
野立て太陽光の分割案件における名義変更手続き|複数区画の注意点を行政書士が徹底解説
監修:行政書士法人 塩永事務所(認定経営革新等支援機関)|2025年6月更新 / 2023年3月公開|読了目安 約12分
野立て太陽光発電の売買で「名義変更がうまく進まない」というトラブルの多くは、複数の土地区画にまたがる分割案件への対応不足が原因です。
分割案件は、1つのFIT認定番号のもとに複数の土地が紐づいている案件です。通常の名義変更とは異なり、土地ごとの権利確認・地主全員の承諾・金融機関の同意など、多くの手続きを同時並行で進める必要があります。1つでも抜け漏れると、認定が取り消されたり売電が止まったりするリスクがあります。
この記事では、分割案件の名義変更で何が必要なのかを、行政書士法人塩永事務所がステップごとにわかりやすく解説します。
分割案件とは何か
分割案件とは、1つのFIT認定番号に、複数の土地(地番)が紐づいている発電所のことです。
たとえば「認定番号は1つ。でも発電所が建っている土地は隣接する5筆にまたがっている」というケースがこれにあたります。
なぜ分割案件が生まれるのか
分割案件が生まれる主な理由は次のとおりです。
- 大型の発電所を複数の土地にまたがって開発した
- 開発途中に隣の土地を追加で取得・拡張した
- 土地の所有者(地主)ごとに個別に賃貸借契約を結んで造成した
- もともと1つだった土地が、後から分筆・合筆されて複数になった
自分の案件が分割案件かどうかを確認する方法
資源エネルギー庁の電子申請システムにログインし、「設置場所」欄に複数の地番が登録されていれば分割案件です。土地賃貸借契約書が複数あるケースも同様です。
売買の前に必ず確認してください。確認方法がわからない場合は、認定番号をもとに弊所へお問い合わせください。
通常の名義変更と何が違うのか
分割案件の名義変更が難しい理由は、FIT認定の管理単位(設備ごと)と、土地の管理単位(筆ごと)がズレていることにあります。
電子申請システム上は「1件の認定」でも、実際の土地は複数あります。この2つを名義変更の申請書類で正確に紐づけなければ、補正(書き直し指示)が繰り返され、手続きが何ヶ月も止まります。
通常案件と分割案件の違いは次のとおりです。
| 確認・手続き事項 | 通常案件(1筆) | 分割案件(複数区画) |
|---|---|---|
| FIT認定と土地の関係 | 1対1で対応 | 1認定に複数の土地が紐づく |
| 地主の承諾書 | 1通だけ | 土地ごとに全員分が必要 |
| 一部の土地だけ売ること | 該当なし | 原則できない(要事前相談) |
| 接続契約の確認 | 1契約を確認するだけ | 一括契約か個別契約かを確認する |
| 書類の不備リスク | 低い | 高い(補正が出やすい) |
| 完了までにかかる期間 | 2〜4ヶ月 | 4〜6ヶ月以上 |
名義変更の手順(9ステップ)
分割案件の名義変更は、「準備」「契約・合意」「申請」の3段階で進めます。順番を守らないと後工程で大きなトラブルになるため、必ずこの流れに沿って進めてください。
準備段階
ステップ1:認定情報・設備情報の現状確認
まず、電子申請システムで認定番号・設置場所の地番・設備容量などを確認します。
システム上の情報と実際の設備が食い違っている場合は、名義変更の前に「設備変更申請」が必要になります。これが発覚するとスケジュールが数ヶ月単位でずれるため、売買契約を結ぶ前に必ず確認してください。
ステップ2:土地ごとの登記・権利関係の確認
すべての区画について、法務局で登記事項証明書を取得します。確認すべき内容は次のとおりです。
- 所有者・地上権の名義
- 抵当権・根抵当権の有無
- 仮登記・差押えの有無
抵当権などの担保が設定されている土地がある場合は、次のステップで金融機関との調整が必要になります。
ステップ3:接続契約・売電契約の確認
電力会社との「接続契約」が、すべての区画を一括でカバーしているのか、区画ごとに個別に結ばれているのかを確認します。この確認を怠ると、後で手続きの範囲が変わってしまうことがあります。
あわせて、売電契約(特定契約)の名義変更に必要な書類も、この段階で電力会社に確認しておきましょう。
契約・合意段階
ステップ4:金融機関への報告・同意取得
担保や収益権質が設定されている場合は、金融機関の同意を得ないまま名義変更を進めることは絶対にしてはいけません。融資契約の違反になるリスクがあります。
金融機関の同意取得には数週間〜数ヶ月かかることが多いため、手続き全体の中で最初に着手すべき事項です。
ステップ5:地主全員から承諾書を取得
賃借人(設備の所有者)が変わる場合、すべての区画の地主から承諾書を取得する必要があります。
承諾書には、対象の地番・変更前後の賃借人名を明記し、地主の署名・押印をもらいます。1通でも欠けると申請が受け付けられません。地主が法人の場合は、印鑑証明書も必要になることがあります。
ステップ6:設備譲渡契約書の作成
どの土地の・どの設備を・誰から誰に譲渡するかを地番レベルで特定した譲渡契約書を作成します。
この契約書は、後の承継申請で権利移転の証明書類として使います。また、申請中の売電収入の扱い(誰の収入になるか・どう精算するか)も、ここで明記しておくとトラブルを防げます。
申請段階
ステップ7:FIT認定の承継申請(電子申請システム)
資源エネルギー庁の電子申請システムから「承継届」または「事業計画変更認定申請」を提出します。
添付書類には、土地ごとの設備配置図・地番の特定書類・譲渡契約書・地主承諾書などが必要です。分割案件は書類の不整合が起きやすく補正が出やすいため、提出前に専門家に書類チェックを依頼することを強くお勧めします。書類に問題がなければ、審査期間は1〜3ヶ月が目安です。
ステップ8:接続契約の名義変更
FIT認定の承継申請と並行して、電力会社との接続契約の名義変更も進めます。
この2つの手続きのタイミングがズレると問題が生じることがあるため、進捗を同時に管理することが重要です。
ステップ9:売電契約・保安規程の変更
FIT認定の承継が完了したら、すぐに次の手続きを行います。
- 売電契約の名義変更(小売電気事業者に連絡)
- 保安規程の変更届出(産業保安監督部)
- 電気主任技術者の選任変更届出
保安規程の変更は電気事業法で義務付けられており、怠ると法令違反になります。FIT承継が完了したらすぐに対応してください。
必要書類の一覧
分割案件の名義変更では、区画の数だけ書類が増えます。以下を参考に、漏れなく準備してください。
登記・権利確認
- 登記事項証明書(全区画分)
- 所有権・地上権の名義確認
- 抵当権・根抵当権の有無
- 仮登記・差押えの有無
- 地役権の設定有無
土地賃貸借関係
- 土地賃貸借契約書(区画ごと)
- 賃料・期間・更新条件の確認
- 転貸・譲渡禁止条項の確認
- 地主承諾書(区画ごとに全員分)
- 地主の印鑑証明書
設備・認定関係
- 電子申請システム上の設置地番の確認
- 設備配置図(区画ごとに対応したもの)
- 設備一覧表(区画別の出力容量)
- 竣工検査書類・保安規程関係書類
- 損害保険証券(適用範囲の確認)
電力・系統関係
- 接続契約書(写し)
- 系統連系承諾書(写し)
- 計量器番号の確認
- 電力会社との協議確認書
- 売電契約書(写し)
権利移転の証明
- 設備譲渡契約書(区画・設備の特定条項付き)
- 売買代金の振込証明
- 旧・新名義人の法人登記簿謄本
- 旧・新名義人の印鑑証明書
- 委任状(行政書士に申請代行を依頼する場合)
金融機関関係(担保がある場合のみ)
- 融資契約書(担保の設定内容確認)
- 担保権者(金融機関)の同意書
- 抵当権の処理スケジュール確認書類
- 収益権質の有無と処理方針に関する書類
分割案件でよくある失敗6つ
失敗① 地主の承諾書が1通足りず申請が止まる
10区画中9区画の承諾書は揃っているのに、1名の地主と連絡が取れず申請が数ヶ月止まる——これは非常によくあるトラブルです。
地主との連絡体制は売買契約を結ぶ前に確立しておくことが重要です。連絡が取りにくい地主がいる場合は、早めに対処方針を立ててください。
失敗② 電子申請システムの設備情報と実態がズレている
過去に設備を少し変更したのに、申請を出していない——このような「未申請の変更」が放置されているケースは非常に多いです。
承継申請の段階でズレが発覚すると、先に設備変更申請を出す必要があり、スケジュールが大幅に遅れます。売買前のデューデリジェンスとして必ず確認してください。
失敗③ 接続契約の単位を間違える
FIT認定の単位(設備ごと)と接続契約の単位(電力会社との契約)は別物です。複数区画が1本の引き込み線で連系しているために接続契約が1本だけのケースもあれば、区画ごとに個別の契約があるケースもあります。
確認せずに進めると、変更手続きの範囲を誤ります。必ず電力会社に事前確認してください。
失敗④ 申請中の売電収入の扱いを決めていない
承継申請の審査中(1〜3ヶ月)は、FIT認定の名義はまだ旧名義人のままです。この期間の売電収入が誰に入るのか・どう精算するのかを契約書に書いておかないと、後でトラブルになります。
失敗⑤ 保安規程・電気主任技術者の手続きを忘れる
FIT認定の承継とは別に、電気事業法上の手続き(保安規程の変更届出・電気主任技術者の選任変更)も必要です。これを忘れると法令違反になります。
電気主任技術者が旧名義人側の委託先だった場合は、新しい委託先を早めに確保してください。
失敗⑥ 設備が地番の境界をまたいでいる
架台・配線・集電箱などが地番の境界線をまたいで設置されているケースがあります。この場合、「設置場所」欄の書き方についてエネ庁への事前確認が必要になることがあります。
現地調査と地積測量図を照らし合わせ、設備がどの地番に属するかを事前に明確にしておきましょう。
一部の区画だけ売りたい場合はどうする?
「10区画のうち5区画だけを売却したい」という相談をよく受けます。しかし、1つのFIT認定に複数の区画が紐づいている場合、原則として設備全体をまとめて承継する必要があります。
一部の区画だけを切り離して譲渡しようとすると、FIT認定が取り消されたり、売電単価に影響が出たりするリスクがあります。必ず事前に資源エネルギー庁へ相談してください。
どうしても一部区画だけを売りたい場合は、次の3つの方法が選択肢になります。
方法① 認定の分割変更申請
一定の要件を満たす場合、1つの認定を複数に分割する変更申請ができます。ただし要件が厳しく、すべての案件で使えるわけではありません。エネ庁への事前相談が必須です。
方法② SPC(特定目的会社)を使う
発電所ごとにSPCを設立し、認定をSPCに集約した上で、SPCの持分(株式)を一部売却する方法です。FIT認定の名義変更が発生しないため承継申請が不要になりますが、法人設立コストや税務上の取り扱いについて専門家への確認が必要です。
方法③ 全体を承継した後で再分割する
一度すべてを新名義人に承継した後、新名義人が一部の区画を第三者に売却する方法です。手続きが二段階になりますが、現実的に実行しやすい選択肢の一つです。
いずれの方法も、税務・法務・金融への影響を総合的に検討した上で進める必要があります。行政書士・税理士・司法書士が連携したチームでの対応を推奨します。
融資・担保がある場合の対応
分割案件では、区画ごとに異なる金融機関から融資を受けており、それぞれに抵当権が設定されているケースがあります。このような場合は手続きが特に複雑になります。
① 全区画の担保状況を一覧にまとめる
まず、登記事項証明書をもとに、区画ごとに「どの金融機関が・どんな担保を・いくら分設定しているか」を一覧表に整理します。この整理があると、その後の手続きが格段にスムーズになります。
② 各金融機関に事前に報告・承諾を依頼する
担保権を持つ金融機関に、名義変更の予定を早めに伝え、承諾書の取得や条件変更の協議を始めます。金融機関によっては、新しい名義人の審査や新たな融資契約の締結を求めることがあります。
③ 担保の処理方法を司法書士・税理士と決める
「担保を抹消して新名義人が新たに融資を受ける」「担保ごと新名義人に引き継ぐ(債務引受)」「一括返済して担保を外す」など、状況に合った方法を選びます。法務・税務への影響が大きいため、必ず司法書士・税理士と連携して決定してください。
④ 金融機関の同意書が揃ってから申請を進める
すべての担保権者から同意書が揃った後、FIT認定の承継申請に進みます。金融機関の承諾取得が最も時間がかかるため、手続き全体の中で最優先で着手してください。
よくある質問(FAQ)
自分の案件が分割案件かどうかわかりません。
電子申請システムで「設置場所」欄を確認してください。複数の地番が登録されていれば分割案件です。土地賃貸借契約書が複数ある場合も同様です。ご自身での確認が難しい場合は、認定番号をもとに弊所へお問い合わせください。
審査中も売電は続きますか?
はい、FIT認定の承継申請中も売電は継続されます。ただし、売電代金は審査中も旧名義人の口座に振り込まれます。この期間の収入の取り扱いについては、譲渡契約書に明記しておくことが重要です。
地主の一人が承諾を拒否したらどうなりますか?
その区画を含む設備全体の承継申請が難しくなります。まずは承諾料の支払いや契約条件の見直しなどを提案し、交渉することが先決です。それでも解決しない場合は、エネ庁への相談と承継対象の範囲変更を検討する必要があります。地主との交渉支援も弊所で対応しております。
全体でどのくらいの期間・費用がかかりますか?
書類に問題がない場合のエネ庁の審査期間は1〜3ヶ月ですが、分割案件は補正が出やすいため、全体では4〜6ヶ月以上かかることが多いです。金融機関の調整が必要な場合はさらに長くなります。費用は区画数や案件の複雑さによって異なります。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。
自分で申請できますか?行政書士に頼む必要はありますか?
自力での申請も法律上は可能です。ただし、分割案件の名義変更はエネ庁・電力会社・登記・金融機関にまたがる複雑な手続きで、書類の不整合による補正が繰り返されると完了まで1年以上かかることもあります。認定取消しのリスクも考えると、専門家への依頼が費用対効果の面で合理的です。
電気主任技術者の引き継ぎはいつまでに行えばよいですか?
FIT認定の承継完了後、速やかに手続きを行ってください。電気主任技術者が旧名義人側の委託先だった場合、承継完了のタイミングで契約が終了することが多いため、承継申請と並行して新しい委託先を確保しておくことを推奨します。
塩永事務所への無料相談
行政書士法人塩永事務所は、認定経営革新等支援機関として、野立て太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備のFIT・FIP手続きを専門的に取り扱っています。
対応できることの一覧
弊所では、分割案件の名義変更に関して以下をワンストップでサポートします。
- 認定情報・登記・権利関係の現状調査と論点整理
- 電力会社・資源エネルギー庁との事前協議サポート
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