
ここでは、建設業許可が必要なケースと、土木工事の業種について詳細に解説します。
建設業許可が必要なケース
建設業許可は、すべての建設工事に必要というわけではありません。「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可が不要です。しかし、それ以外の工事を請け負う場合には、建設業許可が必要になります。
【建設業許可が必要となる工事の基準】
- 建築一式工事の場合:
- 1件の請負金額(税込)が1,500万円以上の工事
- 請負金額に関わらず、延べ面積が150㎡以上の木造住宅を建設する工事
- 建築一式工事以外の工事の場合(土木工事を含む):
- 1件の請負金額(税込)が500万円以上の工事
【軽微な建設工事とは】
上記の基準に満たない工事が「軽微な建設工事」に該当し、建設業許可なしで請け負うことができます。
【金額算定の注意点】
- 消費税込みの金額で判断する: 請負金額は消費税を含んだ金額で判断されます。例えば、税抜で470万円の工事でも、消費税込みで517万円になる場合は許可が必要です。
- 材料費も含む: 注文者が材料を支給する「手間請け」の場合でも、その材料の市場価格や運送費などを請負金額に加えて判断されます。
- 分割契約の場合も合算: 1つの工事が複数の契約に分割されていても、その合計金額が上記の基準を超える場合は許可が必要です。例えば、A工事で300万円、B工事で300万円と契約を分割しても、実質的に1つの工事で合計600万円となる場合は許可が必要になります。
- 断続的な工事も合算: 長期間にわたり断続的に行われる小口契約であっても、合計で上記の基準を超える場合は許可が必要です。
【許可が不要な工事の例(建設工事に該当しないもの)】
建設工事に該当しない業務は、そもそも建設業許可の対象外です。
- 測量や地盤調査(ボーリング調査を伴う土壌分析を除く)
- 建設用機械の搬入出、土砂の運搬、建設資材の搬入
- 建設現場の養生、清掃や管理
- 施設・設備・機器等の運転管理や保守点検、消耗部品の交換
- 設計
- 地質調査、埋蔵文化財発掘、観測や測定を目的とした掘削
- 船舶や航空機など土地に定着しないものの築造・設備機器取付
- 建設資材(生コン・ブロック等)の納入
- トラッククレーンやコンクリートポンプ車のリース(オペレーター付きの場合は請負とみなされる場合がある)
土木工事の業種について
建設業許可は、2種類の一式工事と27種類の専門工事の計29業種に分かれています。土木工事は、このうちの「土木一式工事」に該当します。
土木一式工事とは
土木一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事を指します。(補修、改造又は解体する工事も含まれます。)
原則として元請業者が取得する業種であり、大規模かつ複雑な土木工事において、複数の下請業者を統括・調整する際に必要となります。
【土木一式工事の具体的な内容例】
- ダム建設工事:砂防ダム工事、貯水池ダム工事など
- トンネル工事:山間部や海底を通るトンネル本体工事、シールド工事、推進工事など
- 橋梁工事:橋の建設に関する一連の工事
- 空港建設工事:国際空港や地方空港などの空港関連工事
- 道路工事:道路開設、道路改良工事、道路築造工事、路面補修工事など
- 土地区画整理工事、土地造成工事:宅地造成、工業団地造成など
- 公道下の下水道の配管工事及び下水処理場自体の敷地造成工事
- ※敷地内の配管工事や上水道の配水小管設置工事は「管工事」に該当します。
- ※上水道の取水・浄水・配水施設や下水処理場内の処理設備を築造・設置する工事は「水道施設工事」に該当します。
- 農業土木工事:灌漑水道工事、農用造成工事など
- 砂防工事
- 森林土木工事:治山工事、林道工事など
- 河川工事、海岸工事:堤防や護岸の築造工事、港湾工事、防潮堤工事など
- プレストレストコンクリート構造物工事(橋梁等の土木工作物を総合的に建設する場合)
- 溝渠工事、擁壁工事、消波ブロック製作工事など
【土木一式工事の許可でできること・できないこと】
土木一式工事の許可があれば、土木系の工事なら何でも請け負えるわけではありません。
- 「附帯工事(付帯工事)」の範囲: 土木一式工事の主たる工事に付随して行う軽微な専門工事は、その範囲内であれば土木一式工事の許可で施工可能です。
- 専門工事は別途許可が必要な場合が多い: 主たる工事が土木一式工事ではなく、他の専門工事(例:舗装工事単体、管工事単体など)に該当する場合は、別途その専門工事の許可が必要となります。無許可営業とならないよう注意が必要です。
【土木工事業の専任技術者になれる主な関連学科・資格】
土木一式工事の建設業許可を取得するには、要件を満たす「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を置く必要があります。専任技術者になれる主な関連学科や資格は以下の通りです。
- 関連学科: 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地、造園に関する学科を含む)、都市工学、衛生工学、交通工学に関する学科
- 国家資格:
- 一級土木施工管理技士
- 二級土木施工管理技士(土木)
- 技術士(建設部門(鋼構造及びコンクリートを除く)、総合技術監理部門(建設)、建設「鋼構造及びコンクリート」、農業「農業土木」、水産「水産土木」、森林「森林土木」など)
建設業許可の取得は、事業の拡大や信用力の向上に繋がります。ご自身の事業内容と請け負う工事の規模を正確に把握し、適切な許可を取得することが重要です。不明な点があれば、専門家である行政書士法人塩永事務所にご相談いただくことをお勧めします。