
建設業M&Aにおける法的留意点
― 建設業許可の承継・維持とコンプライアンス対応の実務 ― (行政書士法人塩永事務所)
行政書士法人塩永事務所では、上場企業の建設業参入に伴う許可取得支援や、大企業グループ内での建設業許可維持のための顧問業務を受付けています。
また、建設業者向けのコンプライアンス指導・社内研修、建設業法令遵守コンサルティングにも強みを有しており、建設業のM&Aにおける複雑な法的課題にも実務的な支援を提供しています。
建設業界のM&Aは、他業種と比べて許認可の承継や法令遵守に関する専門的な検討が不可欠です。特に、建設業許可の維持・承継に関する制度理解は、取引の成否を左右します。
本記事では、建設業M&Aにおける主要な法的ポイントを整理して解説します。
目次
- 建設業許可の承継
- 事業承継等の承継認可制度
- M&Aに伴う法令遵守とリスク管理
- まとめ
1.建設業許可の承継
建設業のM&Aで最も重要となるのが、建設業許可をいかに維持・承継するかという点です。 建設業許可は国土交通省・都道府県知事の厳格な監督下にあり、株式譲渡や事業譲渡を行っても自動的に移転するものではありません。 M&A後も事業を継続するためには、許可要件を満たしたうえで適切な承継手続きを行う必要があります。
特に注意すべき許可要件
① 経営業務の管理責任者(経管)
建設業者には、一定の実務経験を有する「経営業務の管理責任者」を置くことが義務付けられています。 M&Aにより経管要件を満たす人材が不在となる場合、許可の承継・維持が不可能となるリスクがあります。
② 営業所技術者(専任技術者)
本社・支店・営業所ごとに、国家資格や実務経験を備えた専任技術者の配置が必要です。 M&A後の組織体制で、各拠点に適格な技術者を継続配置できるかを事前に確認することが不可欠です。
2.事業承継等の承継認可制度
令和2年10月の建設業法改正により、建設業許可を円滑に承継できる承継認可制度が創設されました。
承継認可制度とは
事業譲渡・合併・会社分割などにより許可を承継する際、事前に行政庁の認可を受けることで、許可の空白期間を生じさせずに承継できる制度です。 認可申請は、効力発生日の30日前までに行う必要があります。
承継認可制度が利用できるケース
- 事業譲渡
- 合併
- 会社分割
(出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」)
制度が利用できないケース
例えば、一般許可業者が特定許可業者の地位を承継することはできないなど、制度の対象外となる場合があります。
認可制度を使わない選択肢もある
株式譲渡による買収では法人格が存続するため、許可はそのまま維持されます。 また、大臣許可業者が知事許可業者を買収する場合など、承継認可を使わずに変更届のみで対応できるケースもあります。
M&Aの形態に応じて、最適な許可維持スキームを選択することが重要です。
3.M&Aに伴う法令遵守とリスク管理
建設業のM&Aでは、許可の維持だけでなく、過去の法令違反や監督処分の承継リスクにも注意が必要です。
監督処分は承継される
建設業法違反による指示処分・営業停止処分などは、許可承継の際に承継先にも引き継がれる可能性があります(建設業法第28条)。
そのため、M&Aのデューデリジェンスでは以下の調査が必須です。
- 過去の法令違反歴
- 行政処分の有無
- コンプライアンス体制
- 技術者・経管の適格性
行政処分は許可取消しに至ることもあるため、事前のリスク把握と対策がM&A成功の鍵となります。
4.まとめ
- 建設業M&Aでは、許可の承継・維持が最大のポイント
- 経営業務の管理責任者・専任技術者の適格性確認は必須
- 承継認可制度の活用可否を事前に検討することが重要
- 株式譲渡など、認可制度を使わずに許可維持できるケースもある
- 法令遵守状況の調査により、許可取消し・営業停止リスクを回避できる
行政書士法人塩永事務所では、M&A登録支援機関として、建設業許可の取得・維持、M&Aにおける許認可スキーム構築、コンプライアンス支援まで、建設業者の実務に即した総合的なサポートを提供しています。
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