
「技術・人文知識・国際業務」は、日本の就労ビザの中でも最も一般的な在留資格であり、申請では「本人・会社・職務内容」の3点が一体として審査されます。
新規取得の基本的な流れと、実務上特に重要となるチェックポイントを整理します。
在留資格の基本と要件
「技術・人文知識・国際業務」は、自然科学・人文科学の専門知識を要する業務や、外国の文化・語学を活かした国際業務に従事する外国人を対象とする在留資格です。
法務省告示では、学歴(大学・専門学校卒)または一定年数の実務経験を通じて、従事予定の業務に必要な技術・知識を有していることが求められます。
この在留資格が認められるためには、
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本人の学歴・職歴と業務内容の関連性
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会社の事業実態と雇用の安定性
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業務が単純労働ではなく専門性を伴うこと
が総合的に審査されます。
手続き全体の流れ
海外から新たに人材を呼び寄せる場合、一般的な手続きの流れは次のとおりです。
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業務内容・在留資格の該当性の確認
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予定業務が「技術」「人文知識」「国際業務」のいずれかに該当するかを整理し、単純労働が中心とならないよう確認します。
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雇用条件・会社側要件の確認
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給与が日本人と同等水準であるか、事業の継続性があるか、社会保険加入等を含め法令遵守がされているかをチェックします。
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必要書類の収集・作成
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申請人側:卒業証明書・成績証明書・職歴証明・履歴書等。
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会社側:登記事項証明書・決算書・会社案内・雇用契約書・業務内容説明書・雇用理由書など。
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在留資格認定証明書交付申請
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受入企業または代理人(行政書士)が、地方出入国在留管理局に申請書一式を提出します。
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審査・在留資格認定証明書交付
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審査期間は通常1〜3か月程度で、許可されると在留資格認定証明書が交付されます。
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海外での査証申請・入国
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申請人が母国等の日本大使館・総領事館で就労査証を取得し、日本入国時に在留カードの交付を受けます。
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既に日本にいる留学生などを雇用する場合は、在留資格変更許可申請により同様の審査を受ける形となります。
審査で見られる3つの軸
1. 本人要件(学歴・実務経験)
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大学・専門学校での専攻が従事予定の業務とどの程度関連しているかが重視されます。
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大卒等でない場合は、一定年数以上の実務経験で補う必要があり、その期間や内容を在職証明書等で具体的に立証することが求められます。
特に、専攻と業務が離れている場合、どのように知識・スキルを身につけたのかを説明できる資料がないと不許可リスクが高まります。
2. 会社要件(事業実態・雇用環境)
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会社の事業内容が就労予定業務と整合しているか、実態のある事業かどうかが確認されます。
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売上や従業員数、オフィス環境、社会保険加入状況などから、安定した雇用が継続できるかを審査されます。
赤字が続いていたり、実態が乏しいペーパーカンパニーと評価されると、不許可になる可能性が高くなります。
3. 職務内容要件(専門性・比率)
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業務内容のうち、専門的・技術的な業務が「主たる部分」を占めていることが必要で、一般には8割程度以上が目安とされています。
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通訳・翻訳、海外取引、企画・マーケティング、システム開発など、法務省の明確化資料と照らして「許容される業務」に該当しているかがチェックされます。
受付や倉庫作業などの単純労働が中心になると、「技術・人文知識・国際業務」では認められない可能性が高くなります。
実務上のポイントと注意点
行政書士法人塩永事務所としては、以下の点を特に重視して申請設計を行います。
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職務内容説明書・雇用理由書の作り込み
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実際の業務フローや1日の業務割合を具体的に示し、「専門性が高い業務が中心である」ことを明らかにします。
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学歴・経歴と業務の関連性の整理
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専攻内容と職務の結びつきが弱い場合、過去のプロジェクト経験や研修歴を含めて「一貫したストーリー」として整理します。
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給与水準・生活基盤の確認
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地域の最低賃金を下回らず、日本人と同等水準であること、社会保険・税務の適正な対応が可能かどうかも事前に確認します。
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単純労働とみなされない業務設計
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受付・配達・現場作業などが一定割合必要な場合でも、全体の中で専門業務が明確に主となるよう業務設計と説明を行います。
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行政書士法人塩永事務所のサポート
行政書士法人塩永事務所では、「技術・人文知識・国際業務」ビザに関して、次のような包括的なサポートを提供しています。
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採用計画段階での在留資格適合性の診断と、適切な在留資格の選定
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本人・会社・職務内容の3軸から見た不許可リスクの事前チェック
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在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請に必要な各種書類の作成・整備
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入管からの追加資料要請や質問への対応支援
就労ビザの審査基準は、法令だけでなく運用実務や通達にも大きく左右されます。
自社の採用計画や候補者の学歴・職歴に応じて最適な申請スキームをご提案できますので、「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得をご検討の企業様・ご本人様は、早めにご相談ください。096-385-9002
