
特定技能(介護・建設・外食業等)の手続きを徹底解説
― はじめて外国人材の受け入れを検討する企業様向け ―
行政書士法人塩永事務所(熊本市中央区)|2026年9月版
この記事でわかること
介護・建設・外食業をはじめとする多くの業種で、人手不足を補う手段として「特定技能」という在留資格の活用が広がっています。しかし、 「そもそも特定技能って何?」「うちの会社でも受け入れられるの?」「何から始めればいいの?」 という疑問を持つ採用担当者の方は少なくありません。
本記事では、特定技能制度の仕組みを 専門用語をできるだけかみ砕いて 説明し、代表的な分野である介護・建設・外食業の特徴、そして受け入れの具体的な流れを、行政書士法人塩永事務所が解説します。
1. 特定技能とは? ―「即戦力の外国人を雇える制度」
特定技能は、深刻な人手不足に対応するために 2019年4月 に作られた在留資格です。
似た制度に「技能実習」がありますが、目的がまったく異なります。
| 技能実習 | 特定技能 | |
|---|---|---|
| 目的 | 技術を学んで母国に持ち帰ってもらう(国際貢献) | 即戦力として日本で働いてもらう |
| イメージ | 研修生 | 一人前の労働者 |
つまり特定技能は、「日本人の求人と同じように、外国人にもすぐ現場で活躍してもらう」ための制度だとイメージするとわかりやすいです。
対象は16の分野(2026年9月時点)
現在、特定技能で外国人を受け入れられるのは次の 16分野 です。
介護/ビルクリーニング/工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)/建設/造船・舶用工業/自動車整備/航空/宿泊/農業/漁業・養殖業/飲食料品製造業/外食業/自動車運送業/鉄道/林業/木材産業
※政府は「物流倉庫管理」「リネンサプライ」「資源循環(廃棄物処理)」の3分野を新たに追加し、19分野へ拡大する方針を示しています(2027年頃の実施を目標に検討中)。自社の業種が対象になるかどうかは、今後の発表もあわせて確認することをおすすめします。
「1号」と「2号」の違い
特定技能には1号と2号があり、この違いは非常に重要です。
- 1号:在留できる期間は通算で最長5年まで。家族を日本に呼び寄せることはできません
- 2号:多くの分野(介護を除く15分野)で対象になっており、更新回数に上限がなく、要件を満たせば配偶者やお子様を日本に呼び寄せることもできます
「1号でとりあえず数年働いてもらう」のか、「2号への移行も見据えて長期的に定着してもらう」のかによって、採用や育成の考え方も変わってきます。
2. 外国人本人に求められる条件
分野を問わず、特定技能1号として働くためには、外国人本人が次の条件を満たす必要があります。
- 18歳以上であること
- 分野ごとの 技能試験 に合格していること(技能実習2号を良好に修了した方は、試験が免除されるケースがあります)
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上、またはJFT-Basicに合格していること(技能実習2号を良好に修了した方は免除)
- 分野によっては、上記に加えて分野固有の日本語試験(例:介護分野の「介護日本語評価試験」)にも合格が必要
簡単に言うと、「一定レベルの仕事のスキル」と「日常生活・仕事で困らない日本語力」の両方が求められる、ということです。
3. 受け入れる企業側に求められる基準
外国人を受け入れる企業(「特定技能所属機関」と呼ばれます)にも、次のような基準が求められます。
- 労働・社会保険関係の法令をきちんと守っていること
- 雇用契約の内容が適切であること(日本人と同等以上の給与であることなど)
- 「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、適切に実施できる体制があること(自社で対応するか、後述の登録支援機関に委託するか)
- 分野によっては、業界団体が運営する協議会への加入が必須
「支援計画」って何をすればいいの?
特定技能1号の外国人を雇う場合、企業には「生活面や仕事面のサポート」が義務付けられています。これが支援計画で、具体的には次のような内容を含める必要があります。
- 入国前の事前ガイダンス(労働条件や日本での生活について説明する)
- 生活オリエンテーション(住居探し、銀行口座の開設、行政手続きなどのサポート)
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応体制
これらを自社で行う体制がない場合は、「登録支援機関」という専門の機関に委託することも可能です(後述の注意点もあわせてご確認ください)。
4. 受け入れの流れ(8つのステップ)
ステップ1:受け入れ体制の確認 自社が受け入れ企業としての基準を満たしているか、支援計画を自社で行うか委託するかを検討します。
ステップ2:候補者の要件確認 候補者が技能試験・日本語試験に合格しているか、または技能実習2号を良好に修了しているかを確認します。
ステップ3:雇用契約の締結 労働条件通知書・雇用契約書を作成し、給与水準や業務内容が制度上の基準を満たしているか確認したうえで契約を結びます。
ステップ4:支援計画の作成 1号特定技能外国人支援計画書を作成します。事前ガイダンスや生活オリエンテーションなど、義務付けられた支援内容を盛り込みます。
ステップ5:協議会への加入(該当分野のみ) 介護、建設、外食業など一部の分野では、業界団体が設置する協議会への加入が受け入れの前提条件になっています。
ステップ6:在留資格の申請 候補者が海外にいる場合は「在留資格認定証明書交付申請」を、技能実習からの移行などですでに国内にいる場合は「在留資格変更許可申請」を行います。
ステップ7:入国・就労開始 在留資格の取得後、事前ガイダンスなど支援計画に基づく支援を開始し、就労がスタートします。
ステップ8:継続的な届出義務 受け入れ開始後も、定期的な届出や、状況に変化があった際の随時届出など、継続的な義務が生じます。
5. 分野別に見る特徴:介護・建設・外食業
① 介護分野
- 必要な試験:介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験(N4以上またはJFT-Basic)
- 受け入れ人数の制限:事業所ごとに、日本人など常勤の介護職員数を上回る人数は受け入れられません
- 配置基準:受け入れから一定期間は、人員配置基準の算定に含められない期間が設けられています
- 従事できる業務:身体介護と、それに付随する支援業務が中心です
② 建設分野
- 必要な試験:建設分野特定技能1号評価試験(区分ごとに実施)
- 受入計画の認定:国土交通省による「建設特定技能受入計画」の認定が必要です
- JAC(建設技能人材機構)への加入:受け入れ企業は原則としてJACの正会員団体を通じて加入し、受入負担金を負担する必要があります
- 2号への移行:建設分野は特定技能2号への移行が可能な分野であり、要件を満たせば長期的な受け入れが可能です
③ 外食業分野 ―【重要】現在、新規受け入れが原則停止中です
- 必要な試験:外食業技能測定試験、日本語能力試験(N4以上またはJFT-Basic)
- 従事できる業務:飲食物の調理、接客、店舗管理業務など、外食業全般に関する業務
⚠️ 外食業分野は、2026年4月13日以降、特定技能1号の新規受け入れが原則停止しています。 外食業の受け入れ人数が上限(5万人)に近づいたため、出入国在留管理庁と農林水産省が受け入れの一時停止を発表しました。具体的には、海外からの新規呼び寄せ(在留資格認定証明書交付申請)や、他の在留資格からの切り替えが原則認められない状態です。すでに外食業で働いている方の在留期間更新や、外食業内での転職などは引き続き可能ですが、再開の見通しは2026年9月1日時点では公表されていません。外食業での新規採用を検討中の企業様は、必ず事前に最新の受け入れ状況をご確認ください。
各分野に共通する留意点
分野によって必要な試験の種類、協議会加入の要否、受け入れ人数の制限などが大きく異なります。また外食業のように、分野ごとに設定された受け入れ人数の上限に達すると、突然新規受け入れが停止されることもあります。受け入れを検討する分野の最新の運用状況を、都度確認することが不可欠です。
6. 手続きを進めるうえでの注意点
① 書類作成は行政書士・弁護士の専門業務です
2026年1月1日に施行された改正行政書士法により、この点がより明確になりました。 官公署(出入国在留管理庁など)に提出する申請書類は、報酬を得て作成できるのは行政書士(または弁護士)に限られます。
これまで実務上、登録支援機関が支援業務の一環として申請書類の作成まで行ってしまっているケースも見られましたが、これは法律上認められていません。「登録支援機関に支援を委託しているから書類作成もお任せできる」という誤解には特にご注意ください。支援計画の実施(生活支援など)と、書類作成・申請代行(行政書士・弁護士の専門業務)は、法律上はっきりと役割が分かれています。
② 受け入れ人数の上限に注意
分野によっては受け入れ人数の上限が設定されており、上限に近づく、または達している場合は新規受け入れができません(外食業分野が典型例です)。採用計画を立てる際は、事前に対象分野の最新の受け入れ状況を確認する必要があります。
③ 登録支援機関に委託する場合の契約
支援計画の実施を登録支援機関に委託する場合は、支援委託契約書の締結と関連する届出が必要です。
7. まとめ
特定技能の手続きは、すべての分野に共通する基本的な流れに加えて、介護・建設・外食業などそれぞれの分野特有の要件(試験の種類、協議会加入、受け入れ人数の上限など)を正確に押さえることが求められます。特に外食業のように受け入れが一時停止している分野もあり、「思っていたのに受け入れられなかった」ということが起こり得る制度です。
手続きに不備があると在留資格が許可されなかったり、受け入れ後に是正指導を受けたりするおそれもあります。専門家によるサポートを受けながら進めることをおすすめします。
行政書士法人塩永事務所では、介護・建設・外食業をはじめとする各分野の特定技能手続きについて、在留資格申請から支援計画の作成、受け入れ後の届出対応まで一貫してサポートしております。特定技能外国人の受け入れをご検討の企業様は、お気軽にご相談ください。
本記事は2026年9月1日時点で公表されている情報に基づいて作成しています。特定技能制度は分野追加や受け入れ上限の運用変更が頻繁に行われるため、実際の申請にあたっては最新の公式情報のご確認、または当事務所へのご相談をおすすめします。
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