【少人数私募債発行のこと】
少人数私募債の発行の前提として、法人であることが必須です。そして、少人数私募債を発行できるのは、49人以下の縁故者相手に限られます。この場合、勧誘・声かけだけで1人とカウントされることに注意が必要です。うっかりホームページに募集要項を掲載してしまったら、1アクセスで1人としてカウントされる場合もあります。
なので、事前に「この人なら引き受けてくれる」という相手をじっくり選別することが大事です。でないと、いざふたを開けてみたら出資総額が目標金額に全然届いてなかったということになりかねません。
仮に複数回私募債を発行する場合、6か月以内で利率と償還期限が同じ社債は同一のものとみなされることにも注意です。この場合は6か月以内の勧誘人数を合算して49人以下にしなければなりません。
このように、少人数私募債を発行できるのは49人以下と限られているので、私募債には譲渡制限を付す必要があります。簡単に私募債を他の人に譲られてしまっては、49人以下の制限が守れないからです。
また、発行総額は1億円未満に限られます。1億円以上の社債発行には、金商法4条1項の規定による届出が行われていないこと及び当該社債に転売制限が付されていることについての文書での告知義務が発生するので注意です。
さらに、発行総額を1口の金額で割った口数が49以下の整数になる必要があります。例えば、私募債1口の金額を100万円に設定するなら、発行総額は最大でも100×49=4,900万円になります。この点と上述の発行総額1億円未満という点を踏まえて、発行総額と私募債1口の金額を決めることになります。
では、実際の私募債発行の流れを見ていきましょう。
(1) 事業計画書、募集要項、勧誘書類の作成
私募債は借りる側と貸す側の信頼関係で成り立っているとはいえ、「私募債を引き受けたい!!」と思うような事業計画を立てることは大事です。計画や経営状況をたびたび発表し、その魅力をアピールできれば、出資者の信用は自ずと高まります。
また募集要項には募集総額や一口の金額、利率と利息の支払方法・期間、償還金額・期限・方法、譲渡制限、解約(中途換金)の方法等を記すことになります。私募債を引き受けてもらえるようアピールするためには、当然利率も銀行より高めに設定することになるでしょう。
(2) 取締役会の決議
私募債の発行は取締役会(取締役)の決議で足ります。この機動性が少人数私募債のメリットです。
(3) 引受人の決定~説明会開催~申込みの受付および審査
49人以下の候補を決定したら、彼らを勧誘して事前の説明会を開催します。その後、申込みを受け付け、会社側で引受人の適否を審査します。いざ私募債を発行してみたらトラブルが発生…という事態だけは避けたいからです。信頼関係で成り立つ少人数私募債だから、なおさら避けたいですよね。
(4) 発行総額の決定および募集決定内容の通知・発送
引受人に対して今回の私募債の口数、1口あたりの金額、発行総額を文書で通知し、各々引き受けた分の額を口座に振り込んでもらいます。
(5) 振込金の受領~債券の発行
振り込まれた金額を口座で確認後、債券の発行を行います。債券を実際に紙面に印刷する必要はありませんが、引受人ごとに債券の番号を付して名簿に控えておく必要があります。
(6) 社債原簿の作成
会社は私募債発行日以降遅滞なく引受人の個人情報を記録した書類(社債原簿)を作成する必要があります。この社債原簿は会社でしっかり保管し、利息の支払いや満期の償還時に備える必要があります。
いかがでしょうか。いわゆる普通の社債(公募社債)や新株発行、銀行からの融資と違って自力で資金を調達できるという点では、楽に資金を調達できる手段だといえそうです。行政書士法人塩永事務所は、貴社の少人数私募債発行をサポート致します。