
企業内転勤ビザと経営・管理ビザの違いをやさしく解説
行政書士法人塩永事務所(熊本)
熊本でも、海外の親会社や関連会社から日本の拠点へ人を呼びたい、あるいは外国人の方に日本で会社を経営してもらいたい、というご相談が増えています。そのときに必ず出てくるのが「企業内転勤」と「経営・管理」という2つの在留資格です。名前は似ていますが、中身は大きく異なります。この記事では、2つの違いをできるだけ噛み砕いてご説明します。
まず結論:「雇われて転勤する人」か「会社を経営する人」か
一言でいえば、次のとおりです。
- 企業内転勤:海外の会社の社員が、同じ企業グループの日本の事業所へ「転勤」して働くためのビザ
- 経営・管理:日本で会社を立ち上げたり、会社の経営・管理に携わったりするためのビザ
企業内転勤の方はあくまで「従業員」として、決められた業務に就きます。一方、経営・管理の方は「経営者・管理者」として、事業そのものの運営に責任を持ちます。
企業内転勤ビザとは
外国にある本店・支店・子会社・関連会社などから、日本にある事業所へ期間を定めて転勤する外国人が対象です。日本で行える仕事は、エンジニア、通訳・翻訳、貿易、企画・マーケティングなど、いわゆる「技術・人文知識・国際業務」に当たる内容です。
主なポイントは次のとおりです。
- 転勤の直前に、海外の事業所で1年以上、同じ分野の業務に従事していること
- 日本人が同じ仕事をした場合と同等以上の報酬であること
- 日本の事業所と海外の事業所が、本支店・親子会社などの関係にあること
- 原則として、転勤が「一時的」であること(在留期間は5年、3年、1年、3か月のいずれか)
特徴は、学歴や実務経験の要件が通常の就労ビザより緩やかなこと、そして資本金の額が要件になっていないことです。日本側の会社は、事業の安定性や継続性がきちんと示せれば足ります。
経営・管理ビザとは
日本で事業の経営を行う方、または事業の管理(部長・工場長・支店長など)に従事する方のためのビザです。外国人の起業家が会社を設立する場合にも、このビザが必要になります。
2025年10月16日に審査基準が大きく改正され、以前よりかなり厳しくなりました。主な新基準は次のとおりです。
- 資本金または出資の総額が3,000万円以上(従来は500万円以上)
- 常勤職員を1名以上雇用すること(日本人・特別永住者・永住者などの身分系の在留資格を持つ方が対象で、就労系ビザの外国人は含まれません)
- 申請者本人または常勤職員のいずれかが、日本語能力試験N2相当(B2)以上の日本語力を持つこと
- 申請者に3年以上の経営・管理経験があること、または経営・管理もしくは事業分野に関する修士相当以上の学位があること
- 事業計画書について、公認会計士・税理士・中小企業診断士などの専門家による確認を受けること
- 事業所(オフィス)を日本国内に確保し、事業に安定性・継続性があること
なお、すでに旧基準で経営・管理ビザを取得している方については経過措置があり、2028年10月16日までの更新申請では、旧基準で取得した方にも一定の条件のもとで許可が検討されます。報道によると、基準厳格化後は新規申請件数が大きく減少しており、審査は慎重に行われていると考えられます。
2つのビザの違い(比較表)
| 項目 | 企業内転勤 | 経営・管理 |
|---|---|---|
| 立場 | 転勤してきた従業員 | 経営者・管理者 |
| 日本での活動 | 技術・人文知識・国際業務に当たる業務 | 事業の経営、または事業の管理 |
| 前提となる関係 | 海外の事業所と日本の事業所が同一企業グループ | 特に不要(起業も可能) |
| 資本金の要件 | 定めなし | 3,000万円以上(新基準) |
| 常勤職員の雇用 | 要件なし | 1名以上が必要(新基準) |
| 経験・学歴 | 海外事業所での1年以上の勤務 | 経営・管理経験3年以上、または修士相当以上 |
| 日本語力 | 要件なし | 申請者または常勤職員がN2相当以上(新基準) |
| 転勤・滞在の性格 | 期間を定めた転勤 | 日本での事業運営が前提 |
こんなときはどちら?ケース別の考え方
ケース1:海外の親会社の社員を、日本の子会社に数年間派遣したい → 企業内転勤が基本です。親会社での勤務が1年以上あり、報酬が日本人と同等以上であれば、資本金の要件はありません。
ケース2:海外の社員を日本に呼び、日本法人の代表取締役に就任させたい → 経営に実質的に関わる役員として働く場合は、原則として経営・管理が必要です。企業内転勤で入った後に日本法人の役員になる場合も、在留資格の変更が必要になることがあります。
ケース3:外国人の方が、日本でゼロから会社を作って経営したい → 経営・管理が必要です。新基準の資本金3,000万円などの要件を満たせるか、早めの確認が欠かせません。
ケース4:すでに企業内転勤で日本にいる方が、独立・起業したい → 企業内転勤は「転勤元の会社の業務」のためのビザなので、独立して起業する場合は経営・管理への変更が必要です。新基準に照らした準備が必要です。
申請でつまずきやすいポイント
- 「役員」と「従業員」の線引き:日本法人の取締役に就く場合、業務内容によって必要な在留資格が変わります。肩書きだけでなく実際の職務内容で判断されます。
- 海外での1年以上の勤務の証明:企業内転勤では、在職証明書や給与資料などで、転勤前の勤務実績をきちんと示す必要があります。
- 日本側の事業所の実体:どちらのビザでも、事務所の賃貸借契約や事業の継続性を示す資料が重視されます。
- 経営・管理の新基準への対応:資本金、常勤職員、日本語力、事業計画書の確認など、準備すべき項目が多く、時間もかかります。
まとめ
- 企業内転勤は、同じ企業グループの社員が日本の事業所へ転勤するためのビザで、資本金などの要件はありません。
- 経営・管理は、日本で事業を経営・管理するためのビザで、2025年10月の改正により要件が大幅に厳格化されました。
- どちらが適切かは、**その方が日本で「何をするのか」(従業員として働くのか、経営するのか)**で決まります。
在留資格は、選択を誤ると不許可になったり、後から変更が必要になったりします。制度の改正も続いていますので、最新の情報は出入国在留管理庁の公表資料でご確認ください。
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