
2025年6月、トラック運送業界において大きな変革となる「5年更新制」が、改正貨物自動車運送事業法の成立により正式に決定しました(参院本会議で可決、2025年6月4日)。本稿では、この制度の概要、背景、実務への影響、事業者が取るべき対応策を、行政書士の視点から最新情報に基づいて解説します。
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法令遵守状況:貨物自動車運送事業法、労働基準法、道路運送車両法などの遵守状況。過去5年間の行政処分(輸送施設の使用停止、事業停止、許可取消など)の有無や改善措置の実施状況。
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財務状況:債務超過や連続赤字の有無、健全な資金管理の実施。直近3年間の財務諸表(貸借対照表、損益計算書)が評価対象。
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安全管理体制:事故防止対策、運輸安全マネジメントの実施、アルコールチェック記録、Gマーク取得状況など。
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労働環境:ドライバーの健康管理、時間外労働の上限規制(年間960時間、2024年4月施行の「2024年問題」対応)、休息時間(11時間以上)の確保。
これらの基準を満たさない場合、許可更新が認められず、事業継続が困難になるリスクがあります。国土交通省の2023年度データによると、約6.2万社のトラック運送事業者のうち、**約5%(約3,100社)**が財務や法令遵守の課題で許可継続に影響を受ける可能性があると推定されています。
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法令違反事業者の排除:一部の事業者が違法な運賃設定や過重労働を強いるケースが問題視されており、業界全体の信頼性向上が求められています。
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過当競争の是正:不当に安い運賃での受注が横行し、事業者の収益圧迫や持続可能な経営の阻害要因となっています。改正法では、国土交通相が定める「適正原価」を継続的に下回らない運賃設定が義務付けられます。
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ドライバーの労働環境改善:長時間労働や低賃金が常態化しており、2024年4月施行の「物流の2024年問題」(時間外労働の上限規制:年間960時間)への対応が急務です。更新制により、労働者の適切な処遇確保が審査基準に追加されました。
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多重下請けの是正:下請け構造の適正化を図り、原則として2次を超える下請けを制限するルールが新設されます。
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白トラック(無許可営業)の排除:荷主による白ナンバートラックの違法利用に対し、国土交通省の是正指導が強化されます。
これらの課題は、物流の安定供給や交通安全を脅かす要因であり、業界の健全化と持続可能性を目指す「5年更新制」の導入が喫緊の課題として進められました。
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更新申請の負担増加:5年ごとに必要書類の作成・提出、審査対応が必要となり、事務負担が増加します。特に中小事業者にとっては、書類準備やコンプライアンス体制の整備が課題となる可能性があります。
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コンプライアンスの強化:法令遵守状況が厳格に評価されるため、運送契約の書面交付義務(2025年4月改正)や安全管理規程の整備が必須となります。
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財務健全性の重要性:債務超過や赤字経営の事業者は、許可更新が認められないリスクが高まります。財務改善に向けた早急な対応が必要です。
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業界再編の可能性:法令違反や財務状況に課題を抱える事業者が許可を失うことで、業界全体の再編が進む可能性があります。全日本トラック協会(全ト協)は、適正競争を通じてドライバー待遇の改善や経営の安定化を目指しています。
なお、制度運用を担う「適正競争推進機関(仮称)」が新設され、公正かつ効率的な審査が行われる予定です。施行まで3~5年の猶予期間が設けられる見込みですが、早めの準備が推奨されます。
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早めの書類準備:更新期限の6か月前から書類準備を開始。必要書類には、財務諸表、運行管理者の選任状況、車両整備記録などが含まれます。
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法令遵守の徹底:2024年問題(時間外労働の上限規制)や2025年4月改正法(運送契約の書面交付義務など)の新要件を事前に確認し、コンプライアンス体制を強化。
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安全管理体制の整備:Gマーク取得や運輸安全マネジメントの導入、アルコールチェックの徹底など、安全管理を強化。
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専門家の活用:行政書士やコンサルタントの支援を受け、書類不備や審査対応のリスクを最小限に抑える。行政書士法人塩永事務所では、緊急対応プランを用意し、期限1か月前でも迅速な書類作成で許可継続をサポートします。
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財務状況の改善:債務超過や赤字経営の解消に向け、運賃の見直しやコスト管理を徹底。必要に応じて財務コンサルティングを活用。
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許可更新申請の手続き支援:複雑な更新申請書類の作成から提出、審査対応まで一貫してサポート。
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法令遵守体制の構築支援:最新の法改正や行政解釈を基に、コンプライアンス強化に向けた具体的なアドバイスと体制構築を支援。
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財務状況改善のコンサルティング:健全な経営体制の維持に向けた改善提案や指導。
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緊急対応プラン:更新期限が迫る事業者向けに、迅速な書類作成と審査対応をサポート。
トラック運送業界は、「2024年問題」や「5年更新制」など、大きな変革期を迎えています。これらの変化は、業界の健全化と持続可能性を高める重要なステップです。事業者の皆様にとっては、経営体制や業務プロセスの見直しを迫られる機会でもあります。
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