
離婚協議書とは?必要書類・記載内容・注意点を徹底解説|行政書士法人塩永事務所
はじめに
近年、離婚の手続きとしてもっとも一般的なのが「協議離婚」です。これは、夫婦が離婚の意思に合意し、離婚届を市区町村役場に提出することで成立する比較的簡便な方法です。
ただし、手続きが簡単だからこそ、離婚後の生活や子どもの養育、財産分与等に関する取り決めが曖昧なまま離婚してしまい、後に深刻なトラブルへ発展するケースも少なくありません。
そうした事態を防ぐために重要なのが「離婚協議書」の作成です。本記事では、離婚協議書の概要から記載すべき内容、作成時の必要書類、注意点までを詳しく解説します。
離婚協議書とは?
離婚協議書とは、協議離婚の際に夫婦間で取り決めた内容を文書として明確に残す契約書です。
特に以下のような項目を合意・記録しておくことで、後日どちらかが一方的に約束を反故にすることを防ぎ、トラブル回避につながります。
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財産分与
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養育費
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親権
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面会交流
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慰謝料 など
離婚協議書があれば、仮に将来的に支払いが滞った場合も、証拠資料として活用することが可能です。さらに、公正証書化すれば法的な強制力を持つことになり、債務不履行時に強制執行が可能となります。
離婚協議書の作成手続きと流れ
一般的な協議離婚の流れは以下の通りです:
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離婚の意思を一方が表明
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離婚の条件(親権・財産・養育費など)を協議
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離婚協議書を作成
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離婚届を提出
このうち、③の「離婚協議書」の作成が、今後の生活を左右する大切なステップとなります。
離婚協議書に記載すべき主な事項
離婚協議書に記載すべき内容は多岐にわたります。下記を網羅することが望ましいです:
1. 離婚の合意事項
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協議離婚に合意している旨
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離婚届の提出日、提出者
2. 財産分与に関する取り決め
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対象となる財産(不動産、預貯金、有価証券など)
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分与する金額や割合
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支払方法・期限
3. 年金分割に関する取り決め
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分割合意の有無、情報提供通知書の扱いなど
4. 慰謝料に関する合意
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支払義務者・金額・支払期限・方法
5. 養育費の取り決め
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金額、支払期間、支払方法
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特別な出費(進学・医療等)の対応
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支払終期(例:大学卒業まで など)
6. 親権・監護権について
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未成年の子どもの親権者および監護者の指定
7. 面会交流に関する取り決め
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面会頻度・日時・場所・引き渡し方法など
8. 公正証書作成に関する同意
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将来の履行強制を見据え、強制執行認諾文言付き公正証書にする旨の同意
9. その他
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書面の部数・保管方法(通常2通、夫婦それぞれが1通ずつ保管)
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双方の署名・押印(実印推奨)
離婚協議書の作成に必要な書類一覧
離婚協議書の作成に際し、以下の書類を用意する必要があります。
【基本的に必要な書類】
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各当事者の印鑑登録証明書(3か月以内)
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実印
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本人確認書類(以下のいずれか)
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運転免許証+認印
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顔写真付き住民基本台帳カード+認印
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パスポート+認印
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※外国籍または日本国外居住者の場合は「サイン証明書(在外公館発行)」で代替可能。
【代理人が作成する場合】
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依頼者本人の印鑑登録証明書
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委任状(実印押印)
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代理人の本人確認書類
【ケース別:追加書類】
未成熟子がいる場合
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戸籍謄本(発行3か月以内)
※未成熟子とは、未成年であっても経済的に自立していない子を指します。
財産分与がある場合
不動産
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登記簿謄本(3か月以内)
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固定資産税評価証明書
自動車
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車検証
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査定書(資産価値がある場合)
生命保険
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保険証券
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解約返戻金証明書
有価証券
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株券、取引明細など
年金分割
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年金手帳(コピー可)
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年金分割のための情報提供通知書(年金事務所発行)
離婚協議書を作成する際の注意点(5つの重要ポイント)
① 公正証書として作成することを強く推奨
協議書を公正証書にしておけば、慰謝料や養育費などの支払い義務が履行されなかった際、家庭裁判所を介さずに給与や預金の差し押さえ等の強制執行が可能になります。
費用は数万円程度で、公証人役場にて作成可能です。
② DV・モラハラの危険がある場合は弁護士に相談
話し合いの場で危険があると判断される場合は、必ず専門家(弁護士など)を介して交渉を進めてください。
③ 子どもの前での協議は避ける
子どもに精神的な負担を与えないよう、可能な限り子どもがいない環境で話し合いましょう。
④ 協議前に自分の希望を整理しておく
感情に任せた協議にならないよう、事前に希望条件・譲れない点などを書き出して可視化しておくことが有効です。
⑤ 離婚届の無断提出を防ぐために「離婚不受理申出」を出しておく
一方的に離婚届を提出されるリスクがある場合、市区町村役場で離婚不受理申出を行っておけば、勝手に提出されても受理されません。
まとめ:離婚協議書の作成は専門家への依頼が安心
離婚協議書は、協議離婚をスムーズに、かつ将来のトラブルを未然に防ぐために非常に重要な文書です。
ご自身でも作成は可能ですが、内容に不備があれば無効になったり、法的拘束力が不十分だったりすることもあるため、専門家である行政書士へのご依頼を強くおすすめします。
行政書士法人塩永事務所では、離婚協議書の作成から公正証書化の支援まで丁寧に対応いたします。個別の事情を踏まえて、最適な形での離婚協議書作成をサポートしますので、お気軽にご相談ください。