
行政書士法人塩永事務所(認定経営革新等支援機関)
太陽光発電事業者様から、
- 「FIT認定からFIP認定へ移行するタイミングで蓄電池も入れたい」
- 「FIP移行と蓄電池設置を同時に進めたいが、手続きの順番が分からない」
というご相談が、ここ最近特に増えています。
2025年8月、経済産業省・資源エネルギー庁は、この「FIP移行+蓄電池設置」に関する手続きの周知と運用変更を公表し、 2025年9月1日から電子申請システム上で新しい申請方法が利用可能となりました。
この記事では、認定経営革新等支援機関としての立場から、制度の基本と「どの順番で何を出すか」という実務ポイントを、相談しやすい形で整理しています。
1. FIP制度とFIT制度の基本的な違い(なぜ蓄電池が重要になるのか)
FIT制度(固定価格買取制度)は、認定を受けた発電設備からの電気を、あらかじめ定められた固定価格で一定期間買い取る仕組みです。
これに対し、FIP制度(Feed-in Premium)は、
- 電気そのものは卸電力市場等で販売
- 市場価格に応じて、一定のプレミアム(補助額)を上乗せ
という形で収入を得る制度で、2022年4月に導入されました。
FIPでは収入が市場価格に連動するため、蓄電池を併設して「安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電・売電する」ことで収益性を高められるのが大きな特徴です。
そのため、「FITからFIPへ移行するタイミングで蓄電池も入れてしまいたい」というニーズが年々強くなっています。
2. これまでの手続きの課題(なぜ時間がかかっていたのか)
従来、FIT認定を受けている太陽光発電設備をFIP認定へ移行しつつ、同時に蓄電池を新設したい場合、次のような制約がありました。
- 電子申請システム上で、FIP移行認定申請と蓄電池設置に係る変更認定申請を同時に行うことができなかった
- そのため、
- まずFIP移行認定申請を行い、認定通知書が交付され、発電量調整供給契約が開始した後でなければ
- 蓄電池設置に係る変更認定申請に着手できない
- 結果として、蓄電池の設置・稼働開始までに相応の時間がかかるという状況が続いていました。
FIP移行案件の増加に伴い、事業者・業界団体から「手続きの迅速化」を求める声が高まり、 資源エネルギー庁が運用の見直しに踏み切った、という経緯があります。
3. 2025年9月1日からの新しい運用(事前確認制度)
3-1. 制度改正の概要
2025年8月12日、資源エネルギー庁は 「太陽光発電におけるFIP移行時の蓄電池設置手続に係る審査の迅速化について」を公表し、 2025年9月1日から運用を変更しました。
主なポイントは次のとおりです。
- FIP移行認定申請の際に、蓄電池設置に係る書類を「参考書類」として同時に添付できるようになった
- 単線結線図
- 設備配置図(蓄電池の設置位置を含む)
- 蓄電池の仕様書 など
- これにより、審査当局(経済産業局等)は
- FIP移行認定の審査と
- 蓄電池設置内容の事前確認 を並行して行うことができるようになり、
- 結果として、蓄電池設置に係る正式な変更認定申請を行った際の審査期間の短縮が期待されるとされています。
なお、この取扱いは太陽光発電設備に蓄電池を併設するケースが対象であり、
- 蓄電池以外の変更(発電設備の設置場所変更など)を同時に含む場合は対象外
とされていますので、ここは誤解が多いポイントです。
3-2. 手続きの具体的な流れ
新しい運用のもとでの標準的な流れは、次のとおりです。
ステップ1:系統連系協議
- 蓄電池を追加することによる系統への影響について、管轄の一般送配電事業者と事前協議を行います。
- 必要に応じて、接続契約の内容変更や新規締結に向けた調整を行います。
ステップ2:FIP移行認定申請(蓄電池関係書類を参考書類として添付)
- 再生可能エネルギー電子申請システムからFIP移行認定申請を行います。
- この際、
- 蓄電池設置に関する単線結線図
- 設備配置図(蓄電池の設置位置を含む)
- 蓄電池の仕様書 などを参考書類として併せて提出します。
- この時点では、蓄電池設置そのものの正式な変更認定申請ではなく、 「参考書類の添付による事前確認の申出」という位置づけです。
ステップ3:審査(並行実施)
- 経済産業局等において、
- FIP移行認定に係る審査と
- 参考書類として提出された蓄電池設置内容の事前確認 が並行して進められます。
ステップ4:FIP移行認定・発電量調整供給契約の開始
- FIP移行認定が下り、発電量調整供給契約が開始された日がFIP認定日となります。
- この日から、当該設備はFIP認定電源として取り扱われます。
ステップ5:蓄電池設置に係る変更認定申請(正式申請)
- FIP移行認定後(発電量調整供給契約開始日以降)に、 改めて蓄電池設置に係る変更認定申請を正式に行います。
- 事前に参考書類を提出し、内容の確認を受けているため、 申請内容と参考書類の内容が一致していれば、審査がスムーズに進みやすくなるとされています。
- 一方で、参考書類の内容と実際の変更認定申請の内容に相違がある場合は、追加の審査期間が必要となるため、 設計変更のタイミングには注意が必要です。
ステップ6:蓄電池設置工事・試運転・運用開始
- 系統連系協議の結果に基づき蓄電池の設置工事を行い、試運転を経て本格運用を開始します。
3-3. FIP認定「前」に蓄電池の変更認定申請を行う場合の注意点
新しい事前確認制度を使わず、従来どおり「FIP認定前」に蓄電池設置の変更認定申請を行うことも可能です。
ただし、この場合は
- 「従前のFIT認定の変更」として扱われる
ため、特に次の点に注意が必要です。
- PCSよりも太陽光パネル側(DC側)に蓄電池を設置する構成とした場合、 調達価格が変更(引き下げ)される可能性がある
これは、事後的に設置した蓄電池を用いて、 本来PCSでカットされていた電気を売電するような形になると、
- FIT認定時点で想定されていなかった国民負担の増加につながる
ため、価格変更の対象となる取扱いです。
蓄電池の接続位置(AC側かDC側か)や、逆潮流の区分計量の可否によって調達価格への影響が変わるため、 設計段階から専門家に相談されることを強くお勧めします。
3-4. 申請期限日の違い(スケジュール管理の落とし穴)
実務上、見落としが多いのが申請期限日の扱いです。
- FIP移行認定申請
- 年度ごとの申請期限日にかかわらず、随時申請が可能です。
- 蓄電池設置に係る変更認定申請
- 通常の変更認定申請と同様に、 その年度の申請期限日(10kW以上の地上設置太陽光等について定められる期限日)が適用されます。
参考書類の添付という形でFIP移行認定申請と同時に手続きを進める場合でも、
- 正式な変更認定申請自体は別途、年度の期限に沿って行う必要がある
ため、「FIP移行のスケジュール」と「変更認定の年度期限」をセットで管理することが重要です。
4. 蓄電池からの売電に関するルール(FIPプレミアムの対象範囲)
FIP電源に併設した蓄電池については、
- 発電設備からの充電だけでなく
- 系統側からの充電
を認める運用も段階的に拡大されています。
この場合、放電された電気のうち、
- どこまでが認定発電設備由来(FIPプレミアムの対象)で
- どこからが系統由来(プレミアム対象外)
かを区分するため、充電量に応じた按分計算のルールが定められています。
系統から充電され放電された電気は、FIPプレミアムの交付対象外となるため、 蓄電池の運用計画を立てる際には、この点をあらかじめ押さえておく必要があります。
5. 補助金の活用について
蓄電池の導入コストは決して小さくないため、国や自治体の補助金制度を併用するケースが一般的です。
例として、
- 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業
など、FIP認定を取得した蓄電池の導入費用の一部を補助する制度も実施されています。
補助金にはそれぞれ、
- 公募期間
- 対象要件
- 上限単価・補助率
が定められており、FIP移行認定申請のスケジュールと連動させて準備を進める必要があります。
6. 行政書士法人塩永事務所によるサポート内容
FIP移行認定申請と蓄電池設置手続きは、次のように複数の制度・書類・関係機関が絡み合う「典型的な複雑手続き」です。
- 再生可能エネルギー電子申請システムを通じたFIP移行認定申請書類の作成・提出
- 蓄電池設置に係る単線結線図・配置図・仕様書等、参考書類の整備と事前チェック
- 一般送配電事業者との系統連系協議に関する書類対応
- 蓄電池設置に係る変更認定申請(正式申請)のタイミング調整
- 調達価格への影響を踏まえた蓄電池の接続位置・設計に関する事前確認
- 各種補助金申請とのスケジュール調整
当事務所は認定経営革新等支援機関として、 太陽光発電事業者様のFIT・FIP関連手続きを多数サポートしてきた実績があります。
7. こんなときは一度ご相談ください
次のような場合は、書類作成前の段階でも遠慮なくご相談いただくと、後戻りが少なくなります。
- 自社の蓄電池設置が、今回の事前確認制度の対象になるか判断したい
- 設計会社から提出された図面が、認定制度上の要件を満たしているか不安がある
- PCS構成や接続位置によって、FIT/FIPの調達価格にどのような影響が出るか確認したい
- FIP移行と蓄電池導入を同時に進めたいが、申請スケジュール管理に自信がない
- 参考書類と正式申請書類の整合性を確保し、審査期間をできるだけ短縮したい
8. まずは案件の状況をお知らせください
- 発電設備の出力・認定区分
- 蓄電池の容量・設置位置(AC側/DC側)
- PCS構成
- 既存FIT認定の内容
- FIP移行を予定している時期
- 系統連系条件・出力制御の状況
などを、分かる範囲で箇条書きにしていただければ、
「どの申請パターンが現実的か」「いつ何を出すべきか」を、案件ごとに整理したうえでご提案できます。
免責事項
本記事は2025年9月時点の資源エネルギー庁公表資料等に基づき作成しています。 FIT・FIP制度に関する運用は改正が頻繁に行われるため、
- 最新の情報は必ず資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」等の公式資料でご確認いただき、
- 個別案件については、当事務所または専門家へご相談いただくことを推奨いたします。
