
建設業許可申請の詳細解説:建築・とび・土工等の許認可取得ガイド
行政書士法人塩永事務所
はじめに
建設業を営む上で、建設業許可の取得は避けて通れない重要な手続きです。軽微な工事を除き、建設工事を請け負う場合には建設業許可が必要となります。本記事では、建築工事業、とび・土工工事業をはじめとする建設業許可の申請要件、申請方法、必要書類について詳しく解説いたします。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設工事を請け負う際に必要な許可であり、建設業法に基づき国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可です。この許可を取得することで、適正な建設業の経営と工事の品質確保が図られます。
建設業許可が必要な工事
建設業許可が必要な工事は、以下のような軽微な工事を除く全ての建設工事です。
軽微な工事の基準
- 建築一式工事:工事1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外:工事1件の請負代金が500万円未満の工事
これらの基準を超える工事を請け負う場合は、建設業許可が必要となります。
建設業許可の種類
許可行政庁による分類
国土交通大臣許可
- 営業所が2つ以上の都道府県にまたがる場合
- 全国で営業展開を行う場合
都道府県知事許可
- 営業所が1つの都道府県内にのみある場合
- 地域密着型の営業を行う場合
工事規模による分類
一般建設業許可
- 下請契約の合計金額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)の工事を請け負う場合
特定建設業許可
- 下請契約の合計金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を請け負う場合
2025年改正による重要な変更点
2025年2月の建設業法施行令改正により、特定建設業許可が必要となる下請金額基準が引き上げられました(4,500万円 → 5,000万円、建築一式7,000万円 → 8,000万円)。これにより、多くの建設業者が特定建設業許可から一般建設業許可に変更可能となりました。
建設業許可の申請要件
建設業の許可を受けるためには、法第7条に規定する4つの「許可要件」を備えていること及び同法8条に規定する「欠格要件」に該当しないことが必要です。
1. 経営業務の管理責任者等の設置
建設業の経営は他の産業の経営とは著しく異なった特徴を有しているため、適正な建設業の経営を期待するためには、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が最低でも1人は必要であると判断され、この要件が定められたものです。
経営業務管理責任者の要件
従来の要件(個人の能力による証明)
- 役員(取締役、事業主など)として5年以上建設業の経営を経験
- 権限の委任を受け準ずる地位として5年以上の建設業の経営経験
- 経営者に準ずる地位として6年以上経営者を補助した経験
新しい要件(組織での経営業務管理) 要件緩和により組織で経営業務の管理を適正に行うことが認められています。常勤役員等のうち1人が建設業に関し2年以上の役員経験を有し、かつ財務管理、労務管理、業務運営の各分野について経験を有する者を補佐者として配置する方法も認められています。
要件緩和の背景
建設業以外の業種が建設業に参入することが難しい状況や、建設業許可を保有している建設業者でも人手不足により、経営業務の管理責任者になれる人の確保が困難という事情があります。
2. 専任技術者の設置
建設業許可を取得するには専任技術者の要件を満たした人物を営業所ごとに配置しなければなりません。
専任技術者の要件
営業所における常勤性
- その営業所に常勤して、もっぱら請負契約の適切な締結やその履行の確保のために業務に従事する者
技術的な資格・経験
- 国家資格等の保有者
- 高等学校・大学等の指定学科卒業者+実務経験
- 実務経験のみによる証明(10年以上)
主要な対象資格(例)
建築工事業
- 一級建築士、二級建築士
- 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士
- 高等学校建築学科卒業+実務経験3年以上
とび・土工工事業
- 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士
- 技能検定(とび工)
- 高等学校土木学科卒業+実務経験3年以上
3. 財産的基礎又は金銭的信用
建設業を適正に営むために必要な財産的基礎又は金銭的信用を有することが必要です。
一般建設業許可の場合
以下のいずれかに該当すること:
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金を調達する能力を有すること
- 建設業許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して建設業を営んでいること
特定建設業許可の場合
以下の全てに該当すること:
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
4. 誠実性
法人にあってはその法人又はその役員等が、個人にあってはその本人又はその支配人が請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが必要です。
建設業許可申請の流れ
1. 事前準備・要件確認
- 経営業務管理責任者の確定
- 専任技術者の確定
- 財産的基礎の確認
- 必要書類の収集
2. 申請書類の作成
- 建設業許可申請書の作成
- 各種添付書類の準備
- 経営業務管理責任者・専任技術者の証明書類の整備
3. 申請・審査
- 申請書の提出
- 審査期間:通常30日程度
- 必要に応じて補正・追加書類の提出
4. 許可通知・許可証の交付
- 許可通知書の受領
- 許可証の交付
- 事業開始
申請に必要な書類
基本書類
- 建設業許可申請書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 誓約書
- 経営業務の管理責任者証明書
- 専任技術者証明書
- 財産的基礎等証明書
添付書類
法人の場合
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 定款の写し
- 株主調書(非上場会社の場合)
- 貸借対照表・損益計算書
- 納税証明書
- 健康保険等の加入状況を証する書面
個人の場合
- 住民票の写し
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 納税証明書
- 確定申告書の写し
経営業務管理責任者関連書類
- 住民票の写し
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 常勤性を証明する書類
- 経営業務管理責任者の経営経験を証明する書類
専任技術者関連書類
- 住民票の写し
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 常勤性を証明する書類
- 資格証明書または実務経験証明書
申請手数料
新規申請
- 一般建設業許可:90,000円
- 特定建設業許可:150,000円
- 一般・特定建設業許可同時申請:180,000円
更新申請
- 一般建設業許可:50,000円
- 特定建設業許可:50,000円
業種追加申請
- 一般建設業許可:50,000円
- 特定建設業許可:50,000円
許可取得後の義務
1. 決算変更届の提出
許可を受けた建設業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する必要があります。
2. 各種変更届の提出
- 商号・名称の変更
- 営業所の新設・移転・廃止
- 役員の変更
- 経営業務管理責任者・専任技術者の変更
- 資本金額の変更
3. 許可の更新
建設業許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期間満了前に更新申請を行う必要があります。
よくある申請時の注意点
1. 経営業務管理責任者の証明
経営業務管理責任者の経営経験を証明する際は、以下の点に注意が必要です:
- 役員就任期間の正確な把握
- 建設業の営業実態の証明
- 常勤性の証明
2. 専任技術者の実務経験証明
実務経験による専任技術者の証明では:
- 工事内容の詳細な記録
- 請負契約書や注文書等の保管
- 実務経験期間の連続性
3. 財産的基礎の証明
財産的基礎を証明する際は:
- 決算書の内容確認
- 自己資本の正確な計算
- 銀行残高証明書の取得タイミング
各業種の特徴
建築工事業
建築一式工事を請け負う業種で、総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事です。
主な工事内容
- 住宅建築工事
- ビル建築工事
- 工場建築工事
とび・土工工事業
とび・土工・コンクリート工事業は、足場の組立て、機械器具の設置、土木工事などを行う業種です。
主な工事内容
- 足場組立て工事
- 土工事
- 基礎工事
- 解体工事
土木工事業
土木一式工事を請け負う業種で、総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する工事です。
主な工事内容
- 道路工事
- 河川工事
- 上下水道工事
申請時期とスケジュール
申請から許可までの期間
- 標準的な審査期間:30日程度
- 補正等が必要な場合:追加で1〜2週間
- 繁忙期(年度末など):さらに延長の可能性
申請タイミングの考慮事項
- 事業開始予定日からの逆算
- 決算期との関係
- 経営業務管理責任者・専任技術者の在職状況
行政書士によるサポートの重要性
建設業許可申請は、複雑な要件と多数の書類が必要な手続きです。以下の点で専門家のサポートが有効です:
1. 要件の事前確認
- 経営業務管理責任者の要件充足性の判断
- 専任技術者の適格性の確認
- 財産的基礎の事前チェック
2. 書類作成・収集サポート
- 申請書類の正確な作成
- 必要書類の効率的な収集
- 証明書類の適切な整備
3. 申請手続きの代行
- 申請書の提出代行
- 審査期間中の対応
- 補正等への迅速な対応
4. 取得後の継続サポート
- 決算変更届の作成・提出
- 各種変更届の対応
- 更新申請の管理
まとめ
建設業許可は、建設業を適正に営むための重要な資格です。要件の確認から申請手続き、取得後の管理まで、専門的な知識と経験が必要となります。
特に、経営業務管理責任者と専任技術者の要件は、多くの事業者が苦労される部分です。また、2025年の法改正により、特定建設業許可の要件が変更されるなど、制度の変更にも注意が必要です。
行政書士法人塩永事務所では、建設業許可申請のすべてのプロセスをサポートしております。建築工事業、とび・土工工事業をはじめとする各業種の許可取得から、取得後の継続的な管理まで、豊富な経験と実績に基づいた確実なサービスを提供いたします。
建設業許可の取得をお考えの事業者様は、お気軽にご相談ください。皆様の事業発展のお手伝いをさせていただきます。
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