
特定技能ビザ:介護・建設・外食分野の詳細ガイド(行政書士法人塩永事務所)
日本における深刻な労働力不足を背景に、2019年4月に導入された在留資格「特定技能」は、人手不足が顕著な特定の産業分野で外国人労働者の受け入れを促進する制度です。特に介護、建設、外食分野は、特定技能ビザの対象として注目されています。本記事では、特定技能ビザの概要、対象分野(介護、建設、外食)に焦点を当てた詳細、申請手続き、注意点、そして行政書士法人塩永事務所が提供するサポートについて、詳しく解説します。
1. 特定技能ビザとは?
特定技能ビザは、労働力不足が深刻な産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人労働者を即戦力として受け入れることを目的とした在留資格です。このビザは「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つに分かれ、それぞれ異なる特徴を持っています。
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特定技能1号:相当程度の知識や技能を有する外国人向けで、在留期間は通算5年が上限。家族の帯同は原則不可。
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特定技能2号:熟練した技能を持つ外国人向けで、在留期間に上限はなく、家族の帯同が認められる。また、永住権申請の要件を満たす可能性がある。
2024年3月時点で、特定技能の対象分野は16分野に拡大され、特に介護、建設、外食分野は多くの企業が外国人労働者の受け入れを積極的に進めています。以下では、これら3分野を中心に詳細を解説します。
2. 特定技能ビザの対象分野:介護・建設・外食
2.1 介護分野
概要
介護分野は、高齢化が進む日本において特に人手不足が深刻な分野です。特定技能ビザ(介護)は、介護施設や事業所での身体介護(入浴、食事、排泄介助など)や生活支援業務に従事する外国人を対象としています。ただし、訪問系サービス(訪問介護など)は現時点で対象外ですが、2024年6月の厚生労働省の審議会では、条件付きで訪問系サービスの対象化が検討されています。
必要な試験
特定技能1号(介護)を取得するには、以下の試験に合格する必要があります:
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介護技能評価試験:介護業務に関する専門知識と技能を評価。
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介護日本語評価試験:介護現場で必要な日本語能力を測定。
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日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト:最低限の日本語コミュニケーション能力を確認。
これらの試験は国内外で実施されており、2023年3月~6月にはインドネシア、フィリピン、ネパールなどで試験が開催されました。試験日程や申し込みは、各分野の協議会や出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。
受け入れ人数の上限
介護分野では、事業所単位で「日本人等の常勤介護職員の総数」を上限として特定技能外国人の受け入れが可能です。たとえば、常勤介護職員が10人の事業所では、最大10人の特定技能外国人を雇用できます。この「日本人等」には、EPA介護福祉士や介護福祉士国家試験合格者も含まれます。
注意点
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特定技能2号は介護分野では対象外。5年の在留期間満了後、介護福祉士の資格を取得して「介護」ビザに切り替えるのが一般的。
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事業所は、特定技能外国人を受け入れる前に「介護分野特定技能協議会」に加入する必要があります(2024年6月15日以降は在留資格申請前加入が必須)。
2.2 建設分野
概要
建設分野は、インフラ整備や建築需要の高まりにより、外国人労働者の需要が急増しています。特定技能ビザ(建設)は、型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工など18の職種を対象としています。特定技能1号に加え、熟練技能者を対象とした特定技能2号も認められており、長期就労や家族帯同が可能です。
必要な試験
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建設分野特定技能1号評価試験:職種ごとの専門技能を評価(例:型枠施工、左官など)。
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日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト:ただし、建設分野は日本語能力の要件が他の分野に比べて緩やかで、現場での実務遂行に必要な最低限のコミュニケーション能力が求められます。
特定技能2号への移行には、特定技能2号評価試験または技能検定1級の合格と、職種ごとの実務経験(0.5~3年)が求められます。
受け入れ人数の上限
建設分野では、特定技能1号と特定活動の在留資格で就労する外国人の合計が、受け入れ企業の常勤職員数(社会保険加入の正社員)を上限としています。たとえば、常勤職員が50人の企業では、最大50人の特定技能外国人を受け入れ可能です。
注意点
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受け入れ企業は、建設技能人材機構(JAC)への加入が必須。JACの正会員(年会費36万円)または賛助会員(年会費24万円)として登録し、特定技能1号外国人1人あたり月額12,500円の負担金が発生。
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建設キャリアアップシステムへの登録が義務付けられており、外国人労働者の就労管理が厳格に行われる。
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工事受注状況による報酬変動や現場ごとの就労管理が必要なため、適正な労働環境の確保が求められる。
2.3 外食業分野
概要
外食業分野は、レストランや飲食店での接客、調理、清掃などの業務を対象としています。新型コロナウイルスの影響で一時的に需要が減少したものの、2024年以降は営業再開に伴う人手不足から特定技能外国人の受け入れが急増しています。特定技能2号も2023年に対象となり、長期就労が可能な点が魅力です。
必要な試験
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外食業特定技能1号技能測定試験:調理や接客に関する実務能力を評価。
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日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト:日常会話レベルの日本語能力が求められる。
特定技能2号への移行には、熟練技能を証明する試験や実務経験が必要です。
受け入れ人数の上限
外食業分野では、原則として受け入れ人数の上限はありません。これは、特定技能制度の大きなメリットであり、事業規模に応じて柔軟に外国人労働者を雇用できます。
注意点
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受け入れ企業は「食品産業特定技能協議会」に加入必須(2024年6月15日以降は在留資格申請前加入が義務)。
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コンビニやスーパーなどの小売業は特定技能の対象外。外食業に特化した業務(例:レストランでの接客や調理)に限定される。
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報酬は日本人と同等以上であることが求められ、雇用契約書や報酬に関する説明書の提出が必要。
3. 特定技能ビザの申請手続き
特定技能ビザの申請は、外国人労働者本人または受入れ企業(特定技能所属機関)が地方出入国在留管理局に対して行います。行政書士法人塩永事務所では、以下のプロセスをサポートしています。
3.1 申請の流れ
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試験合格または技能実習2号修了:
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特定技能1号を取得するには、該当分野の技能試験と日本語試験に合格するか、技能実習2号を良好に修了する必要があります。
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技能実習からの移行の場合、試験免除が適用される場合がありますが、同一分野または関連業務に限られます。
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雇用契約の締結:
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受入れ企業は、外国人労働者と特定技能雇用契約を締結。報酬は日本人と同等以上であること、労働条件が適切であることが求められます。
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支援計画の作成:
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特定技能1号では、受入れ企業が外国人労働者の職業生活、日常生活、社会生活を支援する「支援計画」の作成が義務付けられています。
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支援内容には、入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、行政手続きの支援などが含まれます。
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支援業務を登録支援機関に委託する場合は、行政書士法人塩永事務所のような専門機関が代行可能です。
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協議会への加入:
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初めて特定技能外国人を受け入れる場合、受入れ企業は該当分野の協議会に加入する必要があります。2024年6月15日以降は、在留資格申請前に加入が必須。
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在留資格申請:
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必要書類を準備し、地方出入国在留管理局に提出。主な書類は以下の通り:
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在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
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特定技能雇用契約書の写し
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支援計画書
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試験合格証明書または技能実習修了証明書
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報酬に関する説明書
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健康診断書など
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オンライン申請が可能な場合、書類の一部省略が認められる企業もあります。
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審査と許可:
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審査期間は通常1~3か月。許可後、在留資格認定証明書が発行され、外国人労働者は日本での就労を開始できます。
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3.2 必要書類のポイント
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報酬の同等性:日本人と同等の報酬を証明する書類(給与明細や雇用契約書など)が重要。
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健康診断書:異常や要再検査の記載がある場合、追加の説明や再検査結果の提出が必要。
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協議会加入証明:建設分野や介護分野では、加入証明書の提出が必須。
4. 特定技能ビザのメリットとデメリット
4.1 メリット
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即戦力の確保:特定技能外国人は、試験合格者や技能実習修了者であり、即戦力として働ける。
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柔軟な雇用:介護・建設を除く分野では受け入れ人数の上限がなく、事業規模に応じた雇用が可能。
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長期就労の可能性:特定技能2号に移行すれば、在留期間の制限がなくなり、永住権申請も視野に。
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幅広い業務:従来の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)では認められなかった現場作業(例:調理、建設作業)が可能。
4.2 デメリット
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手続きの複雑さ:試験合格、協議会加入、支援計画作成など、準備に時間と専門知識が必要。
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コスト:建設分野ではJAC会費や負担金、支援委託費用などが発生。
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日本語能力の壁:N4以上の日本語能力が求められるため、採用候補者の選定に制約がある場合も。
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支援義務:特定技能1号では、受入れ企業が支援計画の実施を義務付けられ、負担が増える。
5. 行政書士法人塩永事務所のサポート
行政書士法人塩永事務所は、特定技能ビザの申請手続きや登録支援機関としてのサポートを提供しています。以下は当事務所の主なサービスです:
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ビザ申請代行:在留資格認定証明書交付申請や変更許可申請の書類作成・提出を代行。
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支援計画の作成・実施:特定技能1号の義務的支援(生活オリエンテーション、住居確保など)を代行し、企業の負担を軽減。
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協議会加入サポート:各分野の協議会への加入手続きを迅速にサポート。
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セミナー・相談会:外国人雇用や特定技能制度に関する最新情報を提供するセミナーを定期開催。
当事務所は、介護、建設、外食分野での豊富な実績を持ち、企業と外国人労働者の双方にとってスムーズな受け入れを実現します。お問い合わせは、電話(045-370-9755)または当事務所ウェブサイトのフォームからお気軽にどうぞ。
6. 注意点と今後の展望
6.1 注意点
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制度改正への対応:2024年3月29日の閣議決定により、特定技能1号の対象分野が「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野に拡大。最新情報を確認することが重要。
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転職の制限:特定技能外国人の転職は同一分野内または技能水準の共通性が確認された業務区分に限定される。
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支援の適正実施:支援計画の不履行や不適切な労働環境は、在留資格の取り消しや受入れ停止のリスクがある。
6.2 今後の展望
特定技能制度は、2024年6月時点で約22万4千人の外国人が在留しており、2024年3月までの5年間で34万5千人を上限とする目標に対し、順調に増加しています。特に外食業や介護分野は、試験実施回数の増加やニーズの高まりから、今後も受け入れが拡大する見込みです。また、2023年に特定技能2号の対象が11分野に拡大したことで、長期就労や永住権取得の可能性が広がり、外国人労働者にとって魅力的な制度となっています。
7. まとめ
特定技能ビザは、介護、建設、外食などの人手不足分野における外国人労働者の受け入れを促進する重要な制度です。試験合格や支援計画の作成、協議会加入など、手続きには専門知識が必要ですが、適切な準備により企業は即戦力の人材を確保し、外国人労働者は日本での安定した就労機会を得られます。
行政書士法人塩永事務所は、特定技能ビザの申請から支援業務まで、ワンストップでサポートします。外国人雇用を検討中の企業様、または特定技能ビザでの就労を希望する外国人の皆様は、ぜひ当事務所にご相談ください。最新の制度情報と実務経験を活かし、最適なソリューションを提供いたします。
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