
【行政書士法人塩永事務所が解説】特定技能のコストを大幅削減!登録支援機関から『自社支援』への切り替え完全ガイド
特定技能外国人の活躍は、今や多くの企業にとって不可欠なものとなっています。一方で、毎月発生する登録支援機関への支援委託費用が、経営上の負担となっているケースも少なくありません。
「支援内容に対して、費用が見合っているのか疑問を感じる」 「技能実習から特定技能へ移行したが、監理団体が運営する登録支援機関をそのまま利用し続けている」
このようなお悩みをお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。特定技能制度では、登録支援機関への委託は必須ではなく、要件を満たせば企業が自ら外国人材を支援する『自社支援』に切り替えることが可能です。
自社支援への移行は、支援委託コストの抜本的な削減はもちろんのこと、外国人社員との直接的で密なコミュニケーションを通じて、支援の質向上や職場定着率の改善にも繋がるという大きなメリットがあります。
本記事では、特定技能制度に精通した行政書士法人塩永事務所が、登録支援機関からの切り替えをご検討中の企業様に向けて、自社支援の具体的な業務内容から、クリアすべき要件、そして実際の切り替え手続きまで、実務上のポイントを交えて詳細に解説いたします。
自社支援で企業が担うべき業務とは?
自社支援に切り替えた場合、特定技能所属機関(受け入れ企業)は、外国人社員に対して法律で定められた支援を、自社の責任において実施する義務を負います。これらは事前に作成・提出する「支援計画」に基づいて行わなければなりません。
■ 義務的支援:法律で定められた10項目
支援計画に盛り込むべき10項目の支援内容は、それぞれ実施方法が法令で細かく定められており、これらを遵守することが絶対条件となります。
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事前ガイダンス
- 内容: 雇用契約を締結する前に行う、最も重要な説明の一つです。労働条件、業務内容、日本での待遇、そしてこれから企業が行う支援内容について、外国人が十分に理解できる言語(原則として母国語)で説明します。
- ポイント: 説明すべき事項は法令で厳格に定められており、最低3時間以上の時間をかけて実施する必要があります。単に書類を渡すだけでなく、質疑応答の時間を十分に設け、認識の齟齬がないようにすることが後のトラブル防止に繋がります。
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出入国する際の送迎
- 内容: 来日時は空港等から事業所または住居まで送迎し、帰国時は保安検査場まで同行して入場を見届けます。
- ポイント: 単なる移動手段の提供ではなく、長旅の疲れや慣れない環境への不安を和らげるための重要なコミュニケーションの機会と捉えることが大切です。
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住居確保・生活インフラ契約のサポート
- 内容: 連帯保証人になる、社宅を提供するなどして住居の確保を支援します。また、銀行口座開設、携帯電話、電気・ガス・水道といったライフラインの契約手続きをサポートします。
- ポイント: 日本独自の保証人制度や契約の複雑さは、外国人にとって大きな障壁です。必要書類の案内から窓口への同行まで、丁寧なサポートが求められます。
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生活オリエンテーション
- 内容: 日本で安全かつ快適に暮らすためのルールや知識を提供します。交通ルール、医療機関の利用方法、ゴミの分別といった日常生活のルールから、日本の慣習、防災・防犯、人権に関する相談窓口まで、その内容は多岐にわたります。
- ポイント: こちらも外国人が十分に理解できる言語で、最低8時間以上の実施が義務付けられています。地域社会とのトラブルを未然に防ぎ、本人が安心して生活基盤を築くための重要な支援です。
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公的手続き等への同行
- 内容: 住民登録、社会保険、税金に関する手続きなど、必要に応じて行政機関の窓口へ同行し、書類作成等を補助します。
- ポイント: 手続きの代行ではなく、本人が自立して手続きを行えるようサポートするという視点が重要です。
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日本語学習機会の提供
- 内容: 日本語能力の維持・向上のため、地域の日本語教室やオンラインレッスンの情報を提供し、入学手続きを補助します。あるいは、自社で日本語教師と契約し学習機会を提供することも可能です。
- ポイント: 業務上のコミュニケーションだけでなく、日常生活の質を高め、キャリアアップの意欲を育むためにも不可欠な支援です。
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相談・苦情への対応
- 内容: 業務上、生活上のあらゆる相談や苦情に対して、外国人の母国語で対応できる体制を整え、誠実かつ迅速に対応します。相談しやすい窓口(担当者)を明確にし、記録を残すことが重要です。
- ポイント: 労働環境の悩みから個人的な問題まで、気軽に相談できる信頼関係の構築が、早期離職の防止に繋がります。
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地域住民との交流促進
- 内容: 日本社会への適応を促し、孤立を防ぐため、地域のお祭りや自治会のイベント、スポーツ交流会などの情報を提供し、参加をサポートします。
- ポイント: 必要に応じて同行し、地域住民との橋渡し役を担うことで、外国人が地域社会の一員として受け入れられるよう支援します。
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転職支援(会社都合離職の場合)
- 内容: 企業の倒産や人員整理など、会社側の都合で雇用契約を解除せざるを得ない場合に、次の受け入れ先を探すための支援を行います。ハローワークへの同行や推薦状の作成などが含まれます。
- ポイント: これは企業の責務であり、誠実な対応が求められます。
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定期的な面談と行政機関への報告
- 内容: 支援責任者または支援担当者が、外国人本人およびその直属の上司と3ヶ月に1回以上、直接対面での面談を実施します。労働状況や生活上の問題がないかを確認し、その内容は「定期面談報告書」として書面に記録します。
- ポイント: この面談記録は、企業が適正な支援を行っていることを証明する重要なエビデンスとなります。万が一、人権侵害や法令違反が疑われる事態を把握した場合は、速やかに関係機関へ通報する義務があります。
■ 重要な届出義務
上記の支援実施に加え、出入国在留管理庁への各種届出が義務付けられています。
- 定期届出: 支援の実施状況(面談内容、相談記録などを含む)を、四半期に一度、管轄の出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。
- 随時届出: 支援計画の内容に変更があった場合(例:支援責任者・担当者の交代)、受け入れ機関に関する変更があった場合(例:社名や所在地の変更)など、事由が発生した日から14日以内に届け出る必要があります。
これらの届出を怠ると、行政指導や改善命令の対象となり、最悪の場合、特定技能外国人の受け入れ資格を失う可能性もあります。確実な履行が不可欠です。
自社支援へ切り替えるための「6つの要件」
自社支援を行うには、企業が以下の要件をすべて満たしている必要があります。特に、初めて外国人を雇用する企業様にとっては、①の要件が大きなポイントとなります。
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過去2年間に、中長期在留者(技能実習生など)の受け入れ・管理を適正に行った実績があること
- これは「就労ビザを持つ外国人を、入管法や労働関係法令を遵守し、行方不明者などを出すことなく、適切に雇用・管理した経験が2年以上あるか」を問うものです。「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ社員の雇用実績も含まれますが、アルバイトの留学生や、「永住者」「日本人の配偶者等」といった身分系在留資格の外国人の雇用経験は対象外です。
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役職員の中から、支援の責任者である「支援責任者」と担当者である「支援担当者」を選任していること
- 支援責任者と担当者は兼任も可能です。それぞれの役割を明確にし、支援体制を構築する必要があります。
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外国人が十分に理解できる言語(原則として母国語)で支援を実施できる体制があること
- 社内に通訳可能な従業員がいなくても、外部の通訳サービスを利用するなどの体制を確保すれば要件を満たせます。
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支援状況に関する文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備え置くこと
- 支援計画書、面談記録、相談記録簿など、すべての支援に関する書類の適切な作成・保管が義務付けられています。
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支援責任者・担当者が、支援対象の外国人に対して中立的な立場であり、かつ欠格事由に該当しないこと
- 例えば、支援対象者の直属の上司が支援担当者である場合、労働上の不満を相談しにくい可能性があるため、中立性が確保されているか慎重な判断が必要です。また、役員等が禁錮以上の刑に処せられた等の欠格事由に該当しないことも求められます。
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過去5年以内に、支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
現時点で①の雇用実績がない場合でも、まずは登録支援機関に委託しながら実績を積み、将来的に自社支援へ移行するプランを立てることが可能です。その間に支援のノウハウを蓄積することができます。
登録支援機関から自社支援への切り替え手続き
上記の要件を満たしていることを確認したら、管轄の出入国在留管理庁へ切り替えの届出を行います。
■ 主な必要書類
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支援計画変更に係る届出書(参考様式第3-2号)
- 登録支援機関への委託を「全部取りやめる」旨を届け出ます。支援対象の外国人ごと(複数名の場合は別紙添付可)に必要です。
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支援計画書(参考様式第1-17号)
- 自社で支援を行うための、新しい支援計画書を作成・提出します。画一的な内容ではなく、企業の状況や外国人の個性に合わせて、具体的かつ実行可能な計画を作成することが重要です。
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支援委託契約の終了に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
- これまで契約していた登録支援機関との委託契約が終了したことを証明する書類です。
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特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11号)
- 自社の概要、財務状況、外国人材の受け入れ実績、そして新たな支援体制について記載します。
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登記事項証明書
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役員の住民票の写し
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自社の組織図
- 支援責任者・担当者が、外国人社員に対して中立的な立場であることを客観的に示すために提出が求められることがあります。
■ 手続きの方法
以下のいずれかの方法で届出を行います。
- 窓口持参: 企業の本店所在地を管轄する地方出入国在留管理官署の窓口へ直接提出します。
- 郵送: 管轄の官署宛てに郵送します。封筒の表に「特定技能届出書在中」と朱書きで記載します。
- オンライン: 「出入国在留管理庁電子届出システム」を利用します。事前に利用者情報登録が必要です。
自社支援への切り替えは、専門家にご相談ください
自社支援への切り替えは、コスト削減以上の大きなメリットを企業にもたらしますが、その実現には入管法に関する専門的な知識と、煩雑な書類作成・届出業務が伴います。
「自社が要件を満たしているか分からない」 「支援計画書の作り方が分からない」 「手続きに不安がある」
このような場合は、ぜひ一度、特定技能制度の専門家である行政書士法人塩永事務所にご相談ください。
当事務所では、単なる手続きの代行に留まらず、各企業様の状況に合わせた最適な支援体制の構築から、実務に即した支援ノウハウのご提供、そして切り替え手続き完了までをワンストップでサポートいたします。全国からのオンライン相談にも対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
貴社の特定技能外国人材活用を、コスト面と運用面の両方から、より良い形へと導くお手伝いをいたします。