
国際結婚の手続きガイド
行政書士法人塩永事務所
国際結婚とは
国際結婚とは、異なる国籍を有する男女が法的に有効な婚姻関係を締結することを指します。この手続きには、各当事者の本国法および日本国内法の要件を充足する必要があり、複数の行政機関における手続きを段階的に進めることが求められます。本稿では、日本人と外国人が婚姻する際に必要となる法的手続きについて、実務上の観点から詳細に解説いたします。
📝 国際結婚手続きの全体構成
国際結婚に関する手続きは、大きく以下の二段階に区分されます。
第一段階:婚姻の成立
- 日本国内における婚姻届の提出
- 外国人配偶者の本国における婚姻の報告
第二段階:在留資格の整備
- 外国人配偶者が日本国内に居住するための在留資格の変更または取得
重要: 手続きの順序を誤った場合、婚姻自体の有効性や在留資格の取得に重大な支障をきたす可能性があります。事前の綿密な準備と正確な理解が不可欠です。
① 婚姻要件具備証明書の取得
外国人配偶者が日本において婚姻届を提出する前提として、当該外国人が自国法上婚姻可能な状態にあることを証する「婚姻要件具備証明書」の取得が必要です。
発行機関
- 外国人配偶者の本国政府関係機関
- 在日大使館または総領事館
証明書の記載事項(一般的な例)
- 氏名(本国における正式表記)
- 生年月日
- 国籍
- 現在独身であること
- 本国法に基づき婚姻可能な年齢に達していること
- 重婚その他の法律上の婚姻障害事由が存在しないこと
注意: 国によって証明書の名称、様式、発行手続きが大きく異なります。事前に該当国の大使館等に確認することを強く推奨します。
② 日本における婚姻届の提出
婚姻要件具備証明書を取得後、日本国内の市区町村役場に婚姻届を提出します。
日本人配偶者が準備する書類
- 戸籍謄本(本籍地以外の市区町村に届出する場合)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等)
外国人配偶者が準備する書類
- 有効なパスポート
- 婚姻要件具備証明書(日本語翻訳文を添付)
- 出生証明書(市区町村により要求される場合あり)
- 離婚証明書(再婚の場合に限る)
翻訳文に関する留意事項
- すべての外国語書類には日本語翻訳文の添付が必須です
- 翻訳者の氏名・住所・押印(または署名)の記載が必要です
- 一部の市区町村では、公証人による翻訳認証を求められる場合があります
- 翻訳の正確性は手続きの円滑化に直結するため、専門家への依頼が推奨されます
③ 外国人配偶者の本国への婚姻の報告(報告的届出)
日本国内で婚姻が成立した後、外国人配偶者の本国に対しても婚姻の事実を報告する必要があります。この手続きにより、当該本国においても婚姻関係が法的に認知されます。
提出先
- 在日大使館または総領事館
- 本国の関係行政機関(直接提出する場合)
一般的な提出書類(国により異なる)
- 婚姻届受理証明書(市区町村役場発行)
- 戸籍謄本(婚姻事実が記載されたもの)
- パスポートの写し
- 各種書類の翻訳文(当該国の公用語)
注意: 本国への報告手続きは国によって要件が大きく異なります。必ず該当国の大使館等に事前確認を行ってください。
④ 在留資格の変更または取得
婚姻成立後、外国人配偶者が適法に日本国内に滞在するためには、「日本人の配偶者等」の在留資格への変更、または新規取得の手続きが必要です。
🔸 在留資格変更許可申請(既に日本国内に在留している外国人の場合)
申請先: 管轄の出入国在留管理局
主要な必要書類:
- 在留資格変更許可申請書
- 申請人の顔写真(縦4cm×横3cm、直近3ヶ月以内撮影)
- パスポートおよび在留カード
- 収入印紙4,000円分
- 戸籍謄本(婚姻事実記載のもの)
- 住民票(世帯全員記載、続柄・本籍地記載のもの)
- 住民税の課税証明書および納税証明書(直近年度)
- 外国人配偶者の本国発行の結婚証明書(該当する場合)
- 質問書(交際経緯、結婚に至る経緯の詳細説明)
- 夫婦の交際を証明する資料(写真、通信記録等)
- 身元保証書
- その他、入管が個別に指定する書類
🔸 在留資格認定証明書交付申請(外国に居住している外国人の場合)
手続きの流れ:
- 日本人配偶者が日本国内の出入国在留管理局に申請
- 在留資格認定証明書が交付される(審査期間:通常1〜3ヶ月)
- 証明書を外国人配偶者に送付
- 外国人配偶者が現地の在外日本公館でビザ申請
- ビザ取得後、日本へ入国
- 入国時に在留資格が付与される
⚠️ 手続き上の重要な注意点
✅ 婚姻の真実性に関する立証
近年、偽装結婚の防止を目的として、婚姻の真実性に関する審査が厳格化されています。以下の点について、客観的証拠に基づく詳細な説明が求められます。
- 出会いから交際に至る経緯
- 交際期間中の具体的なコミュニケーション内容
- 婚姻に至る意思決定の過程
- 現在の同居状況または今後の生活計画
✅ 経済的扶養能力の証明
日本人配偶者には、外国人配偶者を安定的に扶養できる経済力が求められます。以下の書類により証明します。
- 住民税の課税証明書
- 納税証明書
- 在職証明書
- 給与明細書(直近数ヶ月分)
- 預金残高証明書(補足資料として)
基準: 明確な収入基準は公表されていませんが、実務上、年収300万円程度が一つの目安とされています。収入が不十分な場合でも、親族による経済的支援等の補完的事情により許可される可能性があります。
✅ 翻訳の正確性確保
外国語で作成された書類には、必ず日本語翻訳文を添付する必要があります。誤訳や不正確な翻訳は審査の遅延や不許可の原因となり得るため、国際結婚手続きに精通した専門家による翻訳が強く推奨されます。
🌍 主要国籍別の特記事項
| 国籍 | 特記事項 |
|---|---|
| 中国 | 「単身証明書」(未婚証明)の取得が必要。本国での公証手続きに相当の期間を要する傾向があります。また、書類の認証手続きが複雑です。 |
| 韓国 | 家族関係登録簿に基づく各種証明書が発行されます。比較的手続きは明確で、スムーズに進行する傾向があります。 |
| フィリピン | 婚姻要件具備証明書(LCCM)の取得に時間を要します。また、フィリピン統計局(PSA)発行の各種証明書が必要です。 |
| 欧米諸国 | 婚姻要件具備証明書に代えて宣誓供述書(Affidavit)形式が一般的です。公証人(Notary Public)による認証が必要な場合があります。 |
| ベトナム | 独身証明書の取得および人民委員会の認証が必要です。書類の準備に時間がかかる傾向があります。 |
⏳ 標準的な手続き所要期間
| 手続き内容 | 標準的所要期間 |
|---|---|
| 婚姻要件具備証明書の取得 | 約1〜2ヶ月(国により大幅に異なる) |
| 日本における婚姻届の受理 | 即日〜1週間 |
| 本国への報告的届出 | 約1〜2ヶ月 |
| 在留資格の変更 | 約1〜3ヶ月(標準処理期間:2週間〜1ヶ月、実際には個別事情により変動) |
| 在留資格認定証明書の交付 | 約1〜3ヶ月 |
総所要期間の目安: 順調に進行した場合でも、着手から外国人配偶者が適法に日本で生活できる状態になるまで、最短でも3〜4ヶ月、通常は6ヶ月程度を見込む必要があります。
👨⚖️ 専門家への相談を推奨する理由
国際結婚に関する手続きは、以下の理由により高度な専門性を要します。
- 当事者の国籍により適用される法令・手続きが大きく異なる
- 書類の不備や手続きの誤りが在留資格審査に重大な影響を及ぼす
- 出入国在留管理局の審査基準は明文化されておらず、実務上の判断基準の理解が必要
- 婚姻の真実性立証には、適切な資料選択と説明文書の作成技術が求められる
行政書士法人塩永事務所では、豊富な実績と専門知識に基づき、お客様の個別状況に応じた最適な手続き支援を提供しております。
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