満たす必要があります。ここでは「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」の主な基準を抜粋してご紹介します。
【旅館・ホテル営業の主な施設基準】
- 客室:
- 一客室の床面積は、原則として7平方メートル(寝台を置く場合は9平方メートル)以上であること。
- 宿泊者との面接に適した玄関帳場(フロント)があること。
- 入浴設備:宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
- トイレ:宿泊者の需要を満たすことができる数を有し、水洗式でなければならない等の基準があります。
- 換気・採光等:適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
【簡易宿所営業の主な施設基準】
- 客室の延床面積:原則として33平方メートル以上であること(宿泊者数が10人未満の場合は、3.3平方メートルに宿泊者数を乗じた面積以上)。
- その他:入浴設備やトイレ、換気等の基準は、旅館・ホテル営業と同様に定められています。
これらの基準は、各自治体の条例によって付加的な要件が定められている場合がありますので、必ず管轄の保健所で詳細を確認する必要があります。
4. 許可申請に必要な書類
申請時に必要となる主な書類は以下の通りです。こちらも自治体によって若干異なりますので、事前の確認が必須です。
- 旅館業営業許可申請書
- 営業施設の構造設備の概要を記載した書類
- 施設の各階平面図、正面図、側面図、配管図等
- 施設を中心とした半径300メートル以内の見取り図
- 【法人の場合】定款または寄附行為の写し、登記事項証明書
- 【個人の場合】住民票の写し
- 消防法令適合通知書
- 建築基準法に基づく検査済証の写し
- 水質検査成績書の写し(井戸水等を使用する場合)
- その他、保健所長が必要と認める書類
5. 行政書士に依頼するメリット
ここまでご覧いただいたように、旅館業の許可申請は、複数の法令が複雑に絡み合い、多くの専門的な書類作成と関係機関との折衝を要する非常に難易度の高い手続きです。
事業者様ご自身でこれらの手続きを進めることも不可能ではありませんが、多大な時間と労力がかかるだけでなく、書類の不備や法令解釈の誤りによって、事業開始が大幅に遅れてしまうリスクも少なくありません。
私たち行政書士のような専門家にご依頼いただくことで、以下のようなメリットが生まれます。
- 煩雑な手続きの一括代行:物件調査から、関係機関との協議、書類作成、申請代行、検査の立ち合いまで、専門家が責任を持って対応し、事業者様の負担を大幅に軽減します。
- 迅速かつ確実な許可取得:豊富な知識と経験に基づき、最短ルートで許可が取得できるよう、計画段階から的確なアドバイスを提供します。これにより、事業機会の損失を防ぎます。
- ワンストップサービスの提供:必要に応じて、建築士や司法書士といった他の専門家と連携し、事業開始までをトータルでサポートすることが可能です。
まとめ
旅館業の経営は、大きな魅力と可能性を秘めた事業ですが、その第一歩である許可申請は、決して軽視できない重要なプロセスです。計画の初期段階から専門家にご相談いただくことが、スムーズな事業開始の鍵となります。
行政書士法人塩永事務所では、豊富な経験とフットワークの軽さを活かし、事業者様一人ひとりの状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。熊本県内で旅館業の開業をご検討中の方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。
行政書士法人塩永事務所 代表:塩永 健太郎 所在地:熊本県熊本市中央区水前寺1-9-6 電話番号:096-385-9002 営業時間:月~金 9:00~18:00 ご相談は随時受け付けております。まずはお電話かメールにてお問い合わせください。