
一般貨物自動車運送事業とは
一般貨物自動車運送事業は、トラックなどの車両を用いて、他人の貨物を有償で運送する事業です。この事業を営むには、国土交通大臣または地方運輸局長の許可を受ける必要があります。
許可取得のための要件
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 人員の確保
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運行管理者:事業用車両の運行を管理する者で、専任が必要です。
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整備管理者:車両の整備を管理する者で、運行管理者や運転者が兼務可能です。
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運転者:原則として、事業用車両5台に対して5名以上の運転者が必要です。
運行管理者や整備管理者には、所定の資格や経験が求められます。
2. 事業設備の整備
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営業所:適切な場所に設置し、運行管理が行える設備を整える必要があります。
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休憩・仮眠施設:運転者が利用できる休憩・仮眠施設を設置し、1人当たり2.5平方メートル以上の広さを確保することが求められます
3. 車両の確保
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車両数:事業用車両として、軽自動車を除く5台以上の車両を確保する必要があります。
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車両の種類:車検証の用途欄に「貨物」と記載された車両であることが必要です。
購入予定の車両については、売買契約書などの証明書類を提出することで対応可能です。
4. 車庫の確保
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所在地:営業所に併設するか、営業所から直線で10km以内の場所に設置する必要があります。
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面積:車両相互間の間隔が50cm以上確保できる広さが求められます。
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法令遵守:都市計画法などの関係法令に適合していることが必要です。
自ら幅員を測定した場合、正規の数値として認められないため、専門家による調査が推奨されます。
5. 資金の確保
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資金計画:車両費、建物費、土地費、保険料、各種税、運転資金などを含む、合理的かつ確実な資金計画を策定する必要があります。
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資金調達:自己資金や預貯金など、資金調達の裏付けが求められます。
申請から許可が下りるまでの間、常時資金を確保していることが求められます。
6. 損害賠償能力の確保
事業用車両に対して、以下の任意保険に加入する必要があります
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対人賠償保険:無制限
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対物賠償保険:200万円以上
危険物の輸送を行う場合は、対応する適切な保険への加入も必要です。
7. 法令試験の合格
法人の場合は常勤役員のうち1名、個人事業主の場合は本人が、法令試験に合格する必要があります。
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試験内容:貨物自動車運送事業法をはじめとする13の法令が対象です。
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合格率:過去の合格率は50~80%程度です。
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受験回数:1回の申請で試験を受けられるのは2回までです。
試験対策を十分に行い、合格を目指しましょう。
許可申請の手続き
一般貨物自動車運送事業の許可申請手続きは、以下のステップで進められます。
1. 申請書類の準備
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事業計画書:現実的かつ実行可能な内容で作成します。
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必要書類:営業所や車庫の図面、資金計画書、任意保険の証明書など、多岐にわたる書類を準備します
2. 申請書の提出
管轄の運輸支局に申請書類を提出します。
3. 審査期間
申請から許可が下りるまでの期間は、通常4~5ヶ月程度です。
4. 法令試験の受験
申請後、指定された日時に法令試験を受験します。
5. 許可証の交付
審査に合格し、法令試験に合格すると、許可証が交付されます。
許可取得後の手続き
許可を取得した後、事業を開始するまでに以下の手続きを行う必要があります。
1. 運行管理者・整備管理者の選任届出
資格を有する者を選任し、運輸支局に届出を行います。
2. 運送約款の認可
標準約款以外を使用する場合は、認可を受ける必要があります。
3. 車両登録と緑ナンバーの取得
事業用自動車等連絡書を運輸支局へ提出し、営業ナンバー(緑ナンバー)への変更を行います
4. 自動車保険の変更
自賠責保険・任意保険ともに事業用に変更する手続きが必要です。
5. 運賃・料金の設定届出
運賃料金表を作成し、届出を行います。
6. 労働基準監督署への届出
従業員が10名以上の場合は就業規則の作成・届出が必要です。また、時間外労働を行う場合は、36協定を締結して届出を行います。
7. 運転者の適性診断
運転者全員が「運転者適性診断」を受診する必要があります。
8. 社会保険への加入
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の加入手続きを行います。
9. 運輸開始届の提出
変更後の車検証の写し等を添えて、運輸支局へ届出を行います。許可取得後1年以内に運輸開始届を提出しない場合、許可が失効します。
10. 巡回指導
運輸開始届提出後6ヵ月以内に、適性化実施機関による巡回調査があります。帳票類が整備されていない、申請と違うなどの場合には行政処分の対象となります。