
児童発達支援・放課後等デイサービス多機能型事業所開設完全ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
近年、発達障害や知的障害のある子どもたちへの支援ニーズが高まる中、児童発達支援と放課後等デイサービスを組み合わせた「多機能型事業所」の開設が注目されています。
本記事では、行政書士法人塩永事務所の豊富な経験をもとに、多機能型事業所の開設に必要な知識と手続きについて、実務的な観点から詳しく解説いたします。
多機能型事業所とは
多機能型事業所とは、複数の障害福祉サービスを一体的に提供する事業形態です。児童発達支援と放課後等デイサービスを組み合わせることで、未就学児から学齢期の子どもまで、切れ目のない支援を提供できます。
児童発達支援とは
対象者: 未就学の障害児(0歳~6歳)
サービス内容:
- 日常生活における基本的な動作の指導
- 知識技能の付与
- 集団生活への適応訓練
- その他必要な支援
放課後等デイサービスとは
対象者: 就学している障害児(小学生~高校生)
サービス内容:
- 生活能力の向上のための訓練
- 社会との交流の促進
- 放課後や休日における居場所の提供
- その他必要な支援
多機能型事業所のメリット
1. 経営面のメリット
人員配置の効率化
- 管理者や児童発達支援管理責任者を両サービスで兼務可能
- 指導員・保育士等の職員を効率的に配置
- 人件費の最適化が実現
施設の有効活用
- 同一の建物・設備を時間帯により使い分け
- 午前中:児童発達支援、午後:放課後等デイサービス
- 施設賃料・設備投資の効率化
経営の安定化
- 定員の柔軟な運用が可能
- 収益機会の拡大
- リスクの分散
2. 支援面のメリット
継続的な支援の提供
- 未就学期から学齢期まで一貫した支援
- 環境変化による子どもの負担軽減
- 保護者との信頼関係の継続
専門性の共有
- 支援ノウハウの蓄積と共有
- 職員のスキル向上
- 質の高いサービス提供
指定基準
人員基準
管理者
- 各事業所に1名配置(常勤)
- 多機能型の場合、兼務可能
- 業務に支障がない場合、他職務との兼務も可
児童発達支援管理責任者
- 利用定員に応じて配置
- 多機能型の場合、両サービスで兼務可能
- 実務経験と研修修了が必要
配置基準:
- 利用定員40名以下:1名以上
- 利用定員41名以上:1名に40名を超えて40名又は端数を増すごとに1名を加えた数以上
指導員・保育士等
児童発達支援の場合:
- 児童指導員、保育士、障害福祉サービス経験者
- 定員10名以下:2名以上(うち1名以上は児童指導員又は保育士)
- 定員11名以上:2名に定員10名を超えて5名又は端数を増すごとに1名を加えた数以上
放課後等デイサービスの場合:
- 児童指導員、保育士、障害福祉サービス経験者
- 定員10名以下:2名以上
- 定員11名以上:2名に定員10名を超えて5名又は端数を増すごとに1名を加えた数以上
多機能型での配置
- 各サービス提供時間帯に必要人数を配置
- 重複しない時間帯であれば同一職員で対応可能
機能訓練担当職員(配置する場合)
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等
- 機能訓練を実施する場合に配置
設備基準
必須設備
指導訓練室
- 訓練に必要な機械器具等を備える
- 児童発達支援:訓練室又は遊戯室(1人当たり2.47㎡以上)
- 放課後等デイサービス:訓練室(専用又は他事業と共用可)
相談室
- 個別の相談に応じられる設備
- パーティション等による間仕切りでも可
事務室
- 管理・経理等の事務作業スペース
- 他の事業所との兼用可
便所
- 利用者の使用に適した構造
その他
- 手洗い場
- 必要に応じた医療的ケアスペース
多機能型における設備の共用
共用可能な設備:
- 指導訓練室
- 相談室
- 事務室
- 便所
- その他全ての設備
留意点:
- 各サービスの提供に支障がないこと
- 利用者の安全が確保されること
- 適切な環境が整備されること
運営基準
営業日・営業時間
児童発達支援:
- 原則として週5日以上開所
- 1日の営業時間:4時間以上
放課後等デイサービス:
- 原則として週5日以上開所
- 平日:授業終了後の時間帯
- 休日:1日の営業時間4時間以上
多機能型の運営例:
- 平日:午前10時
12時(児童発達支援)、午後2時6時(放課後等デイサービス) - 土曜・休日:午前10時
2時(児童発達支援)、午後2時6時(放課後等デイサービス)
定員設定
総定員方式
- 両サービスの定員を合算して設定
- 例:総定員20名(児童発達支援・放課後等デイサービス合計)
内訳の考え方:
- 午前の児童発達支援:10名
- 午後の放課後等デイサービス:10名
- 同時利用でなければ、柔軟な運用が可能
最低定員:
- 原則として10名以上
- 地域の実情により特例あり
個別支援計画
作成プロセス:
- アセスメントの実施
- 保護者の意向確認
- 個別支援計画の原案作成
- 関係者によるサービス担当者会議
- 保護者への説明と同意取得
- 個別支援計画の交付
モニタリング:
- 定期的な実施(少なくとも6ヶ月に1回)
- 必要に応じた計画の見直し
記録の整備
必要な記録:
- サービス提供記録
- 個別支援計画
- 相談支援記録
- 事故報告書
- 苦情対応記録
- 従業者の勤務状況記録
- 会計帳簿
保存期間:
- サービス提供記録:5年間
- その他の記録:完結の日から5年間
開設までの流れ
ステップ1:事業計画の策定(開設6ヶ月前~)
検討事項:
- 事業の理念とビジョン
- 対象とする障害種別
- 提供するプログラム内容
- 定員設定
- 収支計画
- 資金調達方法
ステップ2:法人設立(株式会社・合同会社・NPO法人等)
必要な手続き:
- 定款作成
- 法人登記
- 税務署等への届出
当事務所のサポート: 行政書士法人塩永事務所では、法人設立手続きから一貫してサポートいたします。
ステップ3:物件の選定(開設4~6ヶ月前)
確認ポイント:
- 立地(通学・通園のしやすさ)
- 面積(指導訓練室の広さ)
- 建物構造(安全性)
- 近隣環境
- 賃料
- 駐車場の有無
法令確認:
- 建築基準法
- 消防法
- バリアフリー法
- 都市計画法(用途地域)
ステップ4:自治体との事前協議(開設3~4ヶ月前)
協議内容:
- 事業計画の説明
- 人員配置計画
- 物件の適合性
- 指定基準の確認
- 申請時期の調整
当事務所の役割: 事前協議への同席、自治体との調整、必要な修正事項の整理を行います。
ステップ5:人材確保(開設3~4ヶ月前)
採用すべき職員:
- 管理者
- 児童発達支援管理責任者(サビ管研修修了者)
- 児童指導員
- 保育士
- その他必要な職員
資格要件の確認: 児童発達支援管理責任者の実務経験要件は特に注意が必要です。
ステップ6:設備・備品の準備(開設2~3ヶ月前)
必要な設備・備品:
- 訓練用具・遊具
- 机・椅子
- パソコン・プリンター
- 事務用品
- 医療器具(必要に応じて)
- 送迎車両(送迎を行う場合)
ステップ7:指定申請書類の作成・提出(開設2~3ヶ月前)
当事務所での書類作成: 行政書士法人塩永事務所では、以下の書類を全て作成・準備いたします。
ステップ8:実地調査の対応(申請後)
調査内容:
- 設備基準の確認
- 人員配置の確認
- 運営体制の確認
- 書類の確認
当事務所のサポート: 実地調査への立会い、質問への対応をサポートします。
ステップ9:指定通知書の交付
指定日: 原則、毎月1日付けでの指定
ステップ10:開設準備・利用者募集
開設前の準備:
- 職員研修の実施
- 運営マニュアルの整備
- 緊急時対応体制の構築
- 利用者募集活動
申請に必要な書類一覧
基本書類(各サービス共通)
- 指定申請書(多機能型用)
- 事業所の平面図・設備一覧
- 運営規程
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 組織体制図
- 協力医療機関との契約書
- 損害賠償保険の加入証明書
法人関係書類
- 定款又は寄附行為の写し
- 登記事項証明書
- 役員名簿
- 財務諸表(貸借対照表・損益計算書)
人員関係書類
- 管理者の経歴書・履歴書
- 児童発達支援管理責任者の経歴書・履歴書・研修修了証
- 職員の資格証明書(児童指導員、保育士等)
- 職員の雇用契約書又は雇用予定証明書
建物関係書類
- 建物の登記事項証明書又は賃貸借契約書
- 建物の平面図(各室の面積記入)
- 消防法令適合通知書
- 建築基準法検査済証の写し
運営関係書類
- 個別支援計画の様式
- サービス提供記録の様式
- 利用契約書の様式
- 重要事項説明書
- プログラム内容説明資料
指定申請のタイミング
申請期限
一般的なスケジュール:
- 4月1日指定希望 → 2月15日~月末締切
- 7月1日指定希望 → 5月15日~月末締切
- 10月1日指定希望 → 8月15日~月末締切
- 1月1日指定希望 → 11月15日~月末締切
※自治体により異なるため、必ず事前確認が必要です。
余裕を持った準備を
書類作成には相当な時間を要します。指定希望日の3~4ヶ月前から準備を開始することを強くお勧めします。
加算制度の活用
多機能型事業所では、様々な加算を取得することで収益を向上させることができます。
主な加算
福祉専門職員配置等加算
- 社会福祉士、理学療法士等の配置による加算
欠席時対応加算
- 利用予定日に欠席した場合の対応による加算
送迎加算
- 送迎を実施した場合の加算
延長支援加算
- 営業時間を超えてサービスを提供した場合の加算
医療的ケア児対応加算
- 医療的ケアが必要な児童を受け入れた場合の加算
専門的支援加算
- 理学療法士等による専門的支援を行った場合の加算
食事提供加算
- 食事を提供した場合の加算
開所時間加減算
- 営業時間により加算または減算
開設後の運営ポイント
1. 質の高いサービス提供
個別支援計画に基づく支援
- 一人ひとりの特性に応じたプログラム
- 定期的なモニタリングと評価
保護者との連携
- 定期的な面談の実施
- 連絡帳による日々の情報共有
- 保護者向け勉強会の開催
2. コンプライアンスの遵守
自己評価の実施と公表
- 年1回以上の自己評価
- 結果の公表(ホームページ等)
実地指導への対応
- 定期的な書類整備
- 基準遵守の確認
事故防止と対応
- リスクマネジメント体制の構築
- 事故発生時の迅速な報告
3. 職員の育成
研修の実施
- 外部研修への参加
- 内部研修の定期開催
- スーパービジョンの実施
よくある質問
Q1. 多機能型と単独事業所、どちらがよいですか?
A. 初めて事業を立ち上げる場合、多機能型は人員配置や設備を効率化できるため、経営面でのメリットが大きいです。ただし、それぞれのサービスの専門性を高めたい場合は、将来的に単独事業所への移行も検討できます。
Q2. 開設資金はどのくらい必要ですか?
A. 一般的に、初期費用として500万円~1,000万円程度が必要です。内訳は、物件取得費、設備費、人件費(開設前)、運転資金等です。融資制度の活用も検討しましょう。
Q3. 児童発達支援管理責任者の確保が難しいのですが?
A. サビ管の確保は多くの事業所が課題としています。実務経験要件を満たす方を採用後、基礎研修を受講してもらう計画を立てる方法もあります。当事務所では、人材紹介のサポートも行っております。
Q4. 重症心身障害児も受け入れたいのですが?
A. 重症心身障害児を主な対象とする場合、別途「重症心身障害児対応型」の指定が必要です。看護師の配置など、基準が異なりますのでご相談ください。
Q5. 送迎は必須ですか?
A. 送迎は必須ではありませんが、送迎サービスを提供することで利用者の利便性が高まり、送迎加算も取得できます。送迎を行う場合、運転手の配置や車両の確保が必要です。
行政書士法人塩永事務所のサポート内容
当事務所では、児童発達支援・放課後等デイサービス多機能型事業所の開設を総合的にサポートいたします。
サポート内容
1. 事業計画策定支援
- ビジネスモデルの検討
- 収支シミュレーション
- 資金調達アドバイス
2. 法人設立手続き
- 定款作成
- 登記申請
- 各種届出
3. 物件選定アドバイス
- 法令適合性チェック
- 近隣調査
- 賃貸借契約書の確認
4. 自治体事前協議対応
- 事前協議への同席
- 自治体との調整
- 必要な修正事項の整理
5. 指定申請書類作成・提出代行
- 全ての申請書類の作成
- 自治体への提出代行
- 補正対応
6. 実地調査対応
- 調査への立会い
- 質疑応答のサポート
7. 開設後の運営支援
- 加算取得のアドバイス
- 実地指導対策
- 各種変更届の作成
まとめ
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所は、子どもたちへの継続的な支援と経営の効率化を両立できる優れた事業形態です。
しかし、開設には複雑な手続きと専門的な知識が必要です。行政書士法人塩永事務所では、豊富な実績とノウハウをもとに、事業計画の段階から開設後の運営まで、一貫してサポートいたします。
障害のある子どもたちとその家族の笑顔のために、私たちと一緒に質の高い事業所を立ち上げませんか。
お問い合わせ
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私たちは、あなたの夢の実現を全力でサポートいたします。