
【専門家が完全解説】風営法5号営業とは?許可要件から遵守事項まで|行政書士法人塩永事務所
公開日: 2025年6月
はじめに
「風俗営業」と聞くと、少し特別な業界をイメージされるかもしれません。しかし、実は私たちの身の回りには「風俗営業」に該当するお店が数多く存在します。その代表格が、今回解説する**「風俗営業法5号(風営法5号)」**です。
具体的には、ゲームセンターや雀荘、近年人気のポーカールームなどがこれにあたります。これらのお店を開業・運営するには、公安委員会(窓口は警察署)から風営法の許可を得る必要があり、非常に厳格なルールが定められています。
私たち行政書士法人塩永事務所は、熊本を拠点に、この複雑な風営法5号営業の許可申請を数多くサポートしてまいりました。本記事では、5号営業とは何か、どのようなお店が該当するのか、そして許可取得から運営までの重要ポイントを、専門家の視点から詳しく解説します。
1. 風営法5号営業に該当するお店とは?
風営法5号営業は、法律(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第2条第1項第5号)で以下のように定義されています。
「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗その他これに類する営業で、遊技の結果に応じて賞品を提供し、又は客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせるもの(4号営業に該当するものを除く。)」
少し難しい表現ですが、簡単に言えば**「設備を使って客に遊技をさせ、その結果によって景品を提供したり、射幸心(=偶然の利益を求める気持ち)をあおったりする可能性のあるお店」**のことです。
具体的には、以下のような業態が該当します。
- ゲームセンター、アミューズメント施設
- パチンコ、パチスロ店
- 雀荘(マージャン店)
- アミューズメントカジノ、ポーカールーム
- (設備の機能や営業形態によっては)ダーツバー、シミュレーションゴルフなど
ご自身の計画しているお店が該当するかどうか、自己判断は禁物です。必ず専門家にご相談ください。
2. 許可を取得するための「3つの絶対要件」
5号営業の許可を得るためには、大きく分けて「人的要件」「場所的要件」「構造的要件」の3つを全てクリアしなければなりません。
① 人的要件(誰が営業できるか?)
申請者(法人の場合は役員全員)やお店の管理者になれない人の条件(欠格事由)が法律で定められています。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 1年以上の懲役もしくは禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 風営法違反、刑法(賭博罪等)、売春防止法違反などで罰金刑を受け、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 過去に風俗営業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者 など
② 場所的要件(どこで営業できるか?)
お店を設置できる場所には厳しい制限があります。
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用途地域の制限: 都市計画法で定められた「用途地域」によって、営業が禁止されているエリアがあります。熊本市の場合、**「第一種・第二種住居専用地域」「第一種・第二種中高層住居専用地域」「第一種・第二種住居地域」**などでは原則として営業できません。「商業地域」「近隣商業地域」「準工業地域」などが主な候補地となります。
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保護対象施設からの距離制限: 学校、病院、図書館、保育所などの施設を「保護対象施設」といい、これらの施設から一定の距離が離れていなければ営業は許可されません。この距離は、熊本県の条例により、お店がある用途地域と保護対象施設の種類によって細かく定められています(例:商業地域にあるお店と学校・病院・図書館とは50m以上離れていること)。
【重要】 物件を契約する前に、この場所的要件をクリアできるかどうかの調査が不可欠です。契約後に許可が取れないことが判明しても、家賃は発生し続けます。必ず専門家による事前調査を行いましょう。
③ 構造的要件(どんな店舗ならOKか?)
お店の内部構造や設備にも、以下のような基準が定められています。
- 客室の内部が見通せること: 施錠のできる個室や、高さ1m以上のつい立てなど、見通しを妨げる設備を設置することは原則として禁止されています。
- 善良な風俗を害する装飾等の禁止: 過度に刺激的な写真や装飾などは認められません。
- 照度の確保: 客室の明るさが10ルクス以下とならないようにしなければなりません。
- 騒音・振動の規制: 周辺の環境を損なわないよう、条例で定められた基準値を超えてはいけません。
3. 申請から許可までの流れ
- 事前相談・物件調査: 事業計画を立て、専門家(行政書士)へ相談。候補物件の場所的要件を徹底的に調査します。
- 書類作成・収集: 申請書や営業方法の概要書、誓約書、そして最も専門性が要求される各種図面(平面図、求積図、音響・照明設備図など)を作成・収集します。
- 警察署へ申請: 店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課が申請窓口です。
- 実査(現地調査): 警察署と風俗環境浄化協会の担当者が店舗を訪れ、図面通りに施工されているか、構造要件を満たしているかを実地で検査します。
- 許可証の交付: 申請から実査を経て、問題がなければ許可証が交付されます。申請から交付までの標準的な期間は約55日です。
4. 営業開始後に守るべき重要ルール(遵守事項)
許可はゴールではなくスタートです。運営にあたっては、以下のルールを必ず守らなければなりません。
- 営業時間: 原則として、深夜0時(一部地域では深夜1時)から日の出までは営業できません。
- 年少者の立入制限:
- 18歳未満の者は、午後10時から翌日の日の出までの時間は立ち入らせてはいけません(保護者同伴でも不可)。
- 16歳未満の者は、午後6時(保護者同伴の場合は午後10時)から翌日の日の出までは立ち入らせてはいけません。
- 賞品の提供に関する規制:
- 現金や有価証券を賞品として提供することは賭博にあたり、絶対にできません。
- 提供できる物品の小売価格は、おおむね1,000円以内とされています。高額なプライズは提供できません。
- 名義貸しの禁止: 許可を受けた本人(法人)以外が営業を行うことは固く禁じられています。
- 構造・設備の維持: 許可を受けた時の構造や設備を勝手に変更してはいけません。変更する場合は、事前に警察署へ「変更承認申請」や「変更届出」が必要です。
これらの遵守事項に違反すると、指示処分や営業停止命令、さらには許可取消しといった重い行政処分や、罰則が科される可能性があります。
まとめ
風営法5号営業は、多くの人々に楽しみを提供する社会的に意義のあるビジネスです。しかしその一方で、青少年保護や善良な風俗の保持といった観点から、非常に厳格な規制の下に成り立っています。
「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断が、取り返しのつかない事態を招くことも少なくありません。
私たち行政書士法人塩永事務所は、風営法に関する深い知識と豊富な経験で、お客様が安心して事業に専念できるよう、法的側面から強力にサポートいたします。物件調査から複雑な書類作成、許可後の運営に関するご相談まで、ワンストップでお任せください。
風営法5号営業の開業をご検討中の方は、ぜひ一度、当事務所の初回無料相談をご利用ください。
本件に関するお問い合わせ
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