
【2026年12月施行】日本版DBSの概要と最新動向
こども性暴力防止法が事業者に求めるもの|行政書士が実務の視点から解説
行政書士法人塩永事務所(熊本市中央区) 登録支援機関/認定経営革新等支援機関
はじめに
教育・保育現場における子どもへの性被害が社会問題となる中、2024年6月19日に「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(通称:こども性暴力防止法)が成立し、同月26日に公布されました。 これがいわゆる「日本版DBS」の法的根拠となる法律です。
施行期日は令和8年(2026年)12月25日と政令で定められました。 施行まで1年を切った現在、事業者には今すぐ準備を始めることが求められています。
本記事では、日本版DBSの制度概要、2026年3月時点の最新動向、事業者が取り組むべき実務対応について、行政書士法人塩永事務所が実務家の視点から解説します。
1. 日本版DBSとは
制度の目的と背景
DBSとは、イギリスの政府系機関「Disclosure and Barring Service(犯罪証明管理及び発行システム)」の略称で、性犯罪歴のある人が子どもに関わる仕事に就くことのないようにして、子どもを性犯罪から守るための仕組みです。2012年から制度が開始され、ドイツ・フランス・アメリカ・スウェーデン・オーストラリア等でも同様の制度が導入されています。
日本版DBSは、こうした海外制度を参考に、日本の法体系・文化に合わせて設計されました。
正式名称と法律の性格
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)です。この法律は、教育・保育などのこどもに接する場での性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守るため 制定されました。性犯罪歴の確認(犯罪事実確認)はあくまで制度の一部であり、日常的な安全確保措置・研修・相談体制の整備など、組織として継続的に取り組む仕組みづくりが制度の柱となっています。
2. 制度の主な概要
対象事業者の区分
こども性暴力防止法では、対象事業者を法的位置づけに応じて2つの類型に分けています。
日本版DBSでは、「支配性」「継続性」「閉鎖性」の3点を満たした事業が対象となります。子どもが抵抗しづらい関係性において、一定時間を一緒に過ごし、第三者から隠れられるような状況にある事業が対象になります。
| 区分 | 対象の事業・施設 | 性犯罪歴確認の義務 |
|---|---|---|
| 法定義務事業者(学校設置者等) | 学校(幼稚園・小中高校・大学等)、認可保育所、認定こども園、児童養護施設、障害児入所施設、指定障害児通所支援事業(放課後等デイサービス・児童発達支援等)など | 義務 |
| 認定事業者(民間教育保育等事業者) | 学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育施設、芸能事務所など | 国の認定を受けた場合に義務(認定は任意) |
注意:フリーランスの家庭教師・ベビーシッターなど、雇用関係のない個人事業主は現行制度の対象外です。ただし、衆参両院の委員会では個人事業主を対象に含めることの検討を求める付帯決議が可決されており、今後の制度改正に注視が必要です。
対象となる「特定性犯罪」
確認の対象は、有罪判決が確定した「前科」に限定されます。具体的には、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪、児童ポルノ禁止法違反、痴漢・盗撮等の条例違反などが含まれます。不起訴・起訴猶予・前歴のみの場合は対象外です。なお、ストーカー規制法違反や下着の窃盗は現行制度では対象に含まれていません。
性犯罪歴の照会期間
性犯罪歴の照会期間は、判決によって異なります。拘禁刑(服役)の場合は刑の執行終了等から20年、拘禁刑(執行猶予判決を受け、猶予期間満了)の場合は裁判確定日から10年、罰金刑の場合は刑の執行終了等から10年です。
犯罪事実確認の流れ
事業者がこども家庭庁に確認申請を行うと、こども家庭庁が法務省のデータベースを照会し、性犯罪歴の有無を確認します。性犯罪歴がある場合は事前に本人に通知され、2週間以内に訂正請求が可能です。本人が内定辞退・退職を選んだ場合は、事業者への結果通知は行われません。
現職者への確認義務と再確認
施行後の確認スケジュールは以下の通りです。義務事業の現職者:法施行から3年以内、認定事業の現職者:認定から1年以内、一度確認を受けた者:5年ごとに再確認が必要です。また、確認が完了するまでの間は、原則として子どもと1対1にさせないなどの暫定措置を講じる必要があります。
防止措置(性犯罪歴が確認された場合)
性犯罪歴がある人は刑終了から最長20年採用されないなど就業を制限される。性犯罪歴がない人でも、雇用主側が子や親の訴えに基づき「性加害の恐れがある」と判断すれば、配置転換など安全確保措置を取る。 最終手段として解雇も許容されうるとされていますが、解雇が有効と認められるためには、法に基づく犯罪事実確認とは別に、解雇権濫用法理等の労働法上の要件を満たす必要があります。
3. 最新動向(2026年3月時点)
施行日の確定
こども性暴力防止法の施行期日を定める政令(令和7年政令第439号)が制定され、施行日は2026年12月25日と正式に確定しました。
施行ガイドラインの公表
こども性暴力防止法施行ガイドラインが公表されており、令和8年2月10日に内容が更新されています。 ガイドラインには、日常的な安全確保措置の内容、「性加害のおそれがある」との判断基準、防止措置の在り方、情報管理体制の構築方法等が詳細に示されています。事業者はこのガイドラインをもとに具体的な実務対応を設計する必要があります。
事業者マークの策定
こども性暴力防止法の事業者マーク(「こまもろうマーク」)が策定されました(令和7年12月25日)。法定義務事業者が表示できる「法定事業者マーク」と、認定を受けた民間事業者が表示できる「認定事業者マーク」の2種類があります。 認定マークを表示できることは、保護者からの信頼獲得の面でも重要な意味を持ちます。
外国人職員向けの対応
こども家庭庁は教職員らに制度を説明する教材動画を2025年度内につくる方針で、英語の字幕に対応し、英会話教室などで働く外国人職員らにも周知する 方針です。
事業者支援体制の整備
こども家庭庁は関連経費として2025年度補正予算と2026年度予算案で計65億円ほどを確保し、事業者への支援として専門家の相談窓口を設ける 予定です。
4. 事業者が今すぐ取り組むべき実務対応
日本版DBS制度は2026年12月25日から施行されますが、制度施行後に初めて検討を始めると、実務対応が追いつかなくなる可能性があります。施行前の段階から、対象性の有無・認定申請の要否・必要な体制整備を整理しておくことが重要です。
① 自社が対象事業者かどうかの確認
まず、自事業が「法定義務事業者」「認定事業者」のいずれに該当するかを確認します。「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件を踏まえ、判断に迷う場合は専門家に相談することを推奨します。
② 安全確保措置・情報管理体制の整備
犯罪事実確認の実施だけでなく、ガイドラインが求める組織的な取り組みを整備する必要があります。具体的には、性暴力防止のための従業員研修、子どもが相談しやすい環境整備(面談・アンケート等)、不適切な行為(SNSでの個人的なやりとり、不必要な身体的接触等)への対処方針の明文化などが求められます。
③ 規程・就業規則の整備
採用プロセスへの犯罪事実確認の組み込み、就業規則・服務規律の見直し、児童対象性暴力等対処規程の作成(ひな型はこども家庭庁が公表)が必要です。
④ 個人情報(犯歴情報)の適正管理体制の構築
犯罪歴情報は「要配慮個人情報」に該当し、不適切な取り扱いは罰則の対象となります。情報管理の担当者・取扱記録(様式案はこども家庭庁が公表)の整備が必要です。
⑤ 民間事業者の認定申請準備
認定申請は原則としてオンラインで行います。GビズIDを事前に取得し、こども家庭庁のオンラインシステムから申請を行います。申請時には安全確保措置・情報管理措置の運用・体制の整備、規程の整備が認定基準を満たす前提となります。
5. 外国人従事者に関する実務上の注意点
登録支援機関として外国人雇用支援に携わる当事務所では、外国人従事者が在籍する事業者からの相談も多く受けています。
在留資格との関係:子どもと接する業務に従事する外国人(「教育」「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格保持者)も性犯罪歴確認の対象となります。日本国内の犯罪歴に加え、出身国の無犯罪証明書の提出が必要となる場合があります。無犯罪証明書の取得手続きは国・地域によって大きく異なり、数週間から数か月を要するケースもあります。早めの準備が不可欠です。
雇用継続への影響:万一、性犯罪歴の確認により配置転換・解雇措置が必要となった場合、外国人従事者については雇用契約の継続性が在留資格の更新審査に影響するリスクがあります。こうした事態に備え、雇用主は外国人従事者の在留資格の種類・就労可能な業務の範囲を事前に把握しておくことが重要です。
外国人事業者の認定申請:学習塾・スポーツクラブ等を経営する外国人が認定申請を行う場合、申請書類への日本語対応や管理体制の証明方法について、行政書士のサポートが有効です。
6. 行政書士法人塩永事務所のサポート
行政書士法人塩永事務所は、出入国在留管理庁の登録支援機関 26登-012957として外国人雇用支援を日常的に行うほか、個人情報保護法・行政手続に精通した行政書士が、こども性暴力防止法(日本版DBS)への対応をトータルでサポートします。
主なサポート内容
- 自社が対象事業者かどうかの診断・制度解説
- 民間事業者の認定申請に必要な書類作成・申請代行
- 安全確保措置・情報管理体制の構築支援
- 就業規則・社内規程・対処規程の作成サポート
- 外国人従事者の無犯罪証明書取得・在留資格に関するアドバイス
- 施行後の継続的なコンプライアンス相談
当事務所の強み
登録支援機関として特定技能外国人の支援実務に精通しているため、外国人従事者が在籍する事業者の複合的な問題(在留資格・雇用管理・日本版DBS対応)をワンストップで対応できます。また、認定経営革新等支援機関として事業経営全般の相談にも対応します。オンライン相談にも対応しており、熊本県外からのご相談も承ります。
まとめ
こども性暴力防止法は、子どもに対する性暴力を防ぎ、その心と身体を守るために制定された法律で、2026年12月25日から施行されます。
施行日まで残り1年を切った今、事業者に求められていることは「制度が始まってから考える」ことではありません。施行ガイドラインがすでに公表されており、認定申請の準備・規程整備・研修体制の構築など、やるべきことは明確です。
子どもたちの安全を守ることは、すべての教育・保育関係事業者に課せられた社会的責任です。行政書士法人塩永事務所は、事業者が確実かつ円滑に制度対応を進められるよう、専門的な立場から全力でサポートいたします。
📞 TEL:096-385-9002(平日 9:00〜18:00) ✉ info@shionagaoffice.jp
行政書士法人塩永事務所 登録支援機関/認定経営革新等支援機関 所在地:熊本市中央区水前寺1-9-6
最新情報はこども家庭庁公式サイト(https://www.cfa.go.jp)またはお電話にてご確認ください。
