
留学・文化活動・特定活動ビザ 詳説ガイド
行政書士法人 塩永事務所
はじめに
本稿は、2025年時点の制度動向を踏まえ、留学ビザ・文化活動ビザ・特定活動ビザ(以下、3種の在留資格)について、申請手続き・必要書類・実務上の注意点を分かりやすく整理した実務ガイドです。各在留資格は目的・活動内容・許可される範囲が異なります。誤った申請や活動は不許可や在留資格の取消につながるため、特徴を正しく理解することが重要です。
第1章:留学ビザ(在留資格「留学」)
概要
「留学」は、日本の教育機関で学ぶことを目的とする在留資格です。大学、大学院、短期大学、専修学校(専門課程)、各種学校(日本語学校等)などが対象となります。原則として学業が主たる活動となります。
対象となる教育機関(主な例)
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大学(学部・大学院)
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短期大学
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専修学校(専門課程)
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各種学校(日本語学校 等)
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高等学校・中学校・小学校・盲学校・聾学校 等(該当する場合)
申請の流れ(概略)
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在留資格認定証明書(COE)交付申請
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申請時期:入学予定日の概ね6か月前から申請可能。
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処理期間の目安:1~3か月(案件により変動)。
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申請者:本人または代理人(教育機関職員・行政書士等)。
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ビザ申請(在留資格認定証明書取得後)
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COEを受領後、本国の在外公館で査証(ビザ)申請を行い、日本入国時に在留カードが交付されます(短期滞在を除く)。
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必要書類(代表例)
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在留資格認定証明書交付申請書
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写真(4cm×3cm、申請前3か月以内撮影)
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入学許可書の写し、学校案内等
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経費支弁関係書類(預金残高証明、支弁者の所得証明など)
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奨学金受給を予定する場合は奨学金証明書 など
在学中の注意点
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アルバイト:原則就労不可。資格外活動許可を得れば週28時間以内(学期中)等で就労可能。風俗営業等への就労は禁止。
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在留期間更新:在留期間満了前に更新手続きが必要。出席状況・成績等が確認される場合あり。
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就労ビザ(卒業後)への移行:卒業見込み証明や内定書など、早めの準備が重要(2025年は企業側の早期手続きが推奨される傾向があります)。
第2章:文化活動ビザ(在留資格「文化活動」)
概要
文化活動は、収入を伴わない学術上または芸術上の活動、あるいは日本特有の文化・技芸を専門的に研究・修得することを目的とした在留資格です。報酬を伴う活動は原則として認められません。
対象となる活動(例)
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大学等での研究(客員研究員など、無報酬の場合)
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文献調査・資料収集等の学術活動
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絵画・音楽・舞台等の芸術活動(無報酬での滞在)
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茶道・華道・書道・武道・日本料理・伝統工芸などの技芸研修
申請に必要なポイント
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活動計画の明確化:活動目的・期間・指導体制を具体的に示す資料が重要。
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活動機関や指導者の情報:指導者の経歴書や受入れ機関の概要を添付。
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経費支弁の証明:預金残高証明や支弁者の収入証明等を提出。
在留期間・更新
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在留期間は3か月・6か月・1年・3年等から決定されます。活動内容と必要期間を踏まえ入管が判断。条件を満たせば更新可能です。
報酬・アルバイトの扱い
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活動自体からの報酬は原則禁止。報酬を受ける活動を行う場合は、在留資格の変更(例:特定活動 告示9号 等)や別の在留資格への切替が必要となることがあります。
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資格外活動許可を得れば、所定の時間内(たとえば週28時間等)でアルバイトは可能。
第3章:特定活動ビザ(在留資格「特定活動」)
概要
特定活動は、現行のいずれの在留資格にも該当しない個別の活動について、法務大臣があらかじめ活動内容・条件を指定して付与する在留資格です。非常に多様な類型があります。
分類(概観)
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法定の特定活動:EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外交官の家事使用人等。
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告示に規定された特定活動(多数の類型):インターンシップ、サマージョブ、報酬を得る研究活動、就職活動、起業活動、未来創造人材など。
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告示外の特定活動:人道上の配慮が必要なケースや法務大臣が特別に指定する活動。
主要な告示例(抜粋)
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インターンシップ(告示9号など)
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対象:海外大学の在学生・卒業後1年以内の者等。
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期間:概ね1年以内(詳細は指定書により異なる)。
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報酬:受け取れる場合がある(指定に準拠)。
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就職活動(告示外)
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対象:日本の教育機関を卒業した留学生等。
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期間:6か月(ケースによって更新可)。
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必要書類:卒業証明、就職活動を行っていることを示す資料、生活費の裏付け等。
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起業活動(告示外)
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対象:日本で起業を目指す者(事業計画・資金計画などが審査対象)。
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期間:最長1年(更新可の条件あり)。
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申請時の「指定書」
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特定活動は、原則として指定書(法務大臣が活動・条件を明記した文書)に基づいて許可されます。指定書の内容を逸脱する活動は認められません。指定書の取得・内容が審査の中心となります。
共通の申請上の注意点
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書類の正確性・一貫性
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翻訳書類の正確さ、日付・氏名などの記載一致を徹底してください。
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経費支弁の証明
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銀行残高証明、支弁者の所得証明等は不十分だと不許可の原因になります。余裕を持った準備を。
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申請タイミング
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処理期間にはばらつきがあるため、十分な余裕を持って申請すること。
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資格外活動(アルバイト)
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アルバイトを希望する場合は事前に資格外活動許可を申請。許可された範囲と時間を遵守すること。
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在留中の義務
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住所変更等の届出、在留カードの常時携帯、在留資格に定められた活動範囲の遵守が必要。
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よくある不許可理由と対策
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経費支弁能力の不足 → 十分な預金残高または確実な支弁者を用意する。
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活動目的の不明確さ → 詳細かつ現実的な活動計画書を作成する。
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書類不備・不足 → チェックリストによる事前確認を徹底する。
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虚偽申告 → 絶対に行わない(重大な不許可・在留取消事由)。
2025年の制度動向(ポイント)
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手続きのデジタル化推進:一部申請でオンライン申請が利用可能になり利便性が向上しています。ただし全てがオンライン化されているわけではなく、書類の整備は引き続き重要です。
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審査の厳格化傾向:不法就労防止や実態確認の観点から、書類審査がより厳格になっています。活動の実現可能性や資金面の裏付けをしっかり示すことが求められます。
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新型コロナ関連措置の通常化:入国制限は緩和され、原則は通常の審査基準に戻りつつあります(具体的な措置は時期によって変動します)。
行政書士に依頼するメリット
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制度・運用の専門知識に基づき、最適な申請戦略を設計します。
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書類作成の精度向上により、不備による不許可リスクを低減します。
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申請スケジュール管理や在留中のフォロー(更新・資格変更)などの継続支援が受けられます。
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複雑なケース(家族帯同、報酬を伴う活動の可否、起業計画の審査対応等)で特に有効です。
まとめ
留学・文化活動・特定活動の各在留資格は目的・活動範囲・許可条件がそれぞれ異なります。申請の成功には、活動の具体性・資金裏付け・書類の正確性が不可欠です。入国・在留に関する制度は変化することがあるため、最新の運用を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。
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