
許可申請ガイド|熊本県・九州運輸局対応
一般貨物自動車運送事業の許可申請
〜緑ナンバー取得の要件・手続き・最新法改正を正確に解説〜
行政書士法人塩永事務所(熊本市) TEL:096-385-9002
1.一般貨物自動車運送事業とは
一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車および二輪の自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業のうち、特定の荷主との契約に限定されない事業をいいます(貨物自動車運送事業法第2条第2項)。
いわゆる「緑ナンバー(事業用ナンバー)」のトラック・バン・冷蔵車等を用いて、不特定多数の荷主から依頼を受けて有償で荷物を運ぶ事業がこれにあたります。
本事業を行うには、営業所の所在地を管轄する地方運輸局長の許可が必要です(同法第3条)。熊本県内に営業所を設ける場合の管轄は九州運輸局(福岡市)であり、申請書類の受付は熊本運輸支局(熊本市東区)が行います。
◆ 熊本県で運送業の需要が高まっている背景
- TSMC熊本工場(菊陽町)の稼働および第2工場建設に伴う半導体関連部材・建設資材の輸送需要の急増
- 熊本港の機能強化と九州全体の物流拠点化の進展
- 農産物(メロン・トマト・畜産物等)および水産物の輸送需要
- 熊本地震以降の復興・建設需要の継続
※ 軽自動車(黒ナンバー)を使用する貨物軽自動車運送事業は届出制(許可不要)ですが、本記事で解説する一般貨物自動車運送事業は許可制であり、要件が大きく異なります。
2.許可取得の要件(審査基準)
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、「人的要件」「施設要件」「車両要件」「資金要件」「法令遵守要件」の5つの審査基準をすべて満たす必要があります。
◆ ① 人的要件
【運行管理者】
- 営業所ごとに、選任が義務づけられている員数の常勤の運行管理者を確保する必要があります。
- 運行管理者は運行管理者試験に合格した者、または国土交通省令で定める実務経験(5年以上)と研修(5回以上)を有する者が対象です。
- 車両数29台以下の場合は1名以上の選任が必要です(30台以上は車両数÷30の端数切り上げ)。
- 運行管理者は運転者との兼務が認められません。補助者を選任しない場合、運行管理者は専任で配置する必要があります。
【整備管理者】
- 営業所ごとに常勤の整備管理者を1名選任する必要があります。
- 整備管理者の資格要件は、①一級・二級・三級自動車整備士の有資格者、または②対象車両と同種類の自動車の点検・整備もしくは整備管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ地方運輸局長が実施する研修を修了した者のいずれかです。
- 整備管理者は運転者との兼務は可能です。運行管理者と整備管理者の兼務も可能です。
【役員の適格性】
- 申請者(個人)または法人役員が、貨物自動車運送事業法等に基づく許可の取消しを受けた日から5年を経過していない者でないこと、禁錮以上の刑に処せられ執行後5年を経過していない者でないこと等の欠格事由に該当しないことが必要です(同法第5条各号)。
◆ ② 施設(営業所・車庫・休憩施設)要件
【営業所】
- 都市計画法・建築基準法等の関係法令に抵触しないこと。原則として工業系・準工業系・商業系等の用途地域に立地する必要があります(住居専用地域は不可)。
- 使用権原(所有または賃借)を有すること。賃貸の場合は賃貸借契約書の提出が必要です。
【車庫】
- 営業所に併設、または営業所から直線距離で10km以内(地方運輸局ごとに異なる場合あり。九州運輸局の基準については事前確認を推奨します)であること。
- 全車両が収容できる広さを有し、かつ車両が支障なく出入りできること。
- 前面道路の幅員が、使用車両の最大幅を超える道路幅員を確保していること。幅員証明書(道路管理者発行)の提出が必要です。熊本市内は前面道路の幅員が不足するケースが多いため、物件選定の段階での確認が不可欠です。
- 都市計画法・建築基準法等の関係法令に抵触しないこと(用途地域の確認が必須)。
※ 元の記事の「車庫は営業所から2km以内」という記述は誤りです。九州運輸局管内の基準については各運輸支局へ事前確認されることをお勧めします。
【休憩・睡眠施設】
- 乗務員が有効に利用できる適切な施設を、営業所または車庫に併設あるいは近接した場所に確保すること。睡眠施設が必要な場合は、同時睡眠者1人あたり5平方メートル以上の広さが必要です。
◆ ③ 車両要件
- 営業所ごとに最低5両以上の事業用自動車(緑ナンバー車両)を使用すること。
- 車検証の「用途」欄が「貨物」であること。軽自動車(黒ナンバー)は最低車両数5両の算定対象外です。
- トラクターとトレーラーを使用する場合は、セット(組み合わせ)で1両とカウントします。
- 申請時点では「確保予定」として申請することが可能ですが、運輸開始前確認報告書の提出までに実際に確保・登録する必要があります。
◆ ④ 資金要件
自己資金の額は、事業開始に要する所要資金(資金計画)の見積額以上であること、かつ自己資金が所要資金の2分の1以上であることが必要です。
所要資金は各申請者の事業計画(車両台数・車両購入方法・営業所・車庫の形態等)に応じて個別に算出します。一般的な算出項目は以下のとおりです。
| 車両費 | 車両購入費(分割払いの場合は頭金+1年分の割賦金)またはリース料(1年分) |
| 建物費 | 営業所・車庫の敷金・礼金・1年分の賃料等(自己所有の場合は0円) |
| 机・什器等の備品費 | 事務所設備等の取得費 |
| 運転資金 | 人件費・燃料費・油脂費・修繕費・各種保険料等(原則として2か月分) |
| 保険料 | 自賠責保険料、任意保険料(1年分) |
| その他 | 登録免許税12万円等 |
※ 所要資金の算出方法は令和元年11月1日改正以降に大幅に厳格化されています。「2,000万〜3,000万円」という一律の目安は正確ではなく、事業計画の内容によって大きく異なります。必ず専門家に相談の上、個別に試算してください。
自己資金の確認は、申請時の残高証明書(提出日から遡り直近1か月以内のもの)と、許可処分前に再度提出する残高証明書(2回目)の2時点で行われます。申請後に自己資金が所要資金を下回らないよう注意が必要です。
- 自動車損害賠償責任保険(自賠責)または自動車損害賠償責任共済への加入計画があること
- 一般自動車保険(任意保険)の締結等、十分な損害賠償能力を有すること
◆ ⑤ 法令遵守要件
- 申請者(法人の場合は常勤役員の1名)が法令試験に合格すること(詳細はSTEP3参照)。
- 事業の適正な運営のための管理体制が整備されていること(運行管理・整備管理の指揮命令系統の明確化、点呼体制の確立等)。
- 運転者の拘束時間・運転時間が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)に適合した勤務計画になっていること。
3.許可申請の流れ(熊本県・九州運輸局対応)
熊本県内に営業所を設ける場合の申請先は熊本運輸支局(熊本市東区)です。提出書類は九州運輸局(福岡市)で審査されます。当事務所が代理申請を行うため、申請者が窓口へ出向く機会は法令試験の受験時のみです(許可証交付式への出席を除く)。
| STEP 1
事前準備 |
営業所・車庫の物件確認(用途地域・前面道路幅員・使用権原)、車両の確保計画、資金計画の策定を行います。物件の適法性確認は許可取得の可否に直結するため、申請前の段階での専門家への相談を強く推奨します。 |
| STEP 2
申請書類の作成・提出 |
九州運輸局所定の様式による申請書類(事業計画書・資金計画書・施設の図面・幅員証明書・残高証明書等)を作成し、熊本運輸支局へ提出します。 |
| STEP 3
法令試験 |
申請書受理後、申請者(法人の場合は登記上の常勤役員の1名)が法令試験を受験します。試験は2か月に1度、奇数月に実施されます。出題範囲は貨物自動車運送事業法・道路運送法・労働基準法・道路交通法等です。80%以上の正答率で合格とされます。なお合格率については、ある資料では「30〜40%」、別の資料では「50〜80%」と幅があります。2回連続不合格の場合は申請が却下されますので、事前の準備が不可欠です。 |
| STEP 4
審査(標準処理期間:3〜5か月) |
法令試験合格後、九州運輸局による書面審査が行われます。事業計画の実現可能性、資金計画の妥当性、施設・車庫の適法性が重点的に審査されます。審査中に補正(書類の追完)を求められることがあります。また、申請から約2〜3か月後に、2回目の残高証明書の提出を求められます。 |
| STEP 5
許可・登録免許税の納付 |
許可が下りたら許可証交付式に出席します。その後、登録免許税12万円を国土交通省へ納付し、納付証明書を運輸支局に提出します。 |
| STEP 6
許可後手続き・運輸開始 |
運行管理者・整備管理者の選任届、社会保険等の加入証明の提出、事業用自動車等連絡書の発行を経て、緑ナンバーへの登録変更を行います。運輸開始前確認報告書を提出した後、運輸開始届を提出することで事業を開始できます。許可取得から1年以内に運輸を開始しない場合、許可が失効します。 |
※ 標準処理期間(3〜5か月)は、書類不備がなく法令試験に1回で合格した場合の目安です。補正や法令試験の再受験が生じると期間が延長します。
4.2025年4月施行 改正貨物自動車運送事業法の主要ポイント
令和6年(2024年)5月15日に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)が、令和7年(2025年)4月1日より施行されました。新規申請事業者も本改正内容を踏まえた事業計画・管理体制の整備が求められます。
◆ ① 運送契約締結時の書面交付の義務化
荷主・トラック事業者・利用運送事業者は、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容およびその対価(運賃・燃料サーチャージ・附帯業務料等を含む)について記載した書面を交付することが義務づけられました(改正法第24条第2項)。相手方の承諾があれば電磁的方法(電子メール等)による提供も可とされています。
◆ ② 実運送体制管理簿の作成義務
真荷主から貨物の運送を受託し、他の事業者に利用運送(下請け)を行う元請けの一般貨物自動車運送事業者は、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成・保存が義務づけられました。
◆ ③ 下請構造の適正化(努力義務と管理規程作成義務)
トラック事業者・利用運送事業者は下請けに出す行為の適正化に努める義務(努力義務)が課せられています。前年度の利用運送に係る貨物取扱量が100万トン以上の事業者に対しては、当該適正化に関する管理規程の作成および運送利用管理者の選任が義務づけられています。
◆ ④ 軽貨物自動車運送事業者への新たな規制
黒ナンバー(軽貨物)事業者に対して、貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講が義務づけられました。一般貨物自動車運送事業との連携管理においても、下請先の許可・届出の確認が新たに義務事項とされています。
※ 「2025年4月改正」は上記①〜④が主な内容です。元の記事にあった「環境対策(補助金活用)」は改正法の内容ではなく、別制度の話です。また、2025年6月には許可の5年更新制等を含むさらなる改正法(2028年6月までに全面施行予定)も公布されています。
5.熊本で許可を確実に取得するための実務ポイント
◆ 物件(営業所・車庫)の確認は申請前に必ず行う
九州運輸局は施設・車庫の適法性審査を厳格に行う傾向があります。以下の点を申請前に確認することが不可欠です。
- 営業所・車庫の用途地域(住居専用地域は不可)
- 車庫前面道路の幅員と道路管理者への確認(幅員証明書の取得)
- 建物の建築確認済証・検査済証の有無(違反建築物は不可)
- 賃貸借契約書の使用目的欄(「駐車場・車庫」等の記載が必要な場合あり)
- 熊本市内・菊陽町周辺は宅地開発が急速に進んでおり、用途地域や前面道路幅員で不適合となる物件が増加しています。物件契約前の確認を強く推奨します。
◆ 資金計画は根拠を明確にする
- 車両の購入・リース見積書、営業所・車庫の賃貸借条件、採用予定の乗務員数と賃金水準等に基づいて所要資金を精緻に算出する。
- 申請時・審査中の残高証明書が所要資金を下回らないよう資金管理を行う。
- 借入金を充当する場合は融資内定書等の裏付け書類を準備する。
◆ 事業計画書は具体性を持って作成する
- 運行する路線・エリア、輸送する貨物の種類・量、想定荷主との関係を具体的に記載する。
- 収支見込みは根拠のある数値(運賃相場・稼働率の想定等)で作成する。
- 施設の図面は実際の寸法・配置・動線を正確に反映する。
6.許可取得後の継続的な義務
| 運輸開始届 | 許可取得後、速やかに提出(許可取得から1年以内に運輸を開始しないと許可失効) |
| 事業報告書 | 毎事業年度の終了後100日以内に運輸支局へ提出(前年度の売上・車両台数・事故件数等) |
| 事業実績報告書 | 毎年7月10日までに運輸支局へ提出(前年4月〜当年3月分の輸送実績) |
| 変更届・認可申請 | 営業所・車庫の変更、車両数の変更、運賃の設定・変更等が生じた際に都度届出または認可申請 |
| 巡回指導(適正化事業) | 公益社団法人全日本トラック協会の適正化事業実施機関による巡回指導が定期的に実施。帳票類・点呼記録・労務管理等を確認 |
| 財産の適切な管理 | 許可取得に使用した車両・施設等は勝手に廃止・変更できない。変更等の場合は届出・認可申請が必要 |
7.行政書士法人塩永事務所が選ばれる理由
| ✔ 熊本の用途地域・物件選定に精通した実務対応
✔ 九州運輸局・熊本運輸支局の審査傾向を熟知した書類作成 ✔ 法令試験対策講座(専用テキスト・模擬試験)の提供 ✔ 許可取得後の届出・変更認可・巡回指導対応まで一括サポート ✔ 熊本県全域対応(熊本市・八代・天草・菊陽・大津・阿蘇・水俣・人吉等) ✔ オンライン相談対応(全国からのご依頼可) |
8.ご相談・お問い合わせ
| 行政書士法人塩永事務所(熊本市)
TEL:096-385-9002(平日 9:00〜18:00) Email:info@shionagaoffice.jp | X(旧Twitter):@shionagaoffice 初回相談無料 | 対面・オンライン相談対応 | 熊本県全域・全国対応 |
本記事は2026年3月時点の法令・行政実務に基づいて作成しています。法令改正・運輸局の審査基準変更により内容が変わる場合があります。個別案件については必ず専門家にご相談ください。
