💡太陽光発電システムの名義変更手続き完全ガイド【行政書士解説】
はじめに
太陽光発電システムの**事業主体(所有者)**が変更となる場合、関連法令に基づき、適切な名義変更手続きを行うことが法的に義務付けられています。
特に、固定価格買取制度(FIT制度)を利用して電力会社と売電契約を結んでいるシステムの場合、経済産業省(国)への事業計画の変更認定・変更届出、および電力会社での売電契約の名義変更が必要です。
これらの手続きを怠ると、FIT制度に基づく適正な買取価格での売電収入を受け取れなくなる、システムの保証やメンテナンス契約が失効する、最悪の場合、FIT認定が取り消しとなるリスクがあります。
本記事では、行政書士法人塩永事務所が、太陽光発電システムの名義変更手続きについて、必要な手続き、関係省庁・電力会社への対応、および注意点まで詳しく解説いたします。
名義変更が必要となる主な場面
太陽光発電システムの**事業主体(FIT認定の所有者・申請者)**の名義変更が必要となる主な場面は以下の通りです。
| 項目 | 具体的な状況 |
| 1. 不動産売買 | 太陽光発電システム付きの住宅や土地の売買。中古物件購入に伴う既存システム事業承継。 |
| 2. 相続 | FIT認定事業者の死亡による相続。遺産分割協議による事業権利の承継。 |
| 3. 贈与 | 親族間での生前贈与、または法人から個人・個人から法人への事業贈与。 |
| 4. 事業譲渡・M&A | 太陽光発電事業(発電設備とFIT認定)の譲渡。会社分割、合併による包括的な事業承継。 |
| 5. 法人の組織変更 | 個人事業主から法人を設立(法人成り)した場合。法人の商号(会社名)変更や本店移転(軽微な変更)。 |
名義変更に必要な3つの主要手続き
太陽光発電システムの名義変更には、主に以下の3つの手続きがセットで必要となります。
1. 経済産業省への事業計画認定の変更申請・届出
| 項目 | 詳細 |
| 手続きの概要 | FIT制度の対象設備は、再生可能エネルギー特別措置法に基づき、経済産業大臣の事業計画認定を受けています。事業主体の変更は、この認定内容の根幹に関わるため、変更認定の申請または変更届出が必要です。 |
| 申請方法 | **再生可能エネルギー電子申請システム(通称:FIT-Portal)**を使用します。(原則24時間365日申請可能) |
| 手続きの分類 | 設備の出力規模や変更事由により、手続きの種別が異なります。 |
【設備容量別の手続き分類】
| 設備容量 | 手続きの種別 | 概要 |
| 50kW未満(住宅用・低圧小規模産業用等) | 事前変更届出(または事後変更届出) | 比較的簡素な手続き。事業譲渡・相続・贈与は原則として事前届出が必要です。 |
| 50kW以上(高圧・特別高圧産業用等) | 変更認定申請(または事前変更届出) | 譲渡など事業主体の変更には、原則として変更認定申請が必要となり、審査が伴います。 |
必要な情報
手続きには、設備ID(A・S・T・Fから始まる10桁の英数字)、登録者ID、パスワードが必要です。
2. 電力会社との売電契約の名義変更
| 項目 | 詳細 |
| 手続きの必要性 | FIT制度に基づく電力会社との**電力受給契約(売電契約)**も、事業主体(売電収入の受取人)の変更が必要です。 |
| 主な対象電力会社 | 東京電力エナジーパートナー、関西電力、中部電力、九州電力など、各地域の電力会社。 |
| 手続きの流れ | 1. 各電力会社の窓口(カスタマーセンター等)に連絡し、名義変更の意向を伝達。2. 指示された必要書類(経産省への申請・届出書類の控え等を含む)を提出。3. 契約内容の確認・新契約者での締結。 |
3. 設備保証・メンテナンス契約の名義変更
| 項目 | 詳細 |
| 対象となる契約 | 太陽光パネル、パワーコンディショナー等の製品保証、設置工事のシステム保証、定期メンテナンス契約。 |
| 手続き先 | 設備メーカー、設置業者(施工会社)、O&M(運用・保守)会社。 |
| 注意点 | 名義変更を怠ると、万一の故障時に無償保証が受けられなくなるリスクがあるため、必ず確認が必要です。 |
変更事由別の主な必要書類(経済産業省への手続き)
事業計画の変更認定・届出(FIT-Portal)で必要となる主な書類は、変更事由によって異なります。(※電力会社・メーカーへの必要書類は、別途確認が必要です。)
| 変更事由 | 経済産業省への提出が求められる主な書類(電子申請に添付) |
| 売買・譲渡 | 譲渡契約書または譲渡証明書、譲渡人・譲受人の印鑑証明書、個人の住民票の写しまたは法人の登記事項証明書。 |
| 相続 | 遺産分割協議書(法定相続分以外で相続する場合)、相続人全員の印鑑証明書、被相続人の死亡と相続関係がわかる戸籍謄本等。 |
| 贈与 | 贈与契約書、贈与者・受贈者の印鑑証明書、個人の住民票の写しまたは法人の登記事項証明書。 |
| 法人の商号変更 | 変更後の登記事項証明書(履歴事項証明書)。 |
手続きの流れと標準的なスケジュール
標準的な手続きは、以下の順序で進めることを強く推奨します。
| ステップ | 内容 | 標準的な期間 |
| 1. 事前準備・書類収集 | 設備IDの確認、各種証明書(印鑑証明書、住民票等)の取得、譲渡契約等の締結。 | 1〜2週間 |
| 2. 経済産業省への申請・届出 | FIT-Portalで電子申請。変更届出は即日〜数週間、変更認定申請は審査に数週間〜1ヶ月超。 | 1〜4週間以上 |
| 3. 電力会社への手続き | 電力会社に連絡し、必要書類を提出。契約内容の確認・新契約者との締結。 | 2〜4週間 |
| 4. その他(保証・O&M)の手続き | メーカー・設置業者へ連絡し、保証書・メンテナンス契約の名義変更。 | 1〜2週間 |
| 全体合計 | 約1〜2ヶ月程度 |
⚠️注意点
経済産業省の手続きは、書類の不備や審査状況により、長期化する場合があります。特に50kW以上の設備は、詳細な審査が入るため、余裕を持ったスケジュール設定が必要です。
手続き上の重要事項と注意点
1. 手続きの順序と期限の厳守
手続きを怠ると、売電収入が旧所有者に振り込まれ続けたり、FIT認定が取り消されたりするリスクがあります。特に、譲渡などの事業承継を伴う場合は、原則として変更前に経済産業省へ届け出る(事前変更届出)必要があります。
- 事前変更届出/申請:変更(事業承継)の効力発生前に申請
- 事後変更届出:変更後30日以内(主に住所変更、軽微な情報変更)
2. FIT価格への影響
名義変更のみでは、原則としてFITの買取価格(調達価格)は変わりません。ただし、名義変更と同時に設備の増設・交換などを行う場合は、価格が変動する可能性があるため注意が必要です。
3. 税務上の取り扱い
名義変更の原因が売買、相続、贈与である場合、それぞれ譲渡所得税、相続税、贈与税の課税対象となります。税務上の評価や申告については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
4. FIT-Portalの利用
電子申請システムのログインに必要な設備ID、登録者ID、パスワードは、前所有者や設置業者から確実に引き継ぎを受けてください。不明な場合は、電力会社からの「電力受給契約のお知らせ」等で確認できる場合があります。
専門家への相談の勧め
太陽光発電システムの名義変更は、複数の省庁・民間企業への手続きが絡む複雑な作業です。特に、事業譲渡や相続といった複雑な事由の場合、必要書類の収集、契約書の整合性、行政庁への適切な説明が求められます。
行政書士法人塩永事務所では、豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様の状況に応じて最適な手続き方法をご提案し、経済産業省への申請から電力会社への対応まで、確実な名義変更をサポートいたします。
複雑な手続きも専門家にお任せいただければ、お客様は安心して事業を継続・開始していただけます。
行政書士法人塩永事務所
太陽光発電システムの名義変更手続きから各種許認可申請まで、幅広くサポートいたします。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
電話番号:096-385-9002
