
【令和7年最新】トラック運送業に「5年更新制」導入へ|許可更新制度の概要と実務への影響
現在、トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可は一度取得すれば原則として無期限で有効ですが、令和7年(2025年)中に国土交通省が「5年ごとの更新制」を導入する予定です。これは、物流業界の健全化と働き方改革を推進するための大きな転換点となります。
制度導入の背景
この「5年更新制」導入の背景には、トラック運送業界が抱える複数の課題があります。
- 法令違反事業者の排除: 一部の事業者が過労運転、過積載、不当な長時間労働といった法令違反を繰り返し、業界全体の信頼性を損なっています。更新制度により、法令遵守状況の継続的な確認が可能になります。
- 不当な価格競争の是正: 適正運賃を下回る受注やダンピングが横行し、中小事業者の経営を圧迫しています。更新審査を通じて、収支の健全性が重視されるようになります。
- ドライバーの労働環境の改善: 「2024年問題」(時間外労働の上限規制:年間960時間)への対応が喫緊の課題となっており、更新制は労働環境の適正化を強化する仕組みとしても期待されています。
許可更新制度の概要
新たな更新制では、5年ごとに運輸局に対して更新申請を行い、事業運営の適正性について審査を受けることになります。具体的な審査項目は現在制度設計中ですが、先行する貸切バス事業の更新制を参考にすると、以下の点が重視されると予想されます。
- 法令遵守状況: 過去の行政処分歴や、運送契約書面の交付義務(令和7年4月改正)を含む各種法令の遵守状況が厳しくチェックされます。
- 財務状況: 債務超過や連続赤字の有無、適正な資金管理がされているかなど、事業の継続可能性を示す財務状況が審査されます。不適切な財務状況は更新不可につながる可能性があります。
- 安全管理体制: 事故防止対策、運輸安全マネジメントの実施状況、Gマーク取得状況、アルコールチェックの実施記録などが評価されます。
- 労働環境: ドライバーの健康管理、適正な労働時間の確保(2024年4月からの時間外労働上限規制を含む)が確認されます。
- 事業収支見積書: 安全投資計画を実施するための経理的基礎を証明する事業収支見積書の提出が求められ、人件費や車両修繕費が適正に計上されているかが審査されます。
実務への影響と準備のポイント
「5年更新制」の導入は、トラック運送事業者にとって大きな影響を及ぼします。
- 更新手続きの負担増: 5年ごとに許可申請に準ずる膨大な書類作成と審査対応が求められ、事務負担が増加します。専門人材が少ない事業者では、行政書士など専門家への依頼費用も発生する可能性があります。
- コンプライアンスコストの増加: 安全設備投資(デジタコ、ドラレコ導入など)や人件費増(運行管理者、整備管理者資格者の配置強化)が更新要件に絡めて求められる可能性があり、これらのコストが収益を圧迫する可能性があります。
- 不適格事業者の淘汰: 法令違反を繰り返す事業者や、経営基盤・安全対策が脆弱な事業者は、更新が認められず廃業を余儀なくされるケースも出てくるでしょう。
事業者としては、以下の点を踏まえて早期に準備を進めることが重要です。
- 法令遵守の徹底: 過去の違反歴を確認し、改善が必要な点があれば早急に対応します。特に、令和7年4月1日施行の改正貨物自動車運送事業法で義務化された「実運送体制管理簿」の作成・保管や、運送契約時の書面交付義務の強化などに対応が必要です。
- 財務状況の健全化: 財務諸表を確認し、債務超過や連続赤字の状態であれば改善策を講じます。
- 安全管理体制の強化: 運輸安全マネジメントのPDCAサイクルを回し、事故防止対策を徹底します。
- 労働環境の適正化: 労働時間管理を徹底し、ドライバーの健康管理に努めます。
今回の制度変更は、業界全体の適正化と持続可能な発展を目的としています。適切な準備と専門家の支援を受けることで、円滑な事業継続を図ることが重要です。お気軽にお問い合わせください。