
監理団体に義務付けられる「外部監査」とは
~外国人技能実習制度における信頼確保の要~
はじめに
外国人技能実習制度は、日本の技術・技能を発展途上国へ移転することを目的とした国際協力制度です。制度の健全な運用のために、監理団体(主に協同組合や事業協同組合)は技能実習生の受入企業を適正に監理する重要な役割を担っています。
この監理団体に対し、法令では「外部監査」の実施が義務付けられています。特に2020年の制度改正以降、監理団体のガバナンス強化が求められる中で、「外部監査」は単なる形式的なチェックではなく、制度の信頼性を支える極めて重要な制度となっています。
本記事では、監理団体に義務付けられる外部監査の概要、要件、実施手続き、そして実務上の留意点を、行政書士法人塩永事務所の視点から分かりやすく解説します。
外部監査の法的根拠
監理団体の外部監査は、以下の法令等に基づいて実施されます。
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技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)
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技能実習制度に関する運用要領
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法務省・厚生労働省連名告示
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出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の通知
特に、優良要件の維持や許可更新の際に、外部監査の実施状況やその結果報告が重要視されるため、形式だけでなく中身が問われるようになってきています。
監査の対象となる監理団体とは?
外部監査の対象となるのは、以下のような監理団体です。
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技能実習生を監理する一般監理団体(許可を受けた協同組合等)
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特に以下の要件に該当する場合には外部監査人の設置義務があります
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常勤職員数が10人以上
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受入企業数が20以上
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受け入れている技能実習生数が100人以上
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これらの要件を満たす監理団体は、毎事業年度終了後、外部監査を受けなければなりません。
外部監査の目的と内容
外部監査の目的
外部監査の主な目的は、以下の3点です:
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法令遵守の確認(コンプライアンス)
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会計処理の適正性の確保
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ガバナンス体制の健全性の検証
監査を受けることで、監理団体としての業務運営の透明性を高め、制度の信頼性を維持することができます。
監査の主な内容
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受入れ計画・実施状況の確認
技能実習計画が適正に策定・実施されているかを検証 -
監理業務の実施状況の確認
巡回指導・講習の実施や、実習実施者との契約関係など -
実習生の処遇に関する確認
報酬水準や労働環境が法令通りであるか -
財務・会計の確認
監理費の徴収・使用状況などの会計帳簿の確認 -
体制整備の確認
職員体制、内部規程の整備、リスク管理体制など
外部監査人の要件
外部監査人として認められるのは、以下のいずれかに該当する者です:
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公認会計士または監査法人
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弁護士
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行政書士や社会保険労務士等、技能実習制度に精通した有資格者
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その他、外国人技能実習機構が適当と認めた者
※外部監査人は、監理団体や実習実施者と利害関係のない第三者である必要があります。
外部監査の実施と報告の流れ
1. 外部監査人との契約締結
年度終了後すぐに外部監査人と契約し、監査日程・内容を決定。
2. 監査準備
必要な帳簿書類・業務記録等を整理・準備。
3. 監査実施
外部監査人による現地確認・書面調査・ヒアリングの実施。
4. 監査報告書の作成
監査結果をまとめた**「監査報告書」**を受領。
5. 行政機関等への提出
監査報告書は技能実習機構等の監督官庁に提出する必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 外部監査は毎年必要ですか?
はい。要件に該当する監理団体は毎年度、事業年度終了後に実施する必要があります。
Q. 内部監査とは何が違うのですか?
内部監査は団体内部で行う自主的なチェック、外部監査は第三者による強制的な法的義務です。
Q. 監査にかかる費用は?
監査人によって異なりますが、数十万円からが一般的です。当事務所ではコストと専門性のバランスを考慮した監査体制の構築支援も行っております。
行政書士法人塩永事務所のサポート
当事務所では、以下のような監理団体向けサポートをご提供しています:
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外部監査人のご紹介・契約支援
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監査に必要な帳簿類の作成支援
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外部監査対応の事前チェック
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技能実習制度に関する相談・実務支援
特に熊本県を中心に、監理団体様の外部監査対応をサポートいたします。
まとめ
監理団体にとって外部監査は、制度上の「義務」であると同時に、団体運営の健全性を証明する「信頼の証」です。単なる形式的な対応ではなく、しっかりと体制を整え、日頃から記録管理や業務運営の透明性を意識することが、結果として外部監査のスムーズな通過につながります。
行政書士法人塩永事務所では、監理団体の皆さまが安心して業務に取り組めるよう、法的視点と実務経験の両面から全力でサポートいたします。