留学・文化活動・特定活動ビザの詳細ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
日本への留学、文化活動、特定の専門的活動を目的とした在留資格は、それぞれ目的・要件・運用実務が異なります。本ガイドでは、2025年10月時点で公表されている出入国在留管理庁等の最新情報を踏まえ、「留学」「文化活動」「特定活動」の3つの在留資格について、申請手続きの流れと実務上の注意点を専門家の視点から整理します。実際の申請では個々の事情により必要資料や立証方法が変わるため、個別相談を受けることを前提にご覧ください。
第1章:留学ビザ
留学ビザとは
在留資格「留学」は、外国人が日本の教育機関で体系的な教育を受けることを目的とする在留資格です。在留期間は原則として最長4年3か月の範囲内で法務大臣が個別に指定し、大学・大学院・短期大学・専修学校専門課程・日本語教育機関などでの就学が対象となります。
対象となる教育機関
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大学等:大学(学部・大学院)、短期大学、専修学校専門課程、各種学校(日本語学校等)、設備・編成が大学に準ずる機関など。
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高等学校等:高等学校(全日制・定時制・通信制)、中学校、小学校、特別支援学校等。
申請手続きの流れ
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在留資格認定証明書交付申請(COE申請)
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申請時期:一般に入学予定日の概ね6か月前から受付が可能です。
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標準処理期間:おおむね1~3か月程度とされています。
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申請者:本人のほか、受入教育機関の担当者や、行政書士などの代理人が申請人となることができます。
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申請先:居住予定地または受入機関所在地を管轄する地方出入国在留管理官署(オンライン申請が利用できる場合もあります)。
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査証(ビザ)申請
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在留資格認定証明書が交付された後、本人が本国等の日本大使館・総領事館で査証申請を行います。
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主な必要書類
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共通書類:在留資格認定証明書交付申請書、写真(4cm×3cm・申請前3か月以内撮影)、返信用封筒(簡易書留相当)など。
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教育機関発行書類:入学許可書の写し、学校案内、適正校に関する通知書(予定入学時期・学校種により要否あり)、日本語学校の場合は日本語能力を示す資料等。
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経費支弁関係:
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自費留学:経費支弁書、銀行残高証明書や預金通帳写し、支弁者が雇用されている場合は在職証明書など。
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奨学金留学:奨学金給付・貸与証明書。
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家族支弁:支弁者の収入証明書、親族関係を示す書類など。
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在学中の注意点
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アルバイト:在留資格「留学」は原則就労不可ですが、「資格外活動許可」を取得すれば、通常は週28時間以内、長期休暇中は1日8時間以内でのアルバイトが認められます。風俗営業関連業種など、法令上禁止される職種は厳格に排除されています。
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在留期間更新:在留期間満了の概ね3か月前から更新申請が可能で、出席状況・成績・在留状況(アルバイト時間等)が総合的に審査されます。
2025年時点の動向(例)
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2025年4月入学者を対象とした結核スクリーニング制度の導入が予定されており、一部の国・地域出身者には追加的な健康診断書提出が求められる見込みです。
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卒業予定留学生の就労ビザ申請においては、卒業見込み証明書や内定通知書の整備タイミングがより重視され、就職活動用の特定活動への変更を活用した計画的なスケジュール管理が求められます。
第2章:文化活動ビザ
文化活動ビザとは
在留資格「文化活動」は、報酬を伴わない学術的・芸術的活動、または日本固有の文化・技芸の研究・習得活動を目的とする在留資格です。営利性のある活動や一般的な研修・就学活動は含まれず、留学ビザや研修ビザとは区別されます。
対象となる主な活動
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学術・芸術活動:大学や研究機関での研究、文献調査、作品制作・発表、文化交流プロジェクトなど。
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日本特有の文化・技芸の研究・習得:茶道、華道、書道、武道(柔道・剣道・空手等)、日本料理、伝統工芸等の専門的修得活動。
申請に必要な主な書類
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共通書類:在留資格認定証明書交付申請書、写真(4cm×3cm)、返信用封筒等。
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活動内容関連:活動計画書、受入機関の概要資料、技芸習得の場合は指導者の略歴書・指導体制がわかる資料など。
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経費支弁関係:預金残高証明書、奨学金証明書、家族が支弁する場合の収入証明書等。
在留期間・アルバイト
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在留期間:3か月、6か月、1年、3年など、活動実態に応じて法務大臣が指定します(上限は原則5年以内)。
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アルバイトと報酬:資格外活動許可を得れば、範囲内で一般的なアルバイトが認められる場合がありますが、本来の文化活動から報酬を得ることは想定されていません。活動自体が有償となる場合は、特定活動への変更など別の在留資格を検討する必要があります。
第3章:特定活動ビザ
特定活動ビザとは
在留資格「特定活動」は、他の在留資格に該当しない活動のうち、個別に法務大臣が告示または個別指定で認める活動のための在留資格です。制度上の「受け皿」としての性格が強く、在留期間は5年以内の範囲で、5年・3年・1年・6か月・3か月などから指定されます。
特定活動の区分
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法定特定活動:EPA看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外交官等の家事使用人など、法律や条約に基づき定められているもの。
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告示特定活動:インターンシップ、サマージョブ、特定分野の研究活動、就職活動、起業活動、未来創造人材など、多数の類型が告示で定められています。
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告示外特定活動:人道上・社会通念上の特別な事情があるケース(医療滞在、災害時の特例等)について、個別に特定活動として指定されるもの。
代表的な特定活動の例
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インターンシップ(告示ベース)
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対象:外国の大学等に在籍する学生や卒業後一定期間内の者。
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活動:一定期間内の企業等での就業体験(単純労働は不可)で、条件を満たす場合は報酬の支給も認められます。
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主な書類:インターンシップ計画書、受入機関概要資料、在学証明書または卒業証明書など。
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就職活動(告示外・個別指定類型)
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対象:日本の大学・専門学校などを卒業した留学生で、引き続き日本で就職活動を行う者。
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在留期間:通常6か月単位で許可され、要件充足で1回更新が認められる運用が一般的です。
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主な書類:卒業証明書、就職活動の実態を示す書類、生活費支弁を裏付ける資料など。
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起業活動(告示外・個別指定類型)
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対象:日本での起業を予定し、一定の事業計画や資金基盤を有する外国人。
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在留期間:通常1年以内で、事業の進捗に応じて更新の可否が判断されます。
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主な書類:具体的な事業計画書、資金証明書類、事業拠点を示す資料など。
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申請手続きと「指定書」のポイント
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共通の基本書類として、在留資格認定証明書交付申請書、写真、活動内容を示す資料のほか、法務大臣が活動内容・期間・条件を明記した「指定書」が重要な役割を果たします。
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指定書に記載された範囲外の活動を行うと、在留資格取消しや退去強制の対象となるおそれがあるため、活動内容・就労範囲の管理が不可欠です。
共通の注意点・不許可事例と対策
申請時の共通注意点
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書類の正確性:各種証明書の翻訳精度、記載内容の整合性、有効期限などを厳格に確認する必要があります。
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申請タイミング:在留期限や入学・採用時期から逆算し、十分な余裕をもって準備・申請することが望まれます。
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在留中の義務:住所届出、在留カードの携帯義務、活動内容・時間数など在留資格の範囲を遵守することが求められます。
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資格外活動許可:アルバイト等を予定する場合は、事前に資格外活動許可を取得し、許可時間・職種を必ず守る必要があります。
よくある不許可理由と対策
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経費支弁能力の不足:預金額が不足している、支弁者の収入に継続性がない等の理由で不許可となる例があります。対策として、十分な残高・収入を裏付ける資料を準備し、支弁者の選定を慎重に行います。
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活動目的・計画の不明確さ:活動内容が抽象的で、在留目的との関連が不明瞭な場合、審査上マイナスとなります。詳細かつ実現可能性の高い計画書を作成し、裏付け資料を添付することが重要です。
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書類不備・整合性欠如:記載誤りや添付漏れ、資料間の矛盾は不許可・保留の大きな原因となるため、提出前のチェックリスト運用が有効です。
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虚偽申告:故意の虚偽申告は在留資格の取消しや退去強制につながる重大な違反であり、全ての申告事項を事実に即して記載することが大前提です。
在留資格別の留意点
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留学ビザ:日本語能力や学力、学校選定の適否、出席率の見込み等が総合的に評価されます。
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文化活動ビザ:実態が収益活動や就労に近い場合、別の在留資格への該当性が問題となることがあります。
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特定活動ビザ:指定された活動内容・期間から逸脱すると、更新・変更が極めて困難になるため、指定内容の理解が必須です。
2025年の制度・運用動向(概要)
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デジタル化の進展:在留申請オンラインシステムや一部のeVISA制度が拡充され、資格外活動許可の郵送交付など、来庁負担を軽減する取り組みが進んでいます。
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審査の厳格化:不法就労・不法滞在防止の観点から、経費支弁・活動実態に関する裏付け資料の要求が強まる傾向にあります。
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新型コロナ関連措置:水際対策は原則終了し、平常時の審査基準に戻りつつある一方で、健康状態に関する確認が残るケースもあります。
行政書士に依頼するメリット
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専門知識に基づく戦略立案:複雑化する在留制度を踏まえ、個々の事情に応じた最適な在留資格・手続ルートを検討できます。
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書類作成の精度向上:不備・矛盾を事前に排除し、不許可リスクを低減できます。
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時間・労力の削減:申請準備・官庁とのやりとりを専門家に委任することで、本来の学業・活動・事業に専念できます。
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アフターフォロー:在留期間更新・在留資格変更・家族呼寄せなど、長期的な在留計画も見据えたサポートが可能です。
お問い合わせ先(行政書士法人塩永事務所)
留学・文化活動・特定活動ビザは、目的や要件がそれぞれ異なり、正確な制度理解と丁寧な準備が許可取得の鍵となります。2025年以降のデジタル化や審査厳格化の動きを踏まえ、専門家のサポートを上手に活用してください。
行政書士法人塩永事務所では、豊富な実務経験と最新の法令情報に基づき、在留資格の取得・更新・変更をトータルでサポートしております。
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