
盛土規制法の基礎知識:行政書士法人塩永事務所による解説
1. 制定の背景
盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)は、2021年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流災害を契機に制定されました。従来の宅地造成等規制法や森林法・農地法では十分に対応できなかった「危険な盛土」による災害リスクを包括的に管理するための新しい法制度です。
2. 法の目的
- 盛土等による災害から国民の生命・身体を守る
- 土地の用途や目的を問わず、全国一律の基準で危険な盛土を規制
- 長期的な土地の安全性を確保し、安心して暮らせる社会を実現
3. 基本的な規制内容
- 規制区域の指定 都道府県知事等が「宅地造成等工事規制区域」「特定盛土等規制区域」を指定。宅地・農地・森林など用途を問わず対象となります。
- 許可制度 規制区域内で盛土や土石の堆積を行う場合、事前に許可が必要。擁壁・排水施設・地盤の締め固めなど安全対策が必須です。
- 工事の監督 定期報告・中間検査・完了検査を通じて施工状況を監督。
- 土地所有者の責務 盛土が行われた土地を安全な状態に維持する義務が明確化。
- 是正措置命令 必要に応じて土地所有者や原因行為者に対し、盛土撤去や施設再設置などの是正措置を命令可能。
- 罰則の強化 無許可行為や命令違反には懲役3年以下または罰金1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰則。
4. 関連法規との関係
- 都市計画法:都市計画区域外でも適用されるため補完的役割を果たす
- 建築基準法:建築物以外の盛土にも規制を及ぼし安全性を確保
- 森林法・農地法:従来規制が不十分だった森林・農地における盛土も対象
5. 実務上のポイント
- 盛土予定地が規制区域に指定されているか確認することが第一歩
- 許可申請には工事計画書・地質調査報告書・安全対策計画書などが必要
- 許可後も定期報告・検査を怠らないことが重要
- 違反すれば建設業法上の処分(営業停止等)につながる可能性あり
6. 適用事例
熱海市の土石流災害では、従来法の規制対象外だった盛土が原因で甚大な被害が発生しました。盛土規制法の制定により、同地域は「特定盛土等規制区域」に指定され、以後の盛土行為は許可制・監督制の下で行われるようになりました。
まとめ
盛土規制法は、土地の用途や盛土の目的を問わず、全国一律の基準で危険な盛土を包括的に規制する重要な法律です。許可制度・監督制度・罰則強化により、長期的な土地の安全性を確保し、災害リスクを大幅に低減します。行政書士としては、規制区域の確認から許可申請、施工監督、是正措置対応まで、事業者や土地所有者の法令遵守を支援することが実務上の大きな役割となります。
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