
訪問介護における自家用有償輸送の申請手続き完全ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
訪問介護事業者が利用者の通院や外出支援のために自動車を使用して有償で輸送サービスを提供する場合、道路運送法に基づく「自家用有償旅客運送」の登録が必要となります。本記事では、その申請手続きについて詳しく解説いたします。
自家用有償旅客運送とは
自家用有償旅客運送とは、一般乗合旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客の運送の用に供する自動車を使用して有償で旅客を運送する事業のことです。
訪問介護における適用場面
- 通院等乗降介助における移送サービス
- 身体介護・生活援助の一環としての外出支援
- 福祉有償運送として位置づけられるサービス
申請の種類
1. 福祉有償運送(79条の2第1項)
要介護者、身体障害者等の会員に対する有償運送
2. 過疎地有償運送(79条の3第1項)
過疎地域における地域住民の生活に必要な旅客運送
申請要件
基本要件
運営主体
- NPO法人、社会福祉法人、医療法人等の非営利団体
- 市町村又はその委託を受けた者
運送対象者
- 要介護認定・要支援認定を受けた者
- 身体障害者手帳の交付を受けている者
- その他移動制約者として市町村が認めた者
運送の範囲
- 市町村の区域及びその隣接する市町村の区域内
- 営業区域を越える場合は、関係運輸支局との協議が必要
車両要件
使用車両
- 乗車定員11人未満の自動車
- 車両の点検・整備体制が整備されていること
- 任意保険への加入(対人8,000万円以上、対物200万円以上)
運転者要件
- 普通自動車第二種運転免許を有する者
- または普通自動車第一種運転免許を受けた日から3年を経過し、国土交通大臣が認定する講習を修了した者
申請書類一覧
基本申請書類
- 自家用有償旅客運送者登録申請書
- 事業計画書
- 運送約款
- 車両に関する書類
- 自動車検査証の写し
- 任意保険証券の写し
- 点検・整備体制を記載した書面
- 運転者に関する書類
- 運転免許証の写し
- 講習修了証明書(第一種免許の場合)
- 運転者名簿
- 組織・運営に関する書類
- 定款又は寄附行為
- 登記簿謄本
- 役員名簿
- 運送管理体制に関する書類
- 運行管理体制を記載した書面
- 整備管理体制を記載した書面
追加書類(場合により必要)
- 営業所・車庫等の使用権原を証明する書類
- 地域公共交通会議等における協議結果報告書
- その他運輸支局長が必要と認める書類
申請手続きの流れ
Step 1: 地域公共交通会議での協議
申請前に、当該地域を管轄する地域公共交通会議等において協議を行い、合意を得る必要があります。
Step 2: 申請書類の作成・準備
上記申請書類を適切に作成し、添付書類を準備します。
Step 3: 運輸支局への申請
管轄の運輸支局に申請書類一式を提出します。
Step 4: 審査
運輸支局による書面審査及び必要に応じた実地確認が行われます。
Step 5: 登録・登録証交付
審査を通過すれば登録が行われ、登録証が交付されます。
Step 6: 運行開始
登録証交付後、運行を開始することができます。
審査のポイント
運営体制の確認事項
安全管理体制
- 運行管理者の選任と職務の明確化
- 運転者に対する指導監督体制
- 事故・苦情処理体制
車両管理体制
- 日常点検・定期点検の実施体制
- 整備管理者又は整備管理責任者の選任
利用者保護体制
- 利用料金の適正性
- 利用者との契約関係の明確化
- 個人情報保護体制
登録後の義務・手続き
定期報告義務
年度報告書の提出 毎年度終了後3か月以内に事業報告書を提出する必要があります。
変更届出 登録事項に変更が生じた場合は、遅滞なく変更届出を行う必要があります。
更新手続き
登録の有効期間は2年間です。継続して事業を行う場合は、有効期間満了前に更新申請を行う必要があります。
注意点・よくある間違い
申請時の注意点
- 地域公共交通会議での協議が未了
- 申請前に必ず協議を完了させることが重要
- 運転者要件の不備
- 第一種免許の場合は講習修了が必須
- 免許取得から3年経過の確認
- 保険加入の不備
- 補償額が要件を満たしているかの確認
- 事業用途での使用が補償対象となっているかの確認
- 運送約款の不適切な内容
- 標準約款を参考に適切な内容とする
- 利用者保護の観点から不適切な条項がないかの確認
申請手数料・登録免許税
- 登録申請手数料: 6,500円(1両につき)
- 変更登録手数料: 3,500円
- 更新登録手数料: 3,500円
まとめ
訪問介護における自家用有償輸送の申請は、複雑な要件と手続きを伴います。特に地域公共交通会議での協議や運転者要件の確認など、事前準備が重要となります。
適切な申請手続きを行うことで、利用者に安全で適切な移送サービスを提供できる体制を整えることができます。
行政書士法人塩永事務所では、自家用有償旅客運送の申請手続きに関する専門的なサポートを提供しております。申請書類の作成から許可取得まで、トータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。
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